死んでしまったら、私たちの体はどうなるのか。大人は「縁起が悪い」「不謹慎だ」と避けがちな話題で、意外と知らないことが多い。たとえば、変顔をしている時に死んだら、変顔のまま硬直してしまうのか? 死んだ後でも献血はできるの? など、「考えたこともなかった」という人が大半だろう。
7月31日に発売された『うちのネコ、ボクの目玉を食べちゃうの?』(化学同人)は、米ロサンゼルスで葬儀屋を営むケイトリン・ドーティさんが、子どもたちから寄せられた、素朴で、ときに突拍子もない質問に、実体験をふまえ科学的見地も示しながら答えている。
「死ぬとウンチが漏れるって本当?」という質問に、ドーティさんは、「そうね、死んだらウンチが漏れちゃうかも。なんだかワクワクするでしょ?」と回答。
私は葬儀屋ですので、葬儀社へ運ぶために遺体を引き取りに行くことがありますが、そんな時によく、ウンチというサプライズゲストが登場します。
ストレッチャーに乗せようとして、遺体を持ち上げたり、ひっくり返したりするときに、圧力がかかって便が出てしまうことはよくあることらしい。ドーティさんは、体の仕組みを子どもにもわかりやすく、ていねいに説明している。
曰く、生きている時は、「脳が命令を出してお尻の穴を締めている」ので、ウンチは勝手に出てこない。ところが死んでしまうと、脳はお尻の穴を締める筋肉に信号を送ることができない。さらに、死後硬直を起こした筋肉は、数日後には緩む。当然、ウンチが出ないように止めていた筋肉も...。
亡くなったときにウンチやオシッコが溜まっていれば、ここで彼らは自由の身となって出てくるわけです。
さらに、葬儀社では家族の前で遺体が排便したり、ガスや体液が出てきたりして、故人とお別れをしようとしたら、どこかからウンチの香りが漂ってくる...という「悲劇」を防ぐために、現場ではさまざまな手を打っているという裏話も。大人が読んでも「へえ~」と興味深いことばかりだ。
葬儀屋さんなのに、人体の不思議や宇宙のことまで、どんな質問にも答えてくれることに驚く。
著者のドーティさんは、各国で「死」という不思議な現象についての講演を行うほか、YouTubeやラジオでも「死の専門家」として活躍している。幼いころ、恐ろしい死の場面に遭遇したことが、死についてもっと知ろうと思うようになったきっかけだという。中世の歴史について学び、火葬場で働き、葬祭の専門学校で防腐処理技術(エンバーミング)を学び、世界を旅して死の習慣を調べ、ついには自分で葬儀社を設立した。
そんなドーティさんが講演などのイベントで一番面白いのは、質疑応答の時間だという。参加した人はみな、「腐敗しかけの死体や、頭の傷、骨、エンバーミング、火葬方法といったものすべて」に興味を持っているが、中でも子どもの質問は直球で刺激的。大人よりずっと肝が据わっていて、鋭いところをついてくる。ドーティさんはその1つひとつに対し、ユーモアを交えつつ、大まじめに答える。
本書には、「のびのびと育ったオーガニックな子どもたちから、100パーセント倫理にかなった方法で入手した」34の質問が掲載されている。表題の「ぼくが死んだら、うちのネコはぼくの目玉を食べちゃうの?」のほか、次のような質問がある。
宇宙で宇宙飛行士が死んだらどうなるの?
お父さんやお母さんが死んだら、頭蓋骨をもらいたいんだけど?
死んだら身体の色が変わるのはどうして?
〝ビデンデンの乙女〟みたいな結合双生児は、死ぬときも一緒なの?
変顔をしたまま死んじゃったら、変顔のまま永遠に固まっちゃうの?
死ぬ直前にポップコーンのタネを一袋分飲み込んだら、火葬したときにはどうなるの?
植物状態でいるとき、死んだと思われて生き埋めにされたらどうなるの?
もし飛行機で死んじゃったら、どうなるの?
棺桶サイズってみんな同じ? めちゃくちゃ背の高い人だったらどうなるの?
死んだ後でも献血ってできるの?
墓地が死体でいっぱいになって埋めるところがなくなったらどうなるの?
人は死ぬときに白い光が見えるっていうけど、本当なの?
死体って、どんな匂いがするの?
死はつらく、怖いものだが、死について興味を持つのは「いたって普通のこと」だとドーティさんは言う。死について知る機会があまりにも少ないから、余計に死が怖くなるのだとも。
「死を受け入れ、死について学び、死について納得するまで質問を投げかければ、心に抱えている恐怖心をある程度はコントロールできるのではないか――そんなふうに、私をはじめ、多くの人々が考えています」
子どもたちの斬新で楽しい質問の答えを一緒に探すことで、死に対する恐怖や不安がほんの少しでも、和らぐかもしれない。
■ケイトリン・ドーティさんプロフィール
葬儀屋。著書『煙が目にしみる 火葬場が教えてくれたこと』と『世界のすごいお葬式』がニューヨークタイムズ紙ベストセラーとなる。YouTubeで"Ask a Mortician(教えて葬儀屋さん)"というチャンネル名で投稿を続けているほか、"The Order of the Good Death(よき死の会)"の創始者でもある。自身の葬儀会社があるロサンゼルスに在住。
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