ここ数年、アラフォー以上の女性を主人公にした漫画が増えている。今回は、そんな大人の女性を描いた漫画を5作選んだ。少女漫画とは異なる静かな胸の高鳴りを感じる佳作ぞろいだ。
『ゆりあ先生の赤い糸』(入江喜和 作・講談社)
50歳の長田ゆりあは、自宅でフランス刺繍の先生をしている。小さい頃に父親に言われた「カッコよく生きようぜ」という言葉に良くも悪くも囚われて人生を送ってきた。30歳で売れない作家と結婚して穏やかな毎日を送っていたが、ある日突然、夫がくも膜下出血によりビジネスホテルで倒れてしまう。病院にかけつけると、夫と一緒にビジネスホテルにいたという青年が。そこで夫が若い男と不倫していたことに気づく。ゆりあの穏やかだった生活は一変していく。
第45回講談社漫画賞受賞作。大好きな父親の言葉が愛でもあり呪いでもある様子を丁寧に描いている。次々と問題が発覚していく展開に目が離せない。
『沢村さん家のこんな毎日 平均年令60歳の家族と愛犬篇』(益田ミリ 作・文藝春秋)
70歳の父親・四朗と69歳の母親・典江、40歳の娘・ヒトミの3人暮らしをしている沢村さん一家。高齢になった親と40代独身の娘の日常をほのぼのと描く。シリーズ化されていて、他にも『沢村さん家のこんな毎日 久しぶりの旅行と日々ごはん篇』などがある。
ゆるいほんわかとした絵柄でありながら、鋭いまなざしをもって日常を描く益田ミリ。笑いもあればケンカもある、そんな日常が愛しくなる一冊。
『海が走るエンドロール』(たらちねジョン 作・秋田書店)
65歳の茅野うみ子は、夫を亡くしたばかりで時間を持て余していた。ある日、数十年ぶりに映画館で映画を観ることに。そこで美大生の海(カイ)と出会う。ふたりには、映画館では客席の反応を見ることが好きという共通点があり、もっと話したいと思ったうみ子は、壊れたビデオデッキを直してもらうために海を自宅に招く。帰り際に海から「映画作りたい(こっち)側なんじゃないの?」と指摘され、目を背けていた自分のやりたいことに気づく。そうして、うみ子は美大で映像を学ぶことを決める。
海は、「そんな人間はさ、今からだって死ぬ気で映画作ったほうがいいよ」とうみ子に言う。何歳からだってやりたいことをあきらめず、全力で行動を起こそうと思わせてくれる作品である。
『たそがれたかこ』(入江喜和 作・講談社)
45歳バツイチのたかこはアパートの大家である母親と二人暮らしをしている。最近「夜にやられる」ことが多く、夜中に隅田川のほとりで一人お酒を飲んでいると、居酒屋を営んでいるという美馬修平(みま・しゅうへい)と出会う。お店に誘われるも勇気がなく家に帰るたかこ。ある夜、ラジオでナスティインコというバンドの谷在家光一(やざいけ・こういち)に出会う。その辿々しさと一生懸命さに勇気をもらい、たかこは居酒屋に行ってみることに。谷在家光一という推しの存在との出会いがたかこに勇気を与え、それまでの生活に変化をもたらす。
この漫画は10巻で完結している。終わり方は物議を醸したものの、たかこの変化していく様子に胸を打たれる。
『その女、ジルバ』(有間しのぶ 作)
何も持たないまま40歳になってしまった笛吹新(うすい・あらた)。職場では閑職に追いやられ自分の老後や人生を見つめ直していた。そんなある日、電柱に貼り出されていたホステス募集のチラシを見て勇気を出してお店に行くと、そこは平均年齢70歳の熟女BARだった。そこで働くことになった新は、忘れかけていた何かを取り戻していく。
第23回手塚治虫文化賞受賞作。池脇千鶴さん主演でドラマ化され、江口のり子さん、中尾ミエさん、草笛光子さんら錚々たる顔ぶれの女優陣が共演したことでも話題になった本作。底抜けに明るいホステスの先輩たちを見ていると、40歳なんてまだまだひよっこだと思えてくる。辛いことがあっても彼女たちのことを思うと元気が出てくる。
アラフォー、アラフィフ、アラ還、アラ傘......。パワフルな主人公たちに勇気をもらい、「女は40代からが面白い!」と思わせてくれる漫画ばかり。落ち込んだとき、人生に迷ったときに、手にとってみてはいかがだろうか。
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