昭和62年(1987)、日本国有鉄道はその幕を閉じた。その数年前、ある取材先で、「国鉄が分割民営化されるプランがあるらしい」と聞き、驚いた記憶がある。まだそんな話が一度も報道されたことはなく、上司にも一笑に付された。そして、今年JR各社は30年を迎えた。
国鉄の膨大な赤字を解消するため、昭和58年(1983)、国鉄再建監理委員会が設置された。本書によると、「当時、国鉄の分割・民営化を唱えるというのは、『運輸省に対する反逆だった』と中曽根は言う」とある。容易なスタートではなかったのだ。
国鉄の中にも改革派はいた。3人組と呼ばれたうちの一人が葛西敬之氏(現JR東海代表取締役名誉会長)である。本書は日本経済新聞社で国鉄を担当した社会部記者である筆者が、当時の取材に加えて、その後も関係者を訪ねあるき、「国鉄分割」とは何であったかを調べ歩いた貴重な記録である。
田中角栄をはじめとした政治家も登場する。また国労、動労の組合幹部も詳しく描写されている。「秘密警察」「裏切り」「連判状」など、おどろおどろしい見出しや言葉も踊る。
いわゆる生産性向上運動による組合への締め付けは不当労働行為とされ、国鉄当局の腰のひけた労務政策が続き、職場モラルは荒廃した。国労からJRに移れなかった労働者は少なくない。国労の弱体化は社会党の解体につながり、今日の政治状況に至っている。
平成の改元も政治日程に上がったいま、JR30年とほぼ平成史が重なることに気がついた。そういえば、中曽根政権のスローガンは「戦後政治の総決算」だった。だとすれば、たしかに国鉄の終わりは戦後の終わりだったに違いない。(ブックウォッチ編集部 JW)
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