読むべき本、見逃していない?

「過労死」高橋まつりさんは「0円東大生」だった!

  • 書名 東大を出たあの子は幸せになったのか
  • サブタイトル「頭のいい女子」のその後を追った
  • 監修・編集・著者名樋田敦子 著
  • 出版社名大和書房
  • 出版年月日2018年12月 5日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・224ページ
  • ISBN9784479393160

   センター試験が終わり、受験生たちはいよいよ最後の追い込みに必死だろう。家族ら周囲もピリピリしているに違いない。

   本書『東大を出たあの子は幸せになったのか』(大和書房)は、副題にもあるように「女子」に焦点を絞ったものだ。子どものころから「頭がいい」といわれ、進学競争の流れに乗って東大に入り、その後、様々な人生をたどった女性らにインタビュー、「幸せ」について考えている。著者の樋田敦子さんは明治大学を出て新聞記者になり、その後はフリーランス。女性をテーマに取材を続けている。

学校側が「もっと上をめざせる」と応援

   本書は「過労死」で注目されることになった元電通社員、高橋まつりさんの話から始まる。樋田さんが東大女子のことを取材したいと思ったのも、この事件がきっかけだ。母の幸美さんが取材に応じている。

   まつりさんは小学生のころから勉強ができた。経済的に恵まれた家庭ではなかったので、授業料全額免除の特待生として、静岡県の私立に進む。当初は「東大」を考えていなかったが、学校側がまつりさんに注目、「もっと上をめざせる」と背中を押す。補習でバックアップするからと、「まつりプロジェクト」が組まれた。まつりさんも東大には400万円の年収制限で授業料免除制度があることを知り、その気になる。

   法学部も考えていたようだが、現役合格するために文学部系の文Ⅲに進んだ。母親が当時の娘の思いと頑張りぶりを振り返っている。

「東大に入ったら、絶対にいい職業に就ける。自分で稼いで、お母さんにも楽をさせてあげたい」
「たまに『お金があったら、私はこんなに勉強しなくてもいいのに。裕福な家庭だったら、こんなに私はがんばっていない......』と言っていました」

   在学中は文科省や中国政府から奨学金を得て中国に1年間留学した。そして「激務だけど、給料はいい」と、電通に。入社試験の「自己PRのキャッチフレーズ」は「0円東大生」だったという。これまで塾も学校も、いっさいお金をかけずにやってきました、ということだ。その後の推移はニュースで報じられている。まつりさんから母への最後のメールと、その後の状況についても本書には出ているが、無念さが募る。

   最近の電通はすっかり「ホワイト企業」に様変わりしているというが、時すでに遅しだ。

桜蔭から東大...生活保護

   本書にはさまざまな東大女子が登場する。全体として家庭環境に恵まれ、身内にも東大出身者がいる人が多い。中には天才型もいるが、大半は「努力型」、子どものころからコツコツ勉強を重ね、それが習慣になっていた人たちだ。

   そうした中では、「田中さん」(仮名)のことが記憶に残った。父は東大、母はお茶の水大。恵まれた環境と遺伝子だ。子どものころから一度教科書を読んだり見たりすると内容を憶えてしまう。マドンナやホイットニー・ヒューストンを聴きながら超難関・桜蔭から文Ⅰに進んだ。このあたりまでは順風満帆、バラ色の人生が確実視されたが、なぜか司法試験で躓いた。4回も失敗したのだ。

   司法試験とは相性が悪いということで、道を替え、多数の外国語を習得する。そして韓国人と結婚し、のち離婚した。子供がどんどん増えて6人。保健婦さんの勧めで生活保護を申請したら通ってしまったという。最近はパートのアルバイトなどをしているとか。

   樋田さんの取材に、田中さんはあっけらかんとしていた。「東大出たのにすみません、バカなことやって、えへへ。その『えへへ』を身につけると、みんなと違う自分になれると思います」。

   競争じゃないところに身を置くと、精神的に気が休まる。学歴や肩書は、自分に自信のない人の鎧にすぎない、もっと裸の自分を掘り下げなければいけない、と言い切る。次のステップが期待できそうだ。

一期生は19人

   本書は「東大女子はこうして育った」「地方にいる頭のいい女子」「1974年生まれの異才たち」「『東大だから』の差別」「東大の看板は捨てました」「勉強したほうが幸せになれる」の6章構成。もちろん、様々な分野で社会的国際的に活躍する女性たちも登場する。

   1946年、東大に初めて入学した女性は19人。全合格者の2.1%に過ぎなかった。最近の女性比率は18%前後。毎年600人余りが入学する。この比率は過去10年、ほとんど変わっていない。これだけ「東大女子」が増えれば、さまざまな「卒業後」の人生があるのは当然だ。ただし、日本はまだまだ男性社会。どの組織に入っても、周囲の微妙な視線を感じて、何かとストレスが高まることだろう。

   かつて大学生の就職問題について詳しいライターから、「社会に出ると、明治大学あたりが学歴的にはちょうどよい」という話を聞いたことがある。そういえば本書の著者も明大出身だ。「ちょうどよさ」を知る立場からの、「東大女子論」といえるかもしれない。

   本書は特に「東大女子」を持ち上げるでもなく、マイナス面をあげつらうわけでもない。「東大女子30人、真実の追跡ルポ」というのがうたい文句。東大などの難関大学を志望している女子受験生には参考になるだろう。本欄では類書で『ルポ東大女子』(幻冬舎)も紹介している。

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?