子どもと向き合う時間が増える夏休み。そんな時だからこそ読んでおきたい、親子関係を考えるきっかけになる本を紹介する。
2017年に発売された『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版)は12万部を突破した話題の本だ。「チャイルド・マルトリートメント(不適切な養育)」によって、子どもの脳が物理的にダメージを受けるという科学的エビデンスが紹介される。
2019年度に報告された児童虐待の相談件数は19万件もあったという。その後、コロナ禍で自宅での時間が増え、家庭の中での虐待のリスクが高まっていることが厚生労働省によって指摘されている。
本書で扱われる、「マルトリートメント(maltreatment)」とは、mal(悪い)とtreatment(扱い)が組み合わさった単語で、日本語では「不適切な養育」と訳される。「虐待」とほぼ同義だが、加害意図の有無にかかわらず、子どものこころと身体の健全な成長を阻む、不適切なかかわりを指す。「虐待」ならば多くの保護者が「自分の子育てには関係ない」と考えるだろう。しかし、日常の中にマルトリートメントの可能性はあるという。
例えば、以下の行為も「マルトリートメント」に当てはまる。
子どもの前で激しい夫婦げんかをしたり(面前DV)、長時間叱り続けたり、事あるごとにきょうだいや友達と比較したり──。
どこの家庭でも見られる行為のようだが、継続して頻度と強度を増したとき、子どもの脳はこの苦しみを回避しようとするかのように、自ら形を変えてしまうという。
そして、学習意欲の低下や非行、うつ病や摂食障害、統合失調症などの病を引き起こしたり悪化させたりする可能性があるという。これらは、これまでは生来的な要因で起きるものだと考えられていた症状だ。
著者で小児精神科医として30年以上臨床研究に携わってきた友田明美さんは次のように述べる。
「子どもと接するなかで、マルトリートメントがない家庭など存在しません。親になった瞬間から完璧な親子関係を築ける人などいるはずがなく、トライ&エラーを繰り返しながら、徐々に子どもの信頼を得ることができるようになるものです」
本書の出版後、「過去に親から受けた行為を振り返り、それがいまの生きづらさの原因であることに気づいた」という声が多く寄せられていたという。大人も傷ついていたのだ。
そのような中、保護者や養育者への支援の必要性を見出し、第二弾の『親の脳を癒せば子ども脳は変わる』(NHK出版)が発売された。第一弾と併せて読むのも良さそうだ。
子どもを愛しているのに、無意識のうちに子どもの脳機能を悪化させてしまうなんて考えただけで怖い。夏休みは、子どもとの接し方を見直してみるのも良さそうだ。
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