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グーグルマップが苦手でも大丈夫! 方向音痴をなおすコツ、教えます!

Mori

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方向音痴って、なおるんですか?

 初めての場所へ行く時、地図を見れば難なくたどり着ける、あるいはグーグルマップのナビ機能さえあれば迷うことはない、という人もいれば、グーグルマップを見ても、最初の一歩からどちらに進むべきかわからない、という人もいる。

 ライター・エッセイストの吉玉(よしだま)サキさんは後者だ。それも、5年住んでいる自宅周辺でさえ迷子になるという筋金入りの方向音痴。そんな吉玉さんの著書『方向音痴ってなおるんですか?』(交通新聞社)は、方向音痴を自覚している人はもちろん、絶対に迷わない自信がある人にも「そうだったのか!」が満載のエッセイだ。

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 あの「散歩の達人(さんたつ)」編集部の企画だけに、「地図の読み方」にとどまらない。認知科学や地図、地形、地名の達人たちに、「迷わないコツ」や「ブラタモリ」的な街歩きの楽しみ方も教わりながら、吉玉さんが方向音痴を克服していく。

東西南北ではなく前後左右で言ってほしい

 まずは現状把握から。次の「方向音痴あるある」に「そうそう!」と共感した人は、残念ながら方向音痴確定だ。

その1.地図をくるくる回してしまう

 吉玉さんはもちろんイエス。進行方向を上にしていないと、どちらに曲がるかわからなくなるという。常に北を上にしていると、目的地が南の場合「後ずさりしていかなきゃ道がわからなくなっちゃう」。

その2.最初の一歩を勘で歩き出す

 駅の出口を出たらいちかばちか勘で歩いてみて、アプリ上の現在地マークが思い通りに進んだら、「こっちでいいんだな」と安心する。

 そのほかの「あるある」は以下の通り。

その3.「北が上じゃない地図」を見てもそのことに気付かない
その4.カーナビやアプリの機能に酔う
その5.ショッピングモールで同じ店にばかりたどり着く
その6.太陽を当てにする
その7.個室居酒屋でトイレから帰ってこられない
その8.東西南北でなく前後左右で言ってほしい
その9.マップアプリに向かって怒る
その10.駐車場に停めた自分の車を探せない
その11.ゲーム内でも道に迷う

 ほとんどの項目に当てはまった吉玉さん。なぜ迷ってしまうのかを探るべく、実際にグーグルマップを使い、池袋で散歩にチャレンジした。目的地は駅から徒歩10分のカフェ。吉玉さんは駅構内で迷い出口までに12分、さらにそこから文字通り紆余曲折のすえ40分かけて、ようやく到着した。

 検証の結果、吉玉さんがグーグルマップで迷子になる理由は、次の通り。

・直角に交差していない十字路で迷う
・地図と現実の風景を照合できない
・グーグルマップで現在地マークに誤差があるとパニックになる
・注意力が散漫&視野が狭い

 グーグルマップも全能ではないので頼りすぎるのは危険。ある程度の方向感覚や注意力が必要だ。

コツをつかめば方向音痴は改善できる

 この後、吉玉さんは4人の専門家を訪ねる。

 最初に訪ねたのは、認知科学者の新垣(しんがき)紀子さん。脳と方向音痴の関係を研究している新垣さんは、吉玉さんが道に迷う理由を解明しながら具体的にアドバイスをしていく。

 たとえば、「最初の一歩をどっちに踏み出すか問題」は、地図上の目印を1つではなく2つ見つけることで現在地を把握し、どちらに歩き出せばよいか判断できる。また、歩き出す前に地図やストリートビューで目的地までの道を予習しておくのも効果的だ。地図をくるくる回すのは問題ないが、地面と平行に持ち、「上」ではなく「前」にすると混乱しにくい。マップアプリはなるべく拡大縮小せずにすむよう、来た道と目的地が一画面に入りきるようなタブレットを使う、など。

 さらに、空想地図作家の今和泉隆行さんには、地図の見方と街の捉え方を、東京スリバチ学会会長の皆川典久さんには、坂や階段、川、池などの「凸凹地形」の味わい方を、地図研究科の今尾恵介さんには、地名の由来から街の成り立ちを教わった吉玉さん。専門家を訪ねた後は毎回、散歩にチャレンジする。神保町、札幌、四谷、谷中とチャレンジを重ねるごとに、吉玉さんが成長していく様子がわかる。

 方向感覚というものは、音感や運動神経のように、生まれつき「あるかないか」だと思っていたという吉玉さん。最後に、今回の企画を通して得た「気づき」をこう綴っている。

 方向音痴はパッとなおるものではないが、「頻繁に現在地を確認する」「常に方角を意識する」「脳内に地図を思い描く」など、小さな工夫の積み重ねによって確実によくなる。方向音痴じゃない人たちは、意識的かはさておき、そういった小さな工夫をしていたのだ。
(中略)
 方向音痴はコツをつかめば(やや)改善されるし、そのままでも街歩きって楽しい!

 吉玉さんの方向音痴っぷりがわかる「寄り道コラム」も面白い。冒頭の「方向音痴あるある」に共感した人も、そうでない人も、本書を読めば、新しい発見や気づきがきっとある。道に迷うことさえ楽しくなる一冊。


※画像提供:交通新聞社

 
  • 書名 方向音痴って、なおるんですか?
  • 監修・編集・著者名吉玉サキ 著
  • 出版社名交通新聞社
  • 出版年月日2021年5月21日
  • 定価1,540円(税込)
  • ISBN9784330024219

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