読むべき本、見逃していない?

2020年回顧2 「コロナ後」を語るのは早すぎる!

観光ビジネス大崩壊 インバウンド神話の終わり

 コロナ禍は日本社会全体に大きな影響を与えてきた。医療、経済・ビジネス、教育・学習、スポーツ、暮らし、働き方など多方面。感染拡大が続き、依然として沈静化のめどが立っていない。「コロナ後」を語る人もいるが、まだ早すぎるようだ。BOOKウォッチではさまざまな角度から多数の関係書籍を紹介した。

「旧中間階級」を直撃

 年末になっても、アクセスランキングの上位をキープしているのが『観光ビジネス大崩壊 インバウンド神話の終わり』(宝島社)だ。6月段階の情報をもとに7月に刊行された本だが、「日本人が『コロナ禍』を本当に実感するのは秋以降だ!」と、コロナの影響が長引いて、秋以降に本格化することを見通していた。「Go To トラベル」キャンペーンの不安も警告されていた。

 「日本では10月から11月にかけて中間決算で『赤字決算』を発表する企業が続出する。かなり広い業種で冬のボーナス停止や減額、新卒採用中止、希望退職募集などのリストラが始まる・・・」。この予想はおおむね当たっている。

 コロナによるダメージは社会の階層の違いによって大きな差があった。『中流崩壊』(朝日新書)は、コロナ禍で大きな打撃を受けたのは、「非正規」と呼ばれる「アンダークラス」とともに、「旧中間階級」だったと分析していた。「旧中間層」とは、経営者と現場で働く労働者を兼ねているような人たちだ。飲食店は大幅に売り上げが減り、テイクアウト販売を始めたものの売り上げ不足が続く。商店街からは一時は人通りが消え、閉店を余儀なくされた店も少なくない。小さな工場ほど苦境に陥る。多くの非正規労働者は、こうした旧中間階級とつながる現場で働いている。

 『コロナが加速する格差消費――分断される階層の真実』(朝日新書)は、コロナのダメージが広がる中で「不滅の中流」になっているのが公務員だと指摘していた。

「新型コロナの震源地と呼ばれて」

 コロナでは「濃厚接触」を避けることが基本だとされたが、『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)は、"濃厚接触"でしか生きることができない女性たちの証言を集めたものだ。緊急事態宣言下の4月末、新宿・歌舞伎町ネオン街のルポだ。

 著者のジャーナリスト、中村淳彦さんによれば、かつて「風俗」は、一部の女性たちにとって「セーフティーネット」という側面もあった。しかし、女性の供給が増えすぎて、新型コロナ以前の段階で、すでに下層風俗嬢たちの収入は生活保護水準を下回り、「食べるのもやっと」といった危険な状態だったという。そこに追い打ちをかけたのが、新型コロナだということを、女性たちの声を拾いながら報告していた。

 『夢幻の街――歌舞伎町ホストクラブの50年』(株式会社KADOKAWA)によれば、コロナ禍によって職を失った若者たちが、大金を手に入れることを夢見て、新宿・歌舞伎町のホストクラブに集まってきているという。「新型コロナの震源地と呼ばれて」で、そんな最新事情を伝える。

 『「許せない」がやめられない―― SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症』(徳間書店)の著者の坂爪真吾さん東大文学部出身。新しい「性の公共」を作る、という理念の下、風俗店で働く女性の無料生活・法律相談事業「風テラス」など社会的な活動を続けている。

 コロナ禍で2020年3月に厚労省が発表した支援金は当初、風俗営業等関係者が対象外だった。坂爪さんは「風俗営業等関係者を不支給要件の対象から外してほしい」というオンライン署名キャンペーンを行い、一日足らずで6300人以上の署名を集めた。

なぜ感染者の一部がホテル住まいなのか

 医師・医療関係者の側からの著書も目立った。『新型コロナウイルスの真実』 (ベスト新書)は、岩田健太郎・神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授の生々しい報告だ。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗り込み、船内での検疫のずさんさや監視・隔離体制の不備を発信して、国際的に注目された。当時の対応の問題点が詳述されている。

