本書『No.1ホストが明かす 心に残る話し方』(WAVE出版)は、元歌舞伎町No.1ホストの信長さんが、コミュ障から№1ホストになる過程で身につけた会話術を伝授するもの。
ホストクラブに興味はあるけど、実際に行くのは相当ハードルが高い。でも、ホストがどんなことを意識して接客しているのか気になる。女性(男性)を喜ばせる会話のコツを知りたい......。本書は、ホストの頭の中を覗き見したい人、ホストの実践に裏打ちされた会話術を習得したい人に恰好の一冊。
信長さんは1979年生まれ、東京都出身。早稲田大学教育学部卒業。作家、出版社代表。出版希望者へ向けた著者養成スクールを主宰。15年のホスト経験を持つ信長さんだが、もともとは家庭教師のアルバイトをしながらホストの道に入ったという。当初は体重が100kg近くあり、女性とまともに話せず指名ゼロが続いたが、試行錯誤の末No.1になる。自身が以前に代表を務めた店(従業員数は約50名)で、現在もホストとして働いている。
『歌舞伎町トップホストが教える シャンパンタワー交渉術』(講談社)、『歌舞伎町No.1ホストが教える 選ばれる技術』(朝日新聞出版)など、著書多数。翻訳版を除き、本書で11冊目となる。
それにしても、なぜ家庭教師のアルバイトをしながらホストになろうと思ったのか。そのうえ、体重が100kg近くあり、女性とうまくコミュニケーションがとれなかったというから、ますます疑問だ。
本書に掲載されている信長さんの顔写真を見ると、切れ長の目が印象的な、端正な顔立ち。15年をかけ、容姿も会話術も磨き上げてきた信長さんの努力が垣間見える。
冒頭、信長さんは「言わなくて後悔したことより、言って後悔したことのほうが多くないですか?」と問いかけ、次のように謝っている。
「私はずっと、ある大きな勘違いをしていたのです。...『やるべきこと』をお伝えし、実行していただければ、コミュニケーション力は自ずと向上するものだと。しかし、実際は違いました。多くの人は、あまりに『やるべきではないこと』をやりすぎていたのです」
本書の特徴は、元歌舞伎町No.1ホストが書いていることと、「やるべきこと=好かれる会話術」より「やるべきではないこと=嫌われない会話術」に重点が置かれていることと言える。
「第1章 信頼関係は『はじめの10分』で決まる」「第2章 相手から好かれる会話の盛り上げ方」「第3章 女性は共感を求め、男性は結論を欲する」「第4章 No.1からオンリー1になる最高の話し方」で構成され、40項目すべてに「やらないことリスト」がついている。
「三流は自分が話したいことを話し、二流は自分が聞きたいことを聞き、一流は相手が話したいことを引き出します」
・やらないことリスト......話題を乗っとらない
「相手を主役にすべく、話題の主語をスライドさせていく。(スライド法)」
・やらないことリスト......自分語りをしない
全体をとおして、相手を尊重し、相手を話題の主役に据えることの大切さを説いている。「大前提として、人は自分の話にしか興味がないのです。自分の話を聞いてくれ、ほどよく相槌、褒め、共感をくれる人と会話がしたいだけなのです」。これにはまったく同感である。話題の乗っとり、自分語り......ついやってしまうこうしたムダを切り捨てなければ、と反省する。
具体的な会話術と同じく、もしくはそれ以上に興味深かったのが、ホストの世界に関する記述だ。「ホストはかっこいい人が売れる」「ホストは女をだますもの」という世間の目は、誤解だという。「女性を食いものにするホストがいない、と言えば嘘になります」としつつ、「女性に誠実に向き合うホスト」こそ一流としている。
また、ホストの仕事のいいところでもあり厳しいところでもあるのが、つまらない話をしていると客に「チェンジ」されてしまうこと。ただ、その場で正直に怒る客は少数派で、多くは次回指名してこないのだという。信長さんは、会話が盛り上がっているものと思い込んでいたが、その後指名されなかったことから、自身の会話の失敗に気づき、トライ&エラーを繰り返していったという。
これまでに3万人以上の接客をした信長さんだが、もともとコミュ障だったというのは意外だ。そんな信長さんの考える、会話術を磨く最も効果的な方法は「実戦で経験を積む」こと。自分から動く勇気のない人(「待ち型」)が多いなか、自分から動く人(「攻め型」)になることで「世界が10倍広がります」と背中を押す。
関連でBOOKウォッチでは『自分のことは話すな』(幻冬舎新書)も紹介している。
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