読むべき本、見逃していない?

「移民」を否認する国は「人間」を否認する国である!

  • 書名 ふたつの日本
  • サブタイトル「移民国家」の建前と現実
  • 監修・編集・著者名望月優大 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2019年3月13日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書判・224ページ
  • ISBN9784065151105

 国会で安倍首相がどのような説明をしようとも、日本は今、歴史的に未経験の社会に様変わりしつつある――そんな思いを強くするのが、近年の「外国人労働者」問題だ。

 2019年4月から外国人労働者の受け入れを拡大する新制度がスタートし、今後5年間で35万人増やすことを見込まれる。メディアで取り上げられる機会も目立ってきた。関連の単行本も増えている。本書『ふたつの日本――「移民国家」の建前と現実』 (講談社現代新書)はその中の最新刊だ。

「移民」を否認する国

 著者の望月優大さんは1985年生まれと若い。経歴もユニークだ。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了後、経済産業省、グーグル、スマートニュースなどを経て2017年冬に独立。現在は、日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。国内外で移民・難民問題を中心に様々な社会問題を取材し「現代ビジネス」や「Newsweek」などの雑誌やウェブ媒体に寄稿。代表を務める株式会社コモンセンスでは非営利団体等への支援にも携わっている。

 元官僚であり、IT企業を経て非営利団体にも関わりネット媒体で発信する。新しいタイプの日本人の一人といえる。

 ただし、本書の内容は極めてオーソドックスだ。「はじめに」で、「『移民』を否認する国」日本について語り、以下のような構成になっている。

 第1章 「ナショナル」と「グローバル」の狭間
 第2章 「遅れてきた移民国家」の実像
 第3章 「いわゆる単純労働者」たち
 第4章 技能実習生はなぜ「失踪」するのか
 第5章 非正規滞在者と「外国人の権利」
 第6章 「特定技能」と新たな矛盾
 終章 ふたつの日本

「移民」はすでに400万人

 このラインナップを見ても分かるように、おおむね近年の類書で書かれたことが改めて取り上げられている。もともと現場を踏むジャーナリスト出身ではないので、どちらかと言えば淡々とした報告が続く。ただし、元官僚だけあって、データの分析は緻密かつ慎重で参考になる。

 たとえば、実際のところ、日本に「移民」はどれくらいいるのか。日本に住む外国人をいくつかの在留資格などに分類しながら、積み上げていく。「永住権」を持つ外国人のみをカウントすると、108.5万人。「留学」や「技能実習」も含めると、263.7万人。このあたりまでは良く知られている。望月さんはさらに、「帰化者」や日本国籍の「国際児」などを含めた数字も示す。そうすると約400万人に膨らむ。ここに「超過滞在者」も含めると、さらに増える。「移民問題」がもはや見過せる数字ではなくなっていることに気づくだろう。

 本書は全体に抑制された筆致ではあるが、政策の問題点を指摘している。

・「移民」を否認する国は「人間」を否認する国である。
・今、目の前にふたつの道がある――撤退ではなく関与の方へ、周縁化ではなく包摂の方へ、そして排除ではなく連帯の方へ。これは「彼ら」の話ではない。これは「私たち」の問題である。

 いわば、望月さんのマニフェスト。元官僚らしからぬ青臭さが好ましい。論壇などでも今後の活躍を期待できる21世紀人だと感じた。

 本欄では関連で、豊富な現場取材をもとにした『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』(花伝社)、『コンビニ外国人』(新潮新書)、『団地と移民』(株式会社KADOKAWA)なども紹介している。

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