 『日本の医療の不都合な真実――コロナ禍で見えた「世界最高レベルの医療」の裏側』 (幻冬舎新書)は現役医師、森田洋之さんによる、少し違う角度からの一冊だ。

 コロナ禍では、医療崩壊が心配された。入院用の病床が不足気味になり、感染者の一部がホテル住まいを余儀なくされるようなこともあった。日本の医療は大丈夫なのか、と心配する声があがったが、東京都は、確保していた「病院・病床」2000では足らず、「ホテルなどの宿泊施設」2800を利用して急場をしのいだ。都内には12万床もあるのにもかかわらず、ごく一部しか感染症病床として使うことができなかったという。これはどういうことなのか。

 その理由を、森田さんは端的に語っている。日本の病院は「常に満床を目指して運営されており、想定外の事態のために空床を確保しておく余裕が取りにくい」。それゆえ「世界一の潤沢な医療資源を有事の際にスピーディーに運用・活用することができないという医療システム上の問題」があるのだという。医療をビジネスと見た場合、「常に満床」であることがベストなわけだ。森田さんは、「普段でさえ救急車のたらい回しが問題になるのに、日本の医療機関、民間病院が自主的にコロナパンデミックのために病床を空けることができるでしょうか」と問いかける。

 『新型コロナ制圧への道』 (朝日新書)は、朝日新聞で長く医療問題を担当した大岩ゆりさんの緊急報告。海外文献が豊富に渉猟されている。日本をはじめ、中国、韓国、台湾など東アジアの国々では感染者数や死亡者数が少ないことが、コロナの大きな謎になっているが、いまだその謎は解明されていない、としている。

 このことは、前出の『日本の医療の不都合な真実』でも大きな疑問として指摘されていた。「同じ病気が国によって100倍も死亡率が異なる」ということは、各国の医療体制や対応の違いでは説明がつかないという。

「アベノマスク」はローテク対応の象徴

 コロナ禍では様々な立場の人の様々な発言が、テレビやインターネットで飛び交った。専門家と呼ばれる人が多数登場し、いったい誰が本当の専門家なのか、その発言が本当に信用できるのかさえ分からない状態が続いた。

 そこで、「ファクトチェック」に取り組んだのが、「リーダーズノート」出版代表、木村浩一郎さんだ。『PCR検査を巡る攻防――見えざるウイルスの、見えざる戦い』(リーダーズノート)では「PCR」に絞って克明に報告している。

 PCR論争の当事者を「検査拡大派」と、「検査拡大反対派」に大別し、それぞれの発言や属性を追いながら、この論争がわかりにくいのは「政府側がいわば抵抗勢力になっていたこと」だと分析。「専門家」と呼ばれる人の意見を無批判に垂れ流す大手メディアに対しても疑問を投げかけていた。

 医療関係者は、政府と接点がある人が多く、政府の対応ぶりをあからさまには批判しづらい。そうした中で、注目されたのが児玉龍彦・東京大学先端科学技術研究センター名誉教授だ。参院予算委員会の閉会中審査に野党推薦の参考人として出席したこともある。

 政府のコロナ対策を象徴するのが「アベノマスク」だったが、児玉さんはテレビなどで政府の対策は、100年前のスペイン風邪対応と同じレベルにとどまっていると批判。21世紀なのだから、遺伝子工学、計測科学、情報科学などを総合した精密医療で対応する必要があると強調していた。

 中国、韓国、台湾などではITを積極活用した「強い規制」でコロナに対応したことが知られている。日本は立ち遅れが目立った。児玉さんはすでに10年前の共著『新興衰退国ニッポン』 (現代プレミアブック)で、「科学技術立国の黄昏」を指摘、「日本の凋落」を予言していた。

 

 


  • 書名 観光ビジネス大崩壊 インバウンド神話の終わり
  • 監修・編集・著者名磯山 友幸+新型コロナ問題取材班 著
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2020年7月17日
  • 定価本体900円+税
  • 判型・ページ数A5判・144ページ
  • ISBN9784299007322

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