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【試し読み】日本人の5人に1人が不眠症。眠れないあなたに読んでほしい、科学的に眠くなる物語

3分読むだけでグッスリ眠れる本

 不眠症はいまや「国民病」と言われ、日本人の5人に1人が悩んでいるという。人生の3分の1もの時間を占める睡眠。この時間がもっと快適になれば......と思っているあなたに、読んでほしい1冊がある。

 本書『3分読むだけでグッスリ眠れる本』(秀和システム)は、「一流大学の科学的な根拠(エビデンス)がある、大人のための読むだけで眠くなる『おやすみ本』」。著者の弥永英晃(やなが ひであき)さんは、臨床歴22年で1万2000人以上の症状を改善させてきた眠り専門の心理カウンセラーだ。

 BOOKウォッチでは、本書を2回に分けてご紹介。1回目は、本書の眠くなる秘密を見てきた。2回目は、11の物語の中から2つの物語の試し読みをお届けする。

1回目から読む

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 1回目に「潜在意識は現実とイメージを区別できない」という話が出てきたが、まさに。物語を読みながら、味やにおい、音や色のイメージが浮かんできて、本当に心地よくなっていった......。

 さて、あなたは1話3分読むだけでウトウト眠くなるだろうか? ぜひ試してみてほしい。(眠くなったら就寝してください)

 ここでもう1度、この本の使い方・読み方をおさらいしておこう。

【この本の使い方・読み方】(抜粋)
・一人になれる静かな環境で読んでください。
・文章の末端にある()内の部分は、その通りに従ってください。たとえば(あくび)と書いてある場合は、実際に「あくび」をしてください。
・文中の太字の箇所は、いつもよりもゆっくり、自分に語りかけるように読んでください。なお、物語全体をゆっくり音読すると、さらに効果が出ます。

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第1話
子猫のクウ~
不思議な「眠りボタン」の魔法


 ここは幸せの王国。
 ここには妖精、動物、こびと、魔法使いなどが幸せに暮らしています。

 クウは、お母さん猫のローザと親子二人で、森の中にある小さな2階建ての木でできた家に住んでいます。
 ローザお母さんは料理が大好きです。
 ローザお母さんが魔法をかけると、こびとや妖精がフライパンを裏返しにして、おいしいホットケーキを焼いてくれます。

「お母さん、おはよう......」
 クウは眠そうな目をこすりながら、けだるそうに挨拶しました。

「おはよう、クウ! あら、なんだか、あくびしてまだ眠たそうな顔してるわね。きのう、眠れなかったのかしら?」

「お母さん、じつは最近なかなか眠れないんだ」
 クウはだるそうに言いました。

 すると、ローザお母さんが教えてくれました。
「それなら、魔女のウィンレッドおばあちゃんに、眠りの魔法をかけてもらってゆっくり寝てくるといいわよ」

 大魔法が使えるウィンレッドおばあちゃんは、ここから5キロくらい先、森の奥深くにある洞窟の中に住んでいます。
 クウが家を出る前に、ローザお母さんは焼きたてホカホカのホットケーキと甘いハチミツを、おみやげに持たせてくれました。
 クウは森の中をテクテク......と歩いて洞窟を目指します。
 歩けば......歩くほど......なんだか足が重くなってきて、なんとな~く、ずー――――んと、体が沈むような感覚を覚えてきました。

 なんだか、余計に疲れてきてあくびが出てきます。
「あーあー(あくび)」
「なんだか、ずいぶんと遠くまで歩いてきたから疲れちゃったよ

 あくびをしながら、クウは独り言をつぶやくと、さらに眠くなってしまいました。
 お母さんに「おみやげを持っていきなさい」と言われたホットケーキと甘いハチミツは、リュックの中に入っています。

