「女性は話が長い」という発言が「性差別だ」と非難され、森喜朗氏が東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長の職を辞することになったのは記憶に新しい。「政治的、社会的に公正、中立とされる言葉や表現を用いること」をポリティカル・コレクトネス(PC)と言い、森氏の発言はこのPCに反するとして、女性だけでなく世の多くの人々の反感を買った。
一方、動物行動学者の竹内久美子さんが提唱するBC(バイオロジカル・コレクトネス)の考え方からすると、「女性の話が長いのは当たり前」。なぜなら女性ホルモンが言語脳である左脳を発達させるからだという。「性別や人種、民族、宗教などに基づく差別や偏見を防ぐこと」を目的とするPCに対し、BCは、「ただ生物学的な現実を直視し、真実を見つけ出すこと」を目的としている。
竹内さんの新刊、『ウエストがくびれた女は、男心をお見通し』(ワック)は、「人間も動物の一種であることに変わりはなく、その行動には本来タブーも、ましてPCもない」というBCの観点から、一切の忖度なく、世の中の事象を読み解いていく。
本書は以下の7章で構成されている。
第1章 コロナ恐怖で交尾排卵が活性化?――ポスト・コロナを生きる知恵
第2章 誘い誘われオトコとオンナ――エセフェミニズムをぶっ飛ばせ!
第3章 カップルの不都合な真実――なぜ浮気がとまらないのか
第4章 わが国に迫るもう一つの危機――皇室問題の国民的議論を
第5章 誤解だらけの遺伝と人間社会――遺伝子こそすべてなのに
第6章 メス(女)は閉経しても価値がある――合理的な生物の世界
第7章 生き物社会オドロキの新常識――「そんなバカな」と言わないで
各章に気になる見出しが並び、どこから読もうかと迷う。どのテーマもエビデンスをもとに、竹内さんが仮説を検証していくスタイルをとっている。
ここでは、第3章から「男の浮気と女の浮気、アンジャッシュ渡部の場合は」を紹介しよう。
数年前、渡部建さんがパーソナリティを務めるラジオ番組に出演したことのある竹内さん。その時の印象はずばり、「これは、モテる」。渡部さんを「イケメンすぎない、ちょうどよい加減のイケメンなのである」と評している。
モテ男であり、仕事も極めて順調な渡部さんと、(中略)かわいいことだけは誰にも負けない佐々木希さんとの結婚は、とてもお似合いだと私には映ったのだ。
しかしその後、渡部さんは浮気をして相手の女性に告発される。ツイッターで飛び交った「あんなに可愛い奥さんがいても男の欲望はとまらないんだな」というつぶやきに対し、竹内さんは「モテ男の浮気に、奥さんがどういう女性であるかは関係ない。ただし奥さんが浮気するかどうかは、ダンナ次第である」と言う。
なぜか。
竹内さんは、ツバメの生態を例に渡部さんの浮気問題を分析していく。ある鳥類学者の研究によると、ツバメのオスがモテるかどうかは尾羽の長さによるという。尾羽を短くしたオスと、中くらいのオスと、長くしたオスの3つのグループでは、当然、尾羽の長いグループが最もモテるのだが、尾羽の長さに関係なく、オスは皆、浮気に意欲を燃やす。一方、尾羽の長いオスをダンナにしているメスは浮気に応じず、短いオスをダンナにしているメスは、尾羽が長いオスがやってくると必ず浮気するという。尾羽が長いオスをダンナにしているメスは、わざわざリスクを冒してまでほかの優れた遺伝子を取り入れる必要はないからだ。
これを人間に当てはめれば、「あんなに可愛い奥さんがいる」渡部さんの行動にも説明がつく。
渡部建さんが浮気に精を出すのは、男として当然。モテ男であれば、ますます意欲を燃やすはず。それは奥さんがどういう女性であるかは関係ないのだ。そしてモテ男をダンナとする奥さんは、わざわざ浮気というリスクは冒さないだろう。
女性にとっては憤まんやるかたないが、生物学的に見ればそれも自然の摂理なのかもしれない。しかし竹内さんは、最後にチクリと刺すのも忘れない。
渡部さんは、ケチらず、もっと粋に遊ぶべきだった。それなら相手の女性に告発などされなかっただろうに。
このほか、「イクメンは没落する」「女系天皇誕生で日本が『小室王朝』になる」「キャッシュレスでセックスレスになるかも」「社会の役に立っているおばあさんを"ばばあ"と呼ぶな!」「美男美女は健康で長生きするという酷(むご)い現実」...などなど、PC的には一発アウトになりそうなテーマに、竹内さんはBC視点で果敢に切り込んでいく。
とはいえPCとBCは、どちらか一つを選ぶようなものではなく、両方あって初めて意義があると考える。
(中略)
行き過ぎたPCによって、世の中がどんどん変な方向へと導かれようとしている。だからこそ、BCに目を向け、バランスをとっていくべきだろう。 (はじめに――PCの前にBCを! より)
「男性だから」「女性だから」と固定観念を押し付けるのはもう古い。さりとて些細なことに目くじらを立てていては、溝は埋まらない。これからは、物事をPCとBC、両面から考えられるバランス感覚を備えた新しい世代のリーダーが増えていくことで、誰もが生きやすい社会に近づいていくことを期待したい。
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