出身大学を聞いて、「へー、頭いいんだ」。
ハーフの人に「日本人より日本人っぽいね」。
既婚者から独身者に「自由でいいよね」。
自分では気をつけているつもりでも、家庭や職場や仲間うちで何気なく言ってしまう、マナー違反の言葉の数々。"失礼な一言"がもたらす行き違いはどう回避すればいいのか――。
2023年5月19日に発売されたコラムニスト・石原壮一郎さんの新著『失礼な一言』(新潮社)は、様々な局面でお互いの気持ちが行き違わないための「言葉の使い方」を教えてくれている。今回は、その中から学歴にまつわる「うっかりやりがちな失礼」の例について紹介する。
「学歴トーク」は、数ある話題の中でも、とくに失礼な一言が出がちな領域だとされる。いわば「失礼の地雷原」で、どんなコンプレックスがいつどんなきっかけで爆発するかわからない。
まず注意したいのは「自虐と謙遜」だ。自分の学歴について、「私なんて、どうせ○○大だから(低学歴だから)」「○○大なんて、ぜんぜん高学歴じゃないですよ」「○○大といっても××学部ですから(付属上がりですから、推薦ですから)」と謙遜するのは避けた方がいい。相手に学歴へのこだわりがある場合は、相手のこだわりを間接的に貶めることになってしまうし、相手にこだわりがない場合は、興味のない話の押しつけになってしまうからだ。
一方で、学歴自慢はトラブルの種になる。学歴に対してコンプレックスをこじらせる人も多い。些細な言動を取り上げて「あの人って、学歴コンプレックスが強いよね」「あの人って、学歴を鼻にかけてるよね」と決めつける、相手の言葉を悪い意味に受け止めて「学歴をバカにされた」と憤るなど、無用なトラブルが起きることもある。
また、むやみな「ホメ」も失礼にあたる。出身大学を聞いて「へえー、頭いいんだね」「○○大なんだ。すごいねー!」とホメたり、仕事で成果を上げた人を「さすが○○大だね」とホメたりするのは、素直な称賛として受け取ってもらえない可能性が高い。しかし、だからといって相手の学歴を馬鹿にするわけにもいかない。
自慢しても謙遜しても、ホメてもケナシても失礼になる。そんな面倒な「学歴トーク」に巻き込まれたとき、私たちはどうすればいいのか。
石原さんによると、大切なのは相手と自分の「プライドを保つ」ことだ。「いやあ、○○大卒にはかなわないね」と学歴コンプレックスを露骨にぶつけられたら、「周囲となじめなかった」「たまたまヤマが当たりまくって、そこで人生の運を使い果たした」などウソの自虐話で相手の期待に応える。仕事ができない先輩が学歴自慢をしてきたら、「○○大なんですか。すごいですね!」「同級生にはどんな人がいるんですか」と感心するのがいいとされる。
難しいのが、大卒の人に「僕、高卒なんです」と言ったら、「あ、そうなんだ。ごめん」と謝られてしまった場合。失礼な言動ではあるが、「なんで謝るんですか」と詰め寄ったり、憤ったり不機嫌になったりすると、余計に人間関係がこじれてしまう。こういう時は、「アハハ、謝らないでくださいよ。自分が選んだ道に満足してるし、引け目も感じてませんから」と力強く言い放って、心の中で「俺のほうが一枚上手だ」と自尊心を保つべきだという。
■石原壮一郎さんプロフィール
いしはら・そういちろう/一九六三(昭和三十八)年三重県生まれ。コラムニスト。九三年 『大人養成講座』がデビュー作にしてベストセラーに。『大人力検定』 『父親力検定』『大人の言葉の選び方』『無理をしない快感』など著書多数。故郷を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。
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