 長い時間かけて、クウはやっと......やっとの思いで、魔女ウィンレッドの洞窟にたどり着きました。洞窟の中は、乳白色に満ちた鍾乳洞(しょうにゅうどう)の中にいるような落ち着いた白い空間が広がっていて、明るくなっていました。

「ウィンレッドおばあちゃん、お久しぶりです!」
 クウは疲れて眠くなったまぶたをこすりながら、声を出しました。

 ......すると洞窟の中から、やさしい笑顔を浮かべた魔女のおばあちゃんが出迎えてくれました。
「おや、クウちゃんじゃないかい? ずいぶんと遠いところ歩いてきたね。どうしたんだい?」
 ウィンレッドおばあちゃんは、やさしくクウに語りかけました。

「ウィンレッドおばあちゃん。
 最近、眠れてなくて、なんだかしんどいんだ。
 お母さんが、眠れないんだったら、おばあちゃんのところに行って、
 ゆっくり寝てきなさいって、教えてくれたから来たんだけど。
 お母さんがホットケーキを焼いてくれたから、一緒に食べない?」

 クウは背中のリュックから、ローザお母さんが焼いてくれたホットケーキとハチミツを取り出しました。

「それは気が利くなぁ。早速、このテーブルで、そのうまそうなハチミツを塗って食べようじゃないか」

 ウィンレッドおばあちゃんもクウも、甘い甘いハチミツのホットケーキをたくさん食べました。満腹になるほど、なんだか眠たくなってきました。

「ふぁぁぁぁぁあ(あくび)」

「もうお腹いっぱいで幸せいっぱいだよ......。
 なんだか、だいぶ眠くなってきちゃった。
 おばあちゃん、もう限界。
 すぐに寝たいんだけど、眠るところはどこなのかな?」

 クウはもう眠くて眠くて仕方がありません。

「クウちゃん、まわりをよく見てごらん、キラキラ光ってるだろ? この洞窟は、天然の魔力の高い水晶でできているだよ。その魔力で、さらに深く眠れるようにしてあるんだ......。そして、ほら、よく見てごらん? あの平べったい水晶の上に、ちょうど眠れるスペースがあるだろ? そこでゆっくり横になってごらん?

 ウィンレッドおばあちゃんは水晶を指差しました。

「うん、おやすみなさい......
 そう言うと、テクテクとクウは水晶の上に寝そべりました。
「ひんやりするかと思ったけど、なんだかあったかいね。体がポカポカしてきた
 クウの触れている体の足先から背中、手先まで血が巡って、岩盤浴をしているようにポカポカ気持ちいいのです。

「この水晶は、炎の魔力のエネルギーを蓄えているから、ポカポカととってもあたたかいんだよ。そのあたたかさで、どんどん眠くなってくるかもしれないね」

 クウは体中がポカポカ......、どんどん眠くなってきました(あくび)。

「では私が今から、クウちゃんの体に魔法をかけるよ。
 それは眠りのボタンを体につけるんだ! ☆◆★凸!」

 そう言うと、クウの手のひらと足に、赤色の押しボタンが現れました。

ゆっくりと深呼吸をして、ゆっくりゆっくり息を吐いていくと、またどんどん眠くなってくるよ。そして私が、クウちゃんの体の機能を休ませるこのボタンを押すと、ずっと力が抜けてますます眠くなってくるよ

 そう言うと、ウィンレッドおばあちゃんは「眠りのボタン赤!」と魔法を唱えて、クウの右手、左手、右足、左足の赤いボタンを押しました。
 どんどん眠くなってきます......(あくび)。

 力が抜けて抜けて......スーッとラクになって気持ちがいい。
 深く、もっと深~く沈んでいく感じがします。

「今度はボタンの色が青色に変わるから、そのボタンを押すと、さらに全身から力が抜けて眠くなるよ。色が変わるごとに、さらに深く、深~く眠くなっていくんだよ......。この不思議な眠りのボタンの魔力は、とても強いんだ。
 昔のアメリカでは、スタンフォード大学という名門大学があったそうだけども、そこの心理学部の教授が、この方法を編み出したそうだ。心がラクになって眠くなるんだよ

