コロナ禍で子どもの自殺が増えているという。子どもに潜む、大人が気づかない意外な心の落とし穴とは。
NLP教育コンサルタント・桑原朱美さんは25年にわたり、授業エスケープ、自転車で廊下を走る、対教師暴力が続く教育困難校などの養護教諭(保健室の先生)として、子どもたちと関わってきた。そこで出会った子どもたちは、たくさんの生きづらさを抱えていたという。
本書『保健室から見える親が知らない子どもたち』(青春出版社)は、教育困難校での経験、NLP(神経言語プログラミング)と脳科学理論から生み出された独自のメソッドにより、さまざまなケースを解決してきた著者の「子どもの心の処方箋」ともいえる一冊。
「今、親は、教師は、そして大人はどう向き合うべきか」。そのヒントがここにある。
受容と共感が大切と言われれば、感情を必死に受け止める。ほめて育てることの重要性が叫ばれれば、意識してほめる。自己肯定感が子どもの意欲を高めると聞けば、成功体験ができる配慮をする......。
大人は「何とかしたい」と思っているにもかかわらず、子どもの生きづらさは一向に解消されない。それはいったいなぜか。
本書で桑原さんは、自身の体験などできるだけ具体的な事例を用いて、保健室から見えた子どもたちの「生きづらさ」「悩み」「自己否定感」の背後にある問題の本質をわかりやすく説明している。
また、「大人自身が、よかれと思ってきたことの中にあった、逆に子どもたちの生きづらさを助長してしまうようなこと」も脳科学の視点から整理している。教育現場で「きれいごと」で済まされてきたことに鋭くメスを入れた部分も。
「子どもたちの生きづらさの事例やその対応法を通して、大人自身も向き合ってこなかった自分の中の生きづらさについて考えるきっかけとなれば幸いです」
保健室は、誰にでもありうる「体調不良」「けが」という理由で来室できる。その敷居の低さが、子どもたちの救いになっているようだ。
体調不良の子ども、何度もけがをする子ども、何も話さないがふらりとやって来る子ども......。桑原さんの経験上、こうした子どもたちは「言語化しきれない『何か』」を持っていて、養護教諭は彼らをしっかり「みて」いるという。
「養護教諭の『みる』は『見る、視る、診る、観る、看る』です。(中略)体をとっかかりにして、子どもたちの内面やその背景までを把握し、教育に生かすことができるのが養護教諭であり、保健室という場なのです」
本書の目次は以下のとおり。
■目次
第1章 保健室には、親が知らない子どもがいる――教育現場における保健室の存在意義
第2章 子どもたちのつぶやきの背景にあるものは?――保健室事例にみる、さまざまな思考パターン
第3章 生きづらさを抱える子どもたちの共通点――他人軸から生まれる、ことばと行動について
第4章 子どもの生きづらさを増幅する大人の勘違い――悩み解決のために知っておいてほしいこと
第5章 主体的な生き方のための大人の役割――脳のしくみを知れば、接し方ががらりと変わる
最終章 他人軸人生から主体的人生へシフトする!――どんな自分も受け容れられたとき、世界は変わる
保健室に来る子どもたちの訴えはさまざまだが、じつは根底に一つの「共通点」があるという。それは「他人軸な生き方」。他人軸になる大本の原因は「自己受容の低さ」なのだそう。
ここでは、桑原さんが「他人軸から主体的な生き方にシフトするために、一番大切」としている「自己受容」にふれておこう。
自分を受け容れられない→自分を消して人に受け容れてもらおうとする→人の評価が気になる→受け容れられない自分を隠そうとする→排除しようとする→自分以外の何かになろうと鎧を着て生きようとする。
この負のスパイラルから抜け出すために、知っておいてほしい考え方がある。
「私たちの肉体は一つですが、いろいろな自分が存在します」
実際、自分の中を覗いたときに「いい子の自分」しかいない、わけがない。「嫌いな自分」「人に見せたくない自分」「こんな自分がいることを認めたくない自分」もいる。桑原さんはこれを「チーム自分」と呼び、「その全部を好きにならなくてもよいのです」「ここにいてもいいよと存在を認めてあげることです」としている。
「どんな自分も、あなたそのものではなく、そしてどんな自分も大切な自分です。そして本当のあなたは小さい自分(チームメンバー)を超えたもっともっと大きな存在なのです」
元保健室の先生が書いた「心の処方箋」は、子どもにも大人にも効き目がありそうだ。
■桑原朱美さんプロフィール
NLP教育コンサルタント。株式会社ハートマッスルトレーニングジム代表。島根県生まれ。愛知教育大学卒業。教育困難校などの養護教諭として25年間勤務。現在は主に養護教諭向けの研修、講座、オンラインコミュニティ運営をしている。全国1000以上の学校現場で採用されているオリジナル教材、「保健室コーチング」など独自のメソッドにより、研修や講演会で活躍中。昨今、子どもの自死や不登校の予防に力を注ぎ、子ども同士が互いを支え合う「友だちコーチング」の出前授業など、活動の幅を広げている。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?