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高学歴ジャニーズの元祖は「初代ジャニーズ」だった!?

「未熟さ」の系譜

 Snow Manの阿部亮平さんら、有名大学出身または在学中のいわゆる「高学歴ジャニーズ」が、各クイズ番組で活躍している。

 「高学歴ジャニーズ」の元祖といえば、誰でも嵐の櫻井翔さんを思い浮かべるだろう。父親が元官僚、幼稚舎からの慶応ボーイという来歴は、00年代のジャニーズアイドルの中では際立って異色だった。

 しかし実は、「高学歴のアイドル」が愛される現象にはれっきとしたルーツがあるのだ。それはなんと、1962年結成の"初代ジャニーズ"にまでさかのぼる。

はじまりは4人組の「ジャニーズ」

 "初代ジャニーズ"こと「ジャニーズ」という4人組グループを、あなたはご存じだろうか。いまや日本最大級の芸能事務所はこの4人組から始まった。

 当時アメリカ大使館の通訳をしていたジャニー喜多川氏は、趣味として、居住していた代々木のワシントンハイツで近所の子どもたちに野球を教えていた。このときの少年野球チームの名前が「ジャニーズ」だった。ある日、雨で野球の練習ができず、ジャニー氏はチームの少年たちを連れて映画『ウエスト・サイド物語』を観に行った。少年たちはこの映画に夢中になった。そして、なかでも本気でミュージカルを志すようになった4人の少年を、ジャニー氏はレッスンに通わせ、「ジャニーズ」というグループ名でレコードデビューさせたのだった。

 「ジャニーズ」は、大きく二つの新しさを芸能界にもたらした。一つは、「歌って踊る」というパフォーマンススタイル。当時アイドル的な立ち位置の歌手やボーカルグループはいたが、歌いながら踊る人は他にいなかった。人気からいえば西郷輝彦・橋幸夫・舟木一夫ら当時のスターには遠く及ばなかったが、「ジャニーズ」はそのパフォーマンスの新しさで大衆の目を惹いた。

「すなおで明るく、芸能界の人のように思えません」

 もう一つの「ジャニーズ」の新しさは、優等生的なイメージだ。当時のスターといえば、スキャンダラスだったり不良っぽかったり、男性あるいは女性として成熟していたりと「芸能人」独特のイメージをまとっているものだった。ところが、「ジャニーズ」はその既定路線に乗ってはいなかった。当時の週刊誌ではこんなふうに紹介されている。

歌がうまい芝居がうまいということもないが
何よりの魅力は育ちのヨサを感じさせる健康的なムード
たたきあげの苦労人にあるきびしさとは逆な
やさしさと親しさがある
 またメンバー4人にとって代々木中学校の先輩にあたる吉永小百合さんは、「ジャニーズの人たちは、いつ会っても、すなおで明るく、芸能界の人のように思えません」と語っていた。

 このアマチュア的・お坊ちゃん的イメージは、ジャニー氏と姉のメリー喜多川氏の方針だった。「ジャニーズ」の活動は学業優先で、仕事をするのは授業後か休日だけ。夏休み以外は長期の舞台や地方公演に出演しなかった。この方針には「プロ意識に欠ける」という批判もあったが、テレビが普及し全国の家に「茶の間」が生まれたこの時代、「ジャニーズ」の健全なイメージは視聴者にとって魅力的に映った。

 このような初代「ジャニーズ」の芸能史上の立ち位置は、社会学・音楽学研究者の周東美材さんの著書『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』(新潮社)に詳しく書かれている。彼らはそのアマチュア的イメージから、受験勉強や進路の動向も関心の的となり、ファンから受験参考書が送られたこともあったそうだ。そしてついに、メンバー全員が日本大学に進学。「全員が大学生の歌って踊れる男性アイドル」という全く今までにないグループに成長した。

『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』(新潮社)
『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』(新潮社)

家族で安心して見られるアイドル

 なぜ健全で優等生的なイメージの「ジャニーズ」が生まれ、やがて国民的なアイドル事務所になっていったのだろうか。本書『「未熟さ」の系譜 ~』ではジャニーズに限らずあらゆる戦後日本の芸能を解説しているが、そのなかで一貫して、「家庭」「茶の間」の誕生が日本の芸能に大きな影響を与えたと論じている。

 つまり、核家族が一般的になりテレビが普及し、"一家団らん"の風景が当たり前となった時代で、家族で安心して見られるアイドルが求められるようになったのだ。その"一家団らん"の中心には子どもがいる。健やかに学業に励む理想の子どもの姿を、「ジャニーズ」の4人は体現していたのだ。

 「高学歴ジャニーズ」は、こういった初代「ジャニーズ」の優等生的イメージを見事に反復している。クイズ番組などでお茶の間に親しまれていることまで含めて、全く同じ説明ができる。

嵐は初代の生まれ変わりだった?

 コアなジャニーズファンならご存じかもしれないが、嵐のメンバーがグループを結成する前のジャニーズJr.時代、櫻井さんは学業が忙しかったこともあり、他の4人のメンバーに比べてあまり目立っていなかった。しかし嵐のメンバー本人たちの証言で、嵐はジャニー氏が櫻井さんを中心として構想したグループだということがわかっている(2020年11月28日放送「嵐にしやがれ」にて)。これは記者の憶測にすぎないが、もしかしたら、ジャニー氏は櫻井さんを中心に据えた嵐で、初代「ジャニーズ」を再現しようとしたのではないだろうか。

 初代「ジャニーズ」の4人が憧れた『ウエスト・サイド物語』をミュージカルで演じたのは、実はジャニーズ史上たった二組。ジャニー氏が生前「最強のグループ」と言っていた少年隊と、嵐の櫻井さん・松本潤さん・大野智さんだ。ここにも何か運命的なもの、あるいはジャニー氏の思いを感じる。

 初代「ジャニーズ」のメンバー構成を見ても、嵐を彷彿とさせるものがある。最年長は、大野さんのようにおとなしいけれど圧倒的なダンススキルをもつ飯野おさみさん。櫻井さんと対応する上から二番目の真家ひろみさんはグループのリーダーで、しっかり者だけれどお茶目なところもあった。三番目の中谷良さんは相葉雅紀さんのように天真爛漫な性格で、「良ちゃん」と呼ばれていた。末っ子のあおい輝彦さんは、おっとりしているけれど芯があり、松本さんのような華があった。初代「ジャニーズ」の4人に二宮和也さんという新しい要素が加わったのが、嵐だったのではないだろうか。

 全く新しいアイドル像を打ち出し奮闘した初代「ジャニーズ」が、生まれ変わって誰もが認める国民的アイドルになった。そう考えると、ジャニーズ60年の歴史のロマンを感じる。


※画像提供:新潮社


   
  • 書名 「未熟さ」の系譜
  • サブタイトル宝塚からジャニーズまで
  • 監修・編集・著者名周東美材 著
  • 出版社名新潮社
  • 出版年月日2022年5月25日
  • 定価1,705円(税込)
  • 判型・ページ数四六判変型・280ページ
  • ISBN9784106038792

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