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(C)宮咲ひろ美

 クウは、そんな昔話を聞かされてもよくわからないけれども、とにかく昔すごく頭のいい人が研究した眠りにつく方法なんだと思いました。

 もう考える気持ちも放棄したくなるように、頭がボーっとしてきて何がなんだかわからなくなります(あくび)。
 すると、さらにどんどん体がリラックスして、軽くなり眠くなってきました。

 もう我慢できないぐらいに、眠くて眠くて仕方がありません。

 目を開けようと思っても、まぶたが閉じてしまって、もう開けることができなくなっています。

「あー......何日も眠ってなかったから。眠りって、体の休息だよね。
 本当に眠ることって幸せだなぁ......気持ちいいなー」

 さっき食べたホットケーキでお腹も満たされ、幸せをいっぱい感じています。

「さあ、最後のボタンだよ。
 このボタンを押すと一気に眠りの世界へと入っていくよ。
 そして目覚めたとき、とっても体が元気になって健康体になっているよ。
 眠っているあいだに健康ホルモンが分泌されて、体が回復して健康になるんだ」

「あと10から逆に数えて0というと、ボタンを押すよ。
 押すと寝てしまう

「10......9......8......7......6......5......深い眠り

「4......3......とても気持ちのいい深い眠り

「2......1......0」

 ウィンレッドおばあちゃんは言いました。
 そして、緑色に光ったボタンを両手、両足と押していきました。

 カチ......カチッ......。

 ボタンを押す音が、意識の遠くでかすかに聞こえます......(あくび)。

「クウちゃん......聞こえるかい?」

「もしもし? クウちゃん......」

 クウは完全に深く心地よい眠りの中に入っています。

 クウは、ローザお母さんと一緒に、魔法学校でトップの成績をおさめ、表彰されている幸せな夢の中にいます......。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


第3話
羊を数える少年


 ここはとても大きな草原です。
 羊たちを放し飼いにしている自然豊かな土壌です。
 この土地には、先祖代々受け継がれてきた羊飼いの家族が、羊の世話をしながら穏やかに暮らしています。
 時折、草原のやさしい風が吹き、頬をスーッとやさしく揺らします。
 匂いをかぐと草の香りがします。
 とても心が落ち着きます。

 少年は、姉さんに「ここにいる羊の数を、きのうと同じように逃げていないか数えてみて」と言われました。
 少年は、羊たちの数を数えていきます。

 羊たちは白いふわふわ、もふもふした、とてもあたたかそうな、やわらかそうな、心地よさそうな羊毛をまとっています(あくび)。

 姉さんは数え間違いがないように、羊1匹ずつ、もふもふ、ふわふわした毛に触って「1匹、2匹、3匹......」と、数えるように少年に言いました。

 羊は放牧されているので、自由に動き回ります。
 ですから、少年が触ろうとすると逃げるので、ずいぶんと走り回って、疲れて......追いかけながら羊の体に触れて、数を数えなければなりません。

「なんだか......疲れちゃったよ。ヘトヘトだ」

 少年は言いました。
 時にはゆっくりした羊だと、そんなに走らなくてもゆっくりと近づいて、触ってあげれば数を数えられます。
 だけど、動きが速い羊は逃げて走り回るので、少年も一緒に追いかけて、だんだんと体が重く、重くなってきて、どんどんと疲れてきました。

 少年が羊に触れると、その羊のふわふわ感が、手触りが、感触が、体を伝わってきて、ふわふわ気持ちよく、スーッと深く深くリラックスしてきます。

 数を数える回数が多ければ多くなるほど、あなたはどんどんと眠くなっていきます。深く、そして、もっともっと深く。
 羊に触れるたびに、数えるたびに、あなたは眠くなっていきます(あくび)。

