平成の時代、鉄道界は飛躍的な進歩を遂げた。新幹線と大都市圏を中心に鉄道ネットワークは拡大、駅をはじめとした鉄道施設も一新された。
昭和末期の昭和62(1987)年、JRグループ発足の頃、鉄道のイメージは決して明るくはなかった。長年の厳しい労使交渉ですさんだ職場、汚い駅のトイレ。JR東日本となり、首都圏の駅ではまっさきにトイレの改修・美化から駅の改良が始まったのを記憶している。だから平成の鉄道とは、JRとなってからの鉄道と言い換えてもいい。
本書『どう変わったか? 平成の鉄道』(鉄道新聞社)は、鉄道ジャーナリスト・松本典久さんが、数多くの写真とともにこの間の変化をつづった本だ。以下の構成から成る。
第1章 究極の鉄道へ。進化を続ける新幹線 第2章 技術革新と多様化。百花繚乱の新型車両 第3章 拡がるネットワークと新しい鉄道の姿 第4章 平成の時代、「さよなら」の記憶
上野止まりだった東北新幹線が東京駅まで延伸したのは平成3(1991)年のことだった。北へはさらに時間がかかった。平成14(2002)年に盛岡~八戸間、平成22(2010)年に八戸~新青森間が開業して全通。さらに青函トンネルを抜けて平成28(2016)年、北海道新幹線の新青森~新函館北斗間が開通、その先の工事も進められており、2031年春には札幌駅まで全通する予定だ。
このほかにもミニ新幹線として山形・秋田新幹線の開通、長野行新幹線から北陸新幹線の開通、九州新幹線鹿児島ルートの完成と全国に新幹線ネットワークが拡がった。
既存の東海道・山陽新幹線でも車両が進化した。開業時の0系を国鉄晩年にフルモデルチェンジした100系を開発。さらに最高時速270キロの300系による「のぞみ」の運転が平成4(1992)年から始まり、超高速時代の幕開けとなった。JR西日本の500系は日本初の時速300キロ運転を実現。その後、700系、N700系、N700Aを開発、N700Aは東海道新幹線での最高時速285キロ運転も可能で、東京~新大阪間は最短2時間22分となった。さらに高性能化をはかったN700Sが2020年度に実用化される予定だ。
東北・上越新幹線などJR東日本の新幹線車両の進化も著しい。E5系・E6系は時速320キロ運転を実現している。
第2章では、国鉄型から抜け出し、多様化したJR各社の特急を写真付きで紹介している。特に水戸岡鋭治氏の車両デザインを起用したJR九州は、「つばめ」、「ソニック」、「ゆふいんの森」などのすぐれたデザインで話題を集め、鉄道の可能性を広げた。平成25(2013)年には「ななつ星in九州」が運行を開始、窮極の「クルーズトレイン」のあり方を示した。
平成時代は、車両だけでなく鉄道そのもののネットワークも姿を変えた。既存の貨物線を利用して平成13(2001)年に「湘南新宿ライン」という新しい運行系統が生まれた。そして平成27(2015)年には、「上野東京ライン」が完成した。
関西圏でも貨物線の旅客利用が進められ、平成31(2019)年3月には城東貨物線を活用した「おおさか東線」が全通し、新大阪~奈良間の直通快速も走り始めた。
首都圏では今年(2019年)11月に横浜郊外を走る相模鉄道がJRに乗り入れ、渋谷・新宿方面へ直通する。また羽田空港と東京駅や渋谷・新宿方面、湾岸方面を結ぶ新線も検討されている。大阪ではなにわ筋線の開業も視野に入ってきた。「令和」時代にも鉄道はさらに進化を続けそうだ。2027年にリニア中央新幹線が品川~名古屋間で開業すると、日本の鉄道網と国のかたちはさらに変化を遂げると予想される。
国鉄やJRの関連書として、『昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実』(講談社)、『人口減少と鉄道』(朝日新聞出版)、『関西圏鉄道事情大研究 ライバル鉄道篇』(草思社)などを紹介している。
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