新宿・歌舞伎町にある「ニュクス薬局」は、一人の薬剤師が切り盛りする「深夜薬局」。「ニュクス」とは、ギリシア神話に登場する「夜の女神」のこと。
親からの虐待を告白する多重人格の女性、コロナ禍で生活苦を訴える風俗嬢、「眠れない」とあせる入試前夜の高校生......。ここを訪れる客は、さまざまな事情を抱えている。
本書『深夜薬局 歌舞伎町26時、いつもの薬剤師がここにいます』(小学館集英社プロダクション)は、「ニュクス薬局」で繰り広げられる人間ドキュメント。
「ここは、大人の『保健室』。心のクスリ、処方します」
「ニュクス薬局」は、ネオン街の一角、ホストクラブがひしめくビルの1階にある。営業時間は20時から翌朝9時。世間とほぼ正反対の時間帯に営業し、混み始めるのは26時頃から。
滋養強壮剤のボトルキープ、コンドームのバラ売り、処方薬の配達など、独自のサービスが好評という。この辺りで働く人たちからは「歌舞伎町の保健室」とも呼ばれ、親しまれている。
「ニュクス薬局」を徹底取材して見えてきたのは、ふれあいの人間ドキュメントだった。
2014年の開業以来、朝日新聞、「ドキュメント72時間」(NHK)ほか、数々のメディアから注目されている。本書は、これまでのエピソード、薬剤師という職業に対する考え、コロナ禍の歌舞伎町の実態など、「ニュクス薬局」の知られざる姿に迫る。
ここを訪れるのは、体調を崩した人だけではない。処方箋も持たずに駆け込んでくる人、薬もドリンクも買わずに雑談をして帰っていく人もいるという。
「彼氏に捨てられた」「親とうまくいっていない」「借金つくっちゃった」「お客さんの子どもを妊娠しちゃった」......。恋人や家族にも言えないような話を、そっと漏らしていくことも。薬剤師はどんなときも、それをひたすら「聴く」。
「誰かに聴いてほしい。 でも、誰にも言えない。『何か』を抱えたお客さんとたった一人の薬剤師との物語」
不夜城・歌舞伎町には、人の温もりを感じられる「大人の保健室」があった。一人の薬剤師を頼りに、深夜にそこを訪れる人たちがいた。意外な感じもするが、誰かに話を聴いてもらうことが何よりのクスリ、ということのようだ。
■「深夜薬局」をめぐる10の物語
・妻子あるお客さんの子を妊娠したキャバ嬢
・ホストとバーテンダー、気の合うふたり
・「別荘」でのクチコミでやって来た男性
・多重人格を告白するガールズバー店員
・嵐の夜に駆け込んできた女性の傷
・「ミスが多い」と悩む事務員の決断
・AV出演を相談する性風俗店の女性
・彼氏の学費を工面したいと悩む女性
・コロナ禍で落とした命
・獄中からの手紙
■目次
序章
第1章 不夜城に実在する「深夜薬局」
第2章 深夜薬局をめぐる10の物語
第3章 「夜の女神」が歌舞伎町になじむまで
第4章 深夜薬局を語るためのキーワード
終章 ここは、みんなの「止まり木」
■福田智弘さんプロフィール
1965年埼玉県生まれ。東京都立大学卒。歴史、文学関連を中心に執筆活動を行っている。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?