読むべき本、見逃していない?

今、全国から職を失った若者が歌舞伎町のホストクラブに集まっている!

夢幻の街

 新型コロナウイルスの震源地と呼ばれた東京・新宿歌舞伎町の「夜の街」。その中核をなすのがホストクラブだ。客として出入りする女性たちを追跡したルポ『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)は、BOOKウォッチでずっとPVランキングの上位を維持している。

 ところが、肝心のホストクラブについてまとまった本は意外に少ない。本書『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』(株式会社KADOKAWA)は、「夜の街」の変遷を追った入魂のルポルタージュだ。

貧困問題からホストクラブを取材

 著者の石井光太さんは、1977東京都生まれのノンフィクション作家。日本の少年犯罪や、貧困の問題を追ってきた。

 本書は意外な書き出しから始まる。2019年8月15日、歌舞伎町の老舗ホストクラブ愛本店で行われたイベント「マグロハウス盆踊り」の模様だ。児童養護施設の子どもたち約30人を招いたチャリティーイベントで、ホストたちが小中学生の子どもたちをアテンドし、解体されたマグロの刺身を手巻き寿司にして食べた。

 創業者の愛田武と妻・榎本朱美(いずれも2018年物故)は、ずっと児童養護施設への慈善活動を行ってきた。ホストたちの多くが家庭環境に恵まれず、児童養護施設にいた過去を持つ者も少なくないからだ。

 石井さんがホストクラブの世界に興味を持ったきっかけとも重なる。

 「ホストクラブは社会のレールから外れた人々にとっての拠り所だった」
 「ホストクラブに遊びに来る女性にも同じことが言える」
 「ホストクラブの主な客は、昔も今も体を売っている若い女性たちだ。彼女たちは虐待や障害など様々な問題を抱えて夜の街にたどり着き、セックスと引き換えに手に入れた金をホストクラブで散財する」

 本書は、半世紀に及ぶ歌舞伎町を舞台にしたホストクラブの激動の歴史とそこに生きた人々を以下の構成で叙述したクロニクル(年代記)だ。

プロローグ 男たちの漂流
第1章「愛」の時代  暴力団との癒着、など
第2章 ロストジェネレーション  男の園、など
第3章 革命  広告革命、など
第4章 ホストブーム  客層の変化、など
第5章 歌舞伎町浄化作戦  都知事、など
第6章 寵児  イケメン戦略、など
第7章 落城 お家騒動、など
エピローグ 新型コロナの震源地と呼ばれて

社交ダンスの店として誕生

 ホストクラブ業界のカリスマと呼ばれ、メディアへの露出も多かった愛田武を軸に本書は書かれている。愛田は明かせないような過去を持っている人間を何も訊かず、大勢雇った。1970年代までホストクラブはホストと雇用関係を結んでいなかった。ホストクラブは、もともと有閑マダムを相手にした社交ダンスの店として誕生した。店はホストから場代を取り、女性との出会いの場を提供した。「ホストにしてみれば、店の外で女性と会い、自分に貢がせるのが目的だった」。

愛田武率いる愛グループが絶対的存在に

 愛田はこの業界に「最低保証制度」を導入した。日当は保証された上に、歩合制なので売り上げを伸ばせば、自分の収入も増える。優秀なホストが続々と集まり、愛本店は図抜けた存在になった。

 あるナンバーワンホストが語る。

 「あの時代は、愛がホストクラブの中で絶対的な存在だったね。それ以外はクズって感じだよ。だって客層だって、ホストの質だって全然違うんだから」
 「ホストクラブっていうのはブランドなんだよ。遊びに来る女にしてみれば、愛に行くっていうこと自体がステイタスなんだ。世の社長さんたちが銀座や祇園の一流店に行くっていうのと同じこと」

援交少女が客の「ニューホストクラブ」

 しかし、1990年代のバブル崩壊後、様相が変わる。無許可営業の「ニューホストクラブ」が増殖したのだ。多くが無許可営業なので裏社会とのつながりも深かった。ヤクザそのもののオーナーもいた。

 一方、1970年代生まれの若者たちが新たな動きを起こした。売上の50%+最低保証などの諸手当という給与革命を導入したロマンスなどの店が急伸した。この頃、客層にも大きな変化があった。「ニューホストクラブ」を支えていたのは「援助交際」をする10代の少女たちだった。あるエースホストが語っている。

 「ロマンスの客の九割は売春で稼いでいる子たちだったけど、援交をやっている子がむちゃくちゃ多かった印象はあるね。客の六割、七割が援交の子だったと思うよ。年齢は確認してないけど、十五、六歳の子もいたはず」

2000年代のホストブーム

 ホストがテレビ番組に登場するホストブームが2000年代に到来、メディアへの露出を受けて、昼の仕事で働く一般女性たちもホストクラブに足を運ぶようになった。定番の「シャンパンコール」が始まったのは1999年だという。

 この後、関西系ホストクラブの歌舞伎町進出と抗争、無法地帯となった歌舞伎町に石原慎太郎・都知事が浄化作戦に乗りだす。さらにイケメンホストのブームが訪れる。

新型コロナとホストクラブ

 さて、ホストクラブの「総本山」だった愛本店はどうなったのか? 愛田が病に倒れてからのグループの落日ぶりは、さながら「平家物語」を読む思いがした。

 そしてエピローグでは、新型コロナ対策に乗り出したホストクラブの現状を紹介している。

 あるホストクラブグループの総帥はこう話している。

 「コロナが起きたことで、グループは不採算の店をつぶせるし、稼げないホストは自動的に辞めていきます。つまり、店や人を整理できるようになったんです。長い目で見れば、ここでいったん絞った方が今後伸びていくことができるでしょう」

 「コロナ禍によって職を失った者たちが、大金を手に入れることを夢見て全国から続々と集まっている」と石井さんは結んでいる。

 BOOKウォッチでは、石井さんの著書『育てられない母親たち』(祥伝社新書)、『本当の貧困の話をしよう―― 未来を変える方程式』(文藝春秋)のほか、「夜の街」の緊急ルポ『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)、元歌舞伎町ナンバーワンホストの信長さんの『No.1ホストが明かす 心に残る話し方』(WAVE出版)を紹介済みだ。

  • 書名 夢幻の街
  • サブタイトル歌舞伎町ホストクラブの50年
  • 監修・編集・著者名石井光太 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・314ページ
  • ISBN9784041080238

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