読むべき本、見逃していない?

ソフトバンクの孫社長にしごかれ死にそうになった僕

  • 書名 恋愛依存症のボクが社畜になって見つけた人生の泳ぎ方
  • 監修・編集・著者名須田仁之 著
  • 出版社名ヨシモトブックス 発行、ワニブックス 発売
  • 出版年月日2019年2月27日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・315ページ
  • ISBN9784847097676

 「オマエら、ホンキでやってるのか! オレはホンキなんだよ!」と怒鳴り、黒板消しを壁に投げつけたのは、ソフトバンクの孫正義社長(当時)。そんな衝撃的な書き出しで始まるのが本書『恋愛依存症のボクが社畜になって見つけた人生の泳ぎ方』(ヨシモトブックス 発行、ワニブックス 発売)だ。

IT業界生き抜いた青春ノンフィクション

 ちょっとやわな恋愛小説と思ったら、まったく違っていた。IT業界の荒波の中で厳しく鍛えられてゆく著者の青春を描いたノンフィクションだ。日本のIT企業勃興期の熱いエネルギーが伝わってくる。

 本書はよしもとクリエイティブ・エージェンシーが始めた原作開発プロジェクトのノンフィクション部門で大賞を受賞した須田仁之さんの『〈2003年〉ITからまさかの「お惣菜屋」有限会社スダックス誕生秘話』を大幅に加筆・修正し、改題したもの。

 須田さんはソフトバンクグループの経営企画、アエリア社取締役CFOを経て、現在は複数のベンチャー企業の役員・アドバイザーを務める投資家。茨城県牛久市での高校生活に始まる「非モテ」の著者の数少ない恋愛体験とハードな仕事の日々が交互に描かれる構成。なんと言っても、IT企業での「社畜」ぶりに驚かされた。

 社会人2年目で早くも2社目。ソフトバンク経由で入社した衛星放送スカパーで、鬼のような2人の上司に、エクセルとパワーポイントを使って大量の資料を作らされる日々を送る。「オマエ、この資料は孫さん(ソフトバンク社長)と出井さん(ソニー社長)が読むんだぞ。こんなんでいいわけないだろが!」と罵倒される。「二等兵アリ」として耐えるしかないと我慢した。

 さらにスカパーからソフトバンクへ極秘に転籍することになり、ばれないように「山田八郎」という偽名で仕事をしたというくだりには笑ってしまう。同社が初めて通信事業に乗り出す前夜、ヤフーのブランドで「ADSL」という通信規格を始める頃のエピソードが抜群に面白い。韓国のモデム業者に電話1本でモデム100万台を注文する孫さん。1台1万円の原価として100億円だ。個人宅へ100万台設置する仕事も始まる。

 一般顧客宅で無事に通信が繋がると孫さんはメンバーを焼き肉屋に連れて行き、おごった。そして数日後一人ひとりに100万円の現金が入った封筒を手渡した。孫さん個人からのご褒美ではなく、給与扱いでしっかり課税されていたが。

 冒頭、孫さんが黒板消しを投げつけたのはこの頃のことだ。「タスク(業務)を1000個書け」と言われる。これまで著者は、「ただ単に大失恋によって心を失っていたおかげで、余計な力を入れずに漂うに流されていただけだ」と書き、古式泳法「のし泳法」に自分の生き方をたとえている。しかし、孫社長からの直接攻撃に息も絶え絶えになる。「月460時間労働していた証拠になるエクセル表を実家に送信しておくべきだった」とまで思いつめる。元の鬼上司から元の職場への帰還を命じられ、ことなきを得た。

恋愛もITでイノベーション

 恋愛も「IT革命」によってイノベーションしようと、深夜のネットサーフィンで出会い系サイトに出入りする。すぐに20人ほどの「メル友」ができた。エクセルで特徴、年齢、出身地などのデータをリスト化し、進捗状況も管理したというから、仕事が恋愛にも役に立ったようだ。

 この後、ソフトバンク子会社をやめて友人が経営する上場会社の役員になったが、赤字で会社を分割した上で売却することになった。そしてお惣菜屋を千葉県市原市で起業する。スーツを脱ぎ、エプロン姿で奮闘するが、赤字が膨らむ一方。彼の人生は音を立てて崩れ始める。さあ、どうこの窮地を切り抜けるのか。

 単なる成功譚ではなく、深刻な失敗経験が書かれているので、著者に感情移入してしまう。そして恋愛の行方にも。小説ではなくノンフィクションなので、読む方の関心も只事ではなくなる。そういえば秋葉原でヤフーが無料でモデムを配っていた頃があったなあと遠い目で過去を思い出した。

 その後、携帯電話事業、海外投資事業と事業を拡大していったソフトバンクグループの勃興期が断片的だが活写されている。「裏街道を歩んできたIT界の変態かつ天才がついにこの本でバレてしまう」と小澤隆生・ヤフー常務執行役員も賛辞を寄せている。

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