「1匹......2匹......3匹......4匹......」
「5匹......6匹......7匹......8匹......9匹」

 少年「ふぁ~ぁ! なんだか、どんどん眠くなってきちゃう......」(あくび)

 少年「ああ......もうボク、疲れてしまったよ。おまけにあくびが止まらないよ。
    眠くて仕方ないや。ところで、もう何匹数えたかな......」(あくび)

 羊は全部で30匹いて、30匹すべて数え終えると、どうしようもなく限界に近い眠気を感じ、深く疲れ、眠りにつきます。

 体が重くて......、とっても疲れている。
 体が重くて沈んでしまいそう......。
 とっても疲れている......。
 体が重くて、もう眠ってしまいそうだ......。

 最後の羊が目の前にいます。

「これで30匹目だ(あくび)」

「30匹目! これでゆっくり深く眠れる!」

 少年は羊にそう言って、ふわりと触れました。
 そのまま、少年は深~く眠ってしまいました。

☆☆☆☆☆

 翌日。
 姉さんに羊のミルク搾りを教えてもらいます。
 羊の乳首を手で握って、その下にあるバケツの中に羊乳(ようにゅう)を入れていきます。

「とてもおとなしいから、このコで試してごらん」

 姉さんは少年にそう言いました
(本を利き手の反対の手、片手で持ってください)

 あなたも実際に、利き手をグッと力いっぱい握って、
 ゆっくり......「はーっ」と息を吐いてください(吐くと同時に力を抜く)。
 もう一度、グッと両手を握って「はぁ~」と脱力して、手の力を抜いてみてください。力が抜けたとき......体が脱力して、とってもリラックスしています。

 力が抜ける......と同時に体の緊張が解けて、とてもリラックスして、どんどん眠くなってきます。その心地よさと力が抜けた「だら~ん」とした感覚に身を任せると、どんどんと眠くなってきます(あくび)。

 姉さんは「とてもうまいね! こんなに羊乳が取れたよ!」と見せてくれました。
 あなたは、その羊のミルクを見ると、その白いミルクの中にまるで自分が溶けていってしまいそうな、そんな感覚を覚えるかもしれません。
 白い甘い、まっ白な世界、夢の世界......。
 ずっと、次ページの白いミルクを見続けてください。

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(C)宮咲ひろ美

 どんどんと、体がリラックスして眠くなり、
 吸い込まれそうになってくるかもしれません。

 白は、すべてを真っ白にします。
 この本の紙の余白も白です。
 白の中へ意識が入り込んでいくと、
 リラックスの度合いが何千倍にも深まります。
 眠りの静寂な穏やかな白の中へ......。

 白い美しい光の中で、
 あなたは深~く眠りに落ちて、とても心地よい夢を見ます。

「すうー、すうー......」
「すうー、すうー......」
「すうー、すうー......」

 寝息が聞こえてきます。
 心地よく眠りに落ちてしまいました。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


■弥永英晃さんプロフィール

やなが・ひであき/カウンセリング学博士・心理カウンセラー・快眠セラピスト。22年間に1万2000人を超えるクライアントを98%も回復させ、全国からクライアントの予約が殺到し、現在は予約5年半待ち。著書に『症状改善率98%のカリスマ心理カウンセラーが明かす パニック障害の不安がスーッと消え去る17の方法』『「脳科学×心理学」で自己肯定感を高める方法』(以上、大和出版)など多数。『スグ効くおやすみ絵本 子猫のクウ ねむり城への大冒険』(東邦出版)が4万部のベストセラーになり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌で「画期的な絵本」と話題になった。累計21万部超。


※画像提供:秀和システム


 
  • 書名 3分読むだけでグッスリ眠れる本
  • 監修・編集・著者名弥永 英晃 著
  • 出版社名秀和システム
  • 出版年月日2022年11月15日
  • 定価1,540円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・184ページ
  • ISBN9784798067254

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