「お話に感心いたしました」「相変わらずお元気そうですね」......こんな言葉に違和感を持たなかったら、あなたも知らず知らずのうちに相手をカチンとさせているかもしれない。2023年8月7日に発売された『無礼語辞典』(大修館書店)は、つい言ってしまいがちな"無礼な言い方"約550語を集めた一冊。「そういうつもりじゃなかったのに」を未然に防ぐのに役立つ。
本書に載っている無礼語の一つが「野心」。たとえばこんな例文だ。
「誰もが難しいと思うようなことに挑戦するなんて、野心にあふれていますね」
褒め言葉に見えるが、「野心」は、もとは「服従せず、害をなそうとする心、謀反をたくらむ心」の意味だった。現在では言葉の意味が変わってきて肯定的に使われる場合も多いが、「身の程知らず」というニュアンスは残っているので、場面や相手によっては失礼に聞こえるかもしれない。「大志」や「大望」などの言いかえ表現が紹介されている。
また、「役不足」はそれ自体では無礼な言葉ではないが、使い方に注意が必要だ。本書ではこんな無礼例文が載っている。
「このたび委員長を仰せつかりました。役不足ですが精いっぱい努めたく存じます」
「役不足」は「与えられた役目が力量に比べ軽すぎる」という意味なので、この例文では「こんな仕事は自分にはふさわしくない」と言っていることになってしまう。言いかえ表現は、「私には大役ですが」「力不足ですが」「不束ながら」が紹介されている。
他にも「与える」「前のめり」「やっと」など、日常的に使う言葉の注意したいポイントが解説されている。普段のコミュニケーションに、敬意と優しさをプラスする手助けをしてくれる本。
■関根健一さんプロフィール
せきね・けんいち/1957年生まれ。同志社大学法学部、立教大学文学部卒業。日本新聞協会用語専門委員。元読売新聞東京本社編集委員。元文化審議会国語分科会委員。大東文化大学非常勤講師。著書に『文章がフツーにうまくなる とっておきのことば術』『品格語辞典』(以上、大修館書店)、『なぜなに日本語』『なぜなに日本語 もっと』(三省堂)、『ちびまる子ちゃんの敬語教室』(集英社)など。『明鏡国語辞典 第三版』(大修館書店)編集・執筆協力者。
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