読むべき本、見逃していない?

少年院の女子、入所理由のトップは?

  • 書名 本当の貧困の話をしよう
  • サブタイトル未来を変える方程式
  • 監修・編集・著者名石井光太 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2019年9月27日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数A5判・255ページ
  • ISBN9784163911038

 『本当の貧困の話をしよう―― 未来を変える方程式』(文藝春秋)はノンフィクション作家の石井光太さんが、少年少女向けに「貧困」について語りかけた本だ。17歳ぐらいの読者を念頭に置いている。石井さんは、最近はNHKの「クローズアップ現代+」にもレギュラー出演しているから、テレビでもおなじみの人だ。

どうすれば貧困から脱出できるか

 1977年生まれの石井さんは2005年『物乞う仏陀』でデビュー、いきなり開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞にノミネートされた。アジアの路上で出会う子供のもの乞いや障害者の背後にある現実を描いた壮絶なルポだった。さらに11年の『レンタルチャイルド』(新潮社)が第33回講談社ノンフィクション賞にノミネート。東日本大震災に関連した『遺体-震災、津波の果てに』は各メディアにとりあげられ、いちだんと注目されるようになった。

 日本の少年犯罪や、貧困の問題にも関心が深い。『「鬼畜」の家』(2016年)、『43回の殺意』(2017年)、『漂流児童』(2018年)、『虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか』(2019年)など関連する著書も多い。「クローズアップ現代+」のコメンテーターは19年春から務めている。

 各地でしばしば講演に呼ばれる。本書はそうした何百回という講演をもとに、改めて単行本としてまとめ直したものだ。どうすれば貧困から脱出し、人生を豊かにすることができるか。さらに社会や世界をよくすることに貢献できるか。本書は長年、貧困や非行の現場を歩いて多くの当事者にインタビューしてきた石井さんの熱い思いが詰まっている。

日本は7人に1人が貧困層

 「第1講 すぐそこにある貧困」、「第2講 途上国のスラムで生きる」、「第3講 底辺に落ちた子供たち」、「第4講 学校じゃ教えないセックスの話」、「第5講 貧困と少年犯罪」、「第6講 格差を越えて、未来をつくる」に分かれている。日本と海外の話が混じって登場する。

 その中でなるほどと思ったのは、「貧困率」の話だ。日本は7人に1人が貧困層だという。これは最近しばしば言われているが、本書で納得したのは、その貧困層が日本では一般層と混じって暮らしているという指摘だ。海外では、貧困層は特定地域に固まって住んでいることが多い。すると、その地域の中では相対的に平等に近い。ところが日本のように「非貧困層」と混在していると、いろいろな意味で「貧困層」の人はより強く劣等感や疎外感を持ちやすいというのだ。

 これは確かにそうだなと思った。たぶん昭和20年代の日本を考えると、わかりやすい。周囲が皆貧しいから、靴下やズボンにツギが当っていてもさほど気にならない。いまならすぐに囃し立てられる。いじめにあいやすい。「7人に1人」という比率が多いとか少ないかではなく、地域の少数者として点在して暮らすことの辛さがある。逆に言えば、そうした少数者の子供たちが、はじき出され、ゲーセンなどでたむろし、万引きなどをしたり、ワルの先輩の傘下に入ったりしやすい。そこで初めて「仲間」が形成されるからだ。

幻覚に24時間苦しめられる

 本書は「貧困」に起因するマイナスの事例として、川崎の中一男子殺害事件、三鷹ストーカー殺人事件などを取り上げている。一方、這い上がった有名人では、ソフトバンクの孫正義氏、安室奈美恵さん、サッカーのロナウド選手、歌手のレディー・ガガなどが登場する。それぞれに知られた話ではあるが、教訓が詰まっている。

 「第4講 学校じゃ教えないセックスの話」では、少年院の入所者で、女性の場合は「覚せい剤取締法違反」が24.7%を占めトップになっていることに注目している。覚せい剤でクスリ漬けにし、売春させて稼ごうとする悪い男に引っかかっているのだ。男子は覚せい剤がベスト5に入っていない。石井さんは、こうした違法な薬物類は深刻な後遺症を残すということも強調する。救命センターに運ばれてくる自殺企図者の半数は薬物依存患者だという(抗うつ剤を含む)。さらに石井さんは、精神病院や医療少年院の治療現場を知っているかと畳み掛ける。大麻の後遺症でアリの群れに追いかけられる幻覚に24時間苦しめられている。あるいは幻聴を打ち消すために、コンクリートの壁にひたすら頭を打ち続けている人がいる。薬物の常習は深刻な後遺症を残すのだ。

 貧困は自暴自棄につながり、さらに自分の人生をめちゃくちゃにしかねない。本書では、そうならないために何をすべきか、力説している。特に「心のレベルアップ」「自分の未来について考えていく力をもつこと」を強調する。このあたりは期せずしてベストセラー、『君たちはどう生きるか』とも重なる。

 もちろん、だれもが孫正義氏や安室奈美恵さんにはなれないが、本書では、日本の社長役130万人のなかで、高卒37.5%、中卒6.7%という数字も掲載している。

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?