6月20日は父の日だ。何を贈ろうかと頭を悩ませている人も多いのではないだろうか。扇子にポロシャツ、健康器具。たいていのものはすでに贈ったし、父親が70代、80代ともなると、お酒やお菓子を箱で贈るのも健康に良くないのでは、とはばかられる。それなら、「本」をプレゼントしてはいかがだろうか。
とはいえ父親に贈る本を選ぶとなると、これまた難しい。そこで今回は、団塊世代のKさんにアドバイスをもらった。読書量もさることながら、何を聞いても答えてくれる幅広い知識の持ち主だ。
曰く、「そのくらいの年齢になれば、誰しも老眼。小さい文字は苦手になります。したがってイラストや写真が多いものが望ましい。かつ、知識も増えれば一石二鳥です。ジャンルも硬いものよりは実用性があるものが望ましいです」。
おススメのジャンルは以下の通り。Kさんのコメントをもとに、編集部で選んだ本を紹介しよう。
<グルメ系>
「これは料理やレストランの写真があって、肩がこらない。うまくすれば、ごちそうしてもらえるチャンスもあります。全国の酒やビール、菓子、名品類の紹介本などもOK。子どもや孫がネット注文しておこぼれにもありつける」
なるほど。それは名案だ。海老で鯛を釣れそうな本はこちら。
QRコード付きですぐに購入できる。好きなものを選んでもらい、代わりに注文してあげよう。
「旅鉄BOOKS026『駅弁大百科』」(天夢人)
自宅で旅気分を味わえる。コンセプトは、「選べる!探せる!発見がある!そして注文がしたくなる駅弁大百科」。お取り寄せも可能だ。
甘党のお父さんにはスイーツガイドはいかがだろうか。抹茶本のほか、プリン本、チーズケーキ本、ゼリー本などがある。セットでプレゼントするのもよさそう。
<旅行系>
「シニア向けには寺社の案内本、解説本などがいいかも。みなさん『お参り』に行くことが多くなる年齢ですので」
確かに。昔はたいして信仰深いわけでもなかったのに、最近、やたらとお参りに行くようになったような......。写真が多くて眺めるだけで旅気分が味わえる本や、仏像の解説本などがよさそう。編集部のおすすめは、この3冊。
『御朱印でめぐる全国の聖地~週末開運さんぽ~』(学研ホールディングス)
写真や小ネタが満載で、眺めているだけでも楽しい。次の「お参り」の行き先を決めるワクワクする時間を贈ろう。
奈良・興福寺の阿修羅像を大型X線CTスキャナーで撮影したデータなどをもとに、9年にわたって解析調査してわかった事実を報告している本。阿修羅像の見方が変わること間違いなし。
『歴史紀行ガイド 渋沢栄一の足跡をたどる旅』(東京ニュース通信社発行)
「お参り」とは異なるが、歴史好き、大河ドラマ好きのお父さんにおススメ。
<趣味本>
「ご本人の趣味に合わせた本。これはすでに本人が持っているケースが多い」
俳句に陶芸、音楽、アート、ガーデニング......。多岐にわたるので、ここではごく一部を紹介する。
音楽好きに。
『昭和レコード超画文報1000枚 ~ジャケット愛でて濃いネタ読んで~』(303 BOOKS)
アートとミステリーを同時に楽しめる。
『最後のダ・ヴィンチの真実――510億円の「傑作」に群がった欲望』(集英社インターナショナル)
鉄道とともに懐かしい風景をカラー写真で。
『続・秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』(光文社)
また、ご本人がすでに持っているかもしれないが、健康長寿本もおすすめ。ほかにも、団塊世代の関心が高いジャンルを教えてもらった。しかしこちらはプレゼントするには向かなそう。その理由は、Kさんのコメントをご一読いただきたい。
<投資本>
「年寄りは預貯金が多いといわれています。さらに増やすノウハウを伝える本です。しかしリスクもあります。あんな本をおじいちゃんにプレゼントしたから財産をなくしたなどと批判され、後悔することにもなりかねない」
<終活本>
「相続など週刊誌の基本テーマ。被相続人からはプレゼントしにくい。本人が自分で買うのが一番ですね」
<人生本>
「好き嫌いがあるので本人の選択に任せましょう」
<歴史や社会など教養系>
「これも無数にあって選択が難しい。年寄りはたいがい、すでにご本人の主義・主張が出来上がっていて他人の言うことには耳を貸さない状態になっています」
......というわけで、プレゼントするなら、グルメ本か旅行本が無難だ。趣味系なら、お父さんが手に取らなさそうな、子どもや孫世代の視点で選ぶと、新しい発見があって喜ばれるかも。
最後に、無茶ぶりとは承知の上で、Kさんに「70歳以上の父親におすすめの1冊」を選んでもらった。
「それぞれの歩んできた人生や現在の状況で種々雑多。個別の事情で読みたい本、読むべき本も変わるので、誰にでもベストな本はないといえます」と断ったうえで、「同世代の方に読んでもらいたい本をあえて一冊あげるとするなら...」と選んでくれたのが、こちら。
『太平洋戦争の収支決算報告――戦費・損失・賠償から見た太平洋戦争』(彩図社)
「地図や図表が多くて読みやすい。戦争を『収支決算』の角度から解説した本です。日本があの戦争で大損したことがよくわかります。広大な領土を失い、兵士の命や戦費を浪費し、空襲で一般国民も命や家財を失い、補償や軍人恩給の支払いで戦後も莫大なコストがかかりました。著者には特段の政治的立場はありません。たんたんと『収支』を報告しています。
戦争の理由はさておき、『日本と言う会社』をボロボロにした当時の戦争指導者に対して『経営責任』『結果責任』を問いたいですね」
その視点はなかった......! これは団塊世代だけでなく、ジュニア世代も読んでおきたい一冊だ。しかし、これまでお気楽に生きてきた記者のような娘が贈ると、「どうしちゃったんだ、オマエ大丈夫か?」とむしろ心配されかねない。先に挙げた実用書とセットで送るのがよさそうだ。
なお、Kさんによれば、「新書大賞」に選ばれているような本もおすすめだという。インテリ系のお父さんなら、下記の3冊をまとめて贈るのも一案だ。
・2019年の『日本軍兵士』(中公新書)
・20年の『独ソ戦』(岩波新書)
・21年の『人新世の「資本論」』(集英社新書)
さて、お父さんに贈りたい本は見つかっただろうか。顔を見に行ければ良いが、このご時世、それもなかなか難しい。本はネットでポチっと送って、手紙か電話で、その本のおすすめポイントを伝えてみては。改まって「ありがとう」なんて、照れくさくて言えなくても、感謝の気持ちはきっと届くに違いない。
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