ギャンギャン泣きわめく赤ちゃん。もはや手がつけられずお手上げ状態......。24時間体制のお世話に疲労困憊......。本書『#赤ちゃん相談室』(宝島社)は、そんなお母さんお父さんも思わずほっこりする、ちょっと変わった「子育てあるあるQ&A集」である。
Q 最近ご飯がまずくなりました。(7か月 女性)
A お客さま、それはティッシュです。(20代 女性)
この「7か月 女性」とは赤ちゃん、「20代 女性」とは母親のことである。本書のタイトルになっている「#赤ちゃん相談室」とは、今年(2020年)3月Twitter上に発生した「育児における複雑な想いを表現したハッシュタグ」のこと。育児現場のあるあるを「親が赤ちゃん目線」で「カスタマーセンターふう」に表現し、投稿している。
「#赤ちゃん相談室」では、赤ちゃんは「お客さま」、回答する親は「スタッフ」、各家庭は「店舗」の設定。こうした架空の相談室をつくり上げ、架空のやりとりを考えだすことで、ちょっとした現実逃避と発想転換になり、育児疲れもやわらぐのだろう。
・赤ちゃん=お客さま
生まれてはじめて遭遇するいろいろな出来事を楽しみつつも戸惑い中。現実世界ではまだ気持ちを口に出せないが、この相談室では饒舌。
・親=スタッフ
お客さまからのご相談に対応するスタッフ。その正体は、相談者である赤ちゃんの成長を日々見守るママ、パパ(たまに祖母、祖父)。
もし赤ちゃん(お客さま)が話せたら、どんなクレームが寄せられ、親(スタッフ)はどう回答するか――。こうした発想から投稿された赤ちゃん目線のユニークなクレームと、カスタマーセンターふうに冷静に答える親の回答が、育児奮闘中のお母さんお父さんの共感を呼んでいるという。
本書は、お母さんお父さんが育児に追われながらもスマホ片手に投稿した「愛と疲労と笑いのQ&A」から厳選したものを収録。また、小児科専門医・森戸やすみさんの育児アドバイスなどを盛り込み、気分転換とともに勉強にもなる一冊。
本書は「1章 お食事に関するご相談」「2章 サービスに関するご相談」「3章 入浴&睡眠に関するご相談」「4章 オムツ&衣類に関するご相談」「5章 おもちゃ&BGMほかに関するご相談」からなる。基本的には見開きで1、2個のQ&Aを掲載。左ページ上部にお客さま(赤ちゃん)から寄せられたご意見、ご要望、お叱りの声。下部に現場にかけつけたスタッフ(親)の回答。右ページにそのシチュエーションを再現するイラストが入っている。
ここでは、「#赤ちゃん相談室」に寄せられたクレームと回答例のほんの一部を紹介しよう。実際は、ユーモアに満ちたイラストを見ていっそう笑えるつくりになっている。
Q おっぱいが見当たらないんですが、売り切れですか? 今後の入荷予定はありますか? (1歳 男性)
A 申し訳ございません。おっぱいは昨日で製造中止となりました。今後は代替品としてフォロミ、麦茶などをご用意しております。長きにわたりご利用いただき、誠にありがとうございました。
Q 急にオムツを脱がされました。毎回寒いのでやめて欲しいです。反撃としてオシッコをしてるのですが、今度は服を脱がされます。許せません。(1か月 男性)
A 誠に恐縮ではございますが、可能であればオムツを脱がす前にオシッコをして頂けますと幸いです。(20代 男性)
このシチュエーションで赤ちゃんがギャン泣きするのは、こういう理由だったのか! こうして冷静かつユーモアまじりに回答したらいいのか! と、気づくことが多い。日々同じことの繰り返しに嫌気がさしている人は、各家庭の奮闘ぶりを見て、どこも同じなんだなと、ずいぶん気が楽になるだろう。
おわりに、監修の森戸さんが書いていることに共感した。森戸さんは、外国で子育てする、日本人のお母さんが描くマンガやエッセイが好きだという。理由は「日本の子育てで『こうしなくてはいけない』と思われていることが、ときおりまったく違うことがわかるから」としている。
たとえば、両親が2人だけで外出し、子どもを預ける場合。日本では非難される傾向がある一方、海外ではごく日常のことだという。どちらが優れているという話ではなく、「親子ともども笑顔でいられるためには、選択肢をいろいろ知っておいたほうがいいという話です」。
「子育てのつらさには、物理的に1人の時間が持てないことや、あちこちの身体的な痛みなど、どうにもならないことがたくさんありますが、それらをユーモアをもって客観視すると息抜きになるのではないでしょうか」
赤ちゃんが誕生して間もないころは特に、育児以外のことにまったく意識が向かないほど、心身ともに限界寸前になることもある。少しでも余裕が持てるようになったとき、本書を読むと、自分と同じ境遇にいるお母さんお父さんの存在を感じ、励みになるだろう。
ちなみにTwitterから書籍化された育児本はいくつかあるようだが、「赤ちゃん=お客さま」「親=スタッフ」という本書の設定は斬新だ。Twitterの人気を受けて本書はすでに各種メディアで紹介されているが、今後さらに盛り上がりを見せるかもしれない。
監修の森戸やすみさんは、1971年生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、2020年にどうかん山こどもクリニックを開業。医療者と非医療者のかけ橋となる記事を書き、Twitterでも積極的に育児情報を発信。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)など、著書多数。
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