親友の姿をしているのに、中身は正体不明の「ナニカ」にすり替わっている......『光が死んだ夏』第1巻(KADOKAWA)は、そんな異色の設定で始まる。
Webコミックサイト「ヤングエースUP」で好評連載中の漫画『光が死んだ夏』の、記念すべき初単行本だ。ツイッターなど各種SNSでも大きな話題になり、2022年3月4日の発売以降、5月時点で第5刷まで発行されている。
本書は、親友の姿をした「ナニカ」と少年・よしきの青春ストーリー。
田舎の集落で暮らすよしきと光は、ずっと一緒に育ってきた。しかしある日、よしきが光だと思っていたものが別の「ナニカ」にすり替わっていることに気づく。そのとき、よしきの胸に湧いてきたのは「それでも一緒にいたい」という思いだった。
よしきは、黒髪で大人びた印象の男の子だ。あだ名は「エーミール」で、知識も豊富。光にすり替わった何かを受け入れる自分自身を「狂っている」と自嘲し、悩んでいる。
光は、よしきに比べやんちゃで、ひょうきんな性格の親友だった。彼にすり替わった「ナニカ」は光の記憶を引き継いでいるものの、初めて体験することは新鮮に感じるようで、買い食いなど小さなことにも感激する。
本書は一見、そんな2人のいつも通りの日々を描いているようだが、どこかに不気味さが漂っていてページをめくる手が止まらない。
作中で、光ではないものにすり替わっていることを暴かれたナニカは、よしきを抱きしめてこう懇願する。
「初めてヒトとして生きたんや。学校も友達もアイスも全部初めてで楽しかった...。身体も人格も借り物やけど、お前のこと大好きやねん...」
それを聞いて、「偽物でもいいから側にいてほしい」と考えるに至るよしきの心理描写は圧巻だ。 同じ教室で授業を受けたり、帰り道にカツを買い食いしたり。仲良しな男子高校生どうしのように微笑ましい日々を送る2人だが、集落では不可解な事件が起こっていく。
そもそも、光ではないナニカはいったい何者なのか? 光に何があったのか? お互いに対して特別な感情を抱いているよしきとナニカの青春ストーリーに、散りばめられた謎がサスペンスホラーとしての面白みを添える。
第1巻には、第1話から第6話までと、コミックス描き下ろしの特別編も収録されている。見たことのないBL作品に飢えている、甘い恋愛ストーリーでは物足りない読者なら絶対に満足できるはず。
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