新潮社の名作電子書籍が「Kindle Unlimited」の対象となる「夏の新潮社読み放題祭」が、2022年8月1日よりスタートする。開催期間は8月31日まで。今回はその中から、BOOKウォッチ読者にオススメの、実在の女性が描かれた作品を紹介しよう。
最初に紹介するのは、林真理子さんの小説『アッコちゃんの時代』(新潮社)だ。主人公のモデルは、バブル期、地上げの帝王と呼ばれた実業家・早坂太吉さんの愛人となり、その後、松任谷由実さんやYMOを世に送り出した音楽プロデューサー・川添象郎さんと略奪愛を演じて世間を騒がせた「伝説の女子大生」川添明子さん。六本木のディスコ、銀座の高級クラブで起きた華やかな恋模様を、『グレート・ギャツビー』風の長編恋愛小説として描き出している。
注目ポイントは何と言っても、松任谷さんなど実在する有名人たちが多数登場するところ。主人公の親友は「売れないミュージシャン」と付き合っているが、これは尾崎豊さん。主人公が不倫している相手の奥さんは、女優の風吹ジュンさん。さらに荻野目慶子さん、ロス疑惑で知られる三浦和義さんとの関わりもある。自家用ジェットやドンペリが飛び交う、バブルを象徴する有名人たちのきらびやかな交流から、そんな時代の無惨な崩壊まで、一つの「時代」を丸ごと楽しめる作品だ。
次にオススメしたいのは、森茉莉さんのエッセイ集『贅沢貧乏』(新潮社)だ。金が飛び交うバブルとは逆に、こちらは六畳間のアパートで赤貧生活をおくる女性の話。著者は文豪・鷗外の娘で、「蝶よ花よ」と甘やかされて育った箱入り娘だった。ところが、そのせいで生活能力はゼロ。二度結婚するもうまくいかず、結局父の印税を頼りに、無職・独身生活をしながら生涯を終えたことで知られる。
表題作「贅沢貧乏」は、すっかり中年になった著者が、生活や部屋の内装に対して持っている美学について書いたもの。貧乏なのでろくな家具がなく、生活能力も皆無なのでホコリだらけの「汚部屋」を、芸術的な「贅沢貧乏」であると言い張る。とくに意味もなくフランス語・イタリア語を使いまくって、若き日のヨーロッパ旅行で身につけた「西洋趣味」で貧乏生活を華やかに言い換える。そのダメ人間ぶりと、底抜けの現実逃避力に生きる元気を貰える1冊だ。
その他の対象作品は以下の通り。
・『許されようとは思いません(新潮文庫)』(芦沢央)
・『火のないところに煙は(新潮文庫)』(芦沢央)
・『ゴールデンスランバー(新潮文庫)』(伊坂幸太郎)
・『月まで三キロ(新潮文庫)』(伊与原新)
・『僕の人生には事件が起きない』(岩井勇気)
・『甲子園という病(新潮新書)』(氏原英明)
・『甲子園は通過点です―勝利至上主義と決別した男たち―(新潮新書)』(氏原英明)
・『死者の奢り・飼育(新潮文庫)』(大江健三郎)
・『ロケット・ササキ―ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正―(新潮文庫)』(大西康之)
・『砂まみれの名将―野村克也の1140日―』(加藤弘士)
・『少女葬(新潮文庫)』(櫛木理宇)
・『ふがいない僕は空を見た(新潮文庫)』(窪美澄)
・『善人長屋(新潮文庫)』(西條奈加)
・『金春屋ゴメス(新潮文庫nex)』(西條奈加)
・『ニューノーマル・サマー(新潮文庫nex)』(椎名寅生)
・『関ケ原(上)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『国盗り物語(一)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『項羽と劉邦(上)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『峠(上)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『新史 太閤記(上)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『花神(上)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『城塞(上)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『覇王の家(上)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『風神の門(上)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『胡蝶の夢(一)(新潮文庫)』(司馬遼太郎)
・『眠狂四郎無頼控(一)(新潮文庫)』(柴田錬三郎)
・『ボコ・ハラム―イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織―』(白戸圭一)
・『旅のラゴス(新潮文庫)』(筒井康隆)
・『一汁一菜でよいという提案(新潮文庫)』(土井善晴)
・『戦争と平和(一)(新潮文庫)』(トルストイ/著、 工藤精一郎/訳)
・『アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者―』(中島真志)
・『バブル―日本迷走の原点―(新潮文庫)』(永野健二)
・『あの夏の正解(新潮文庫)』(早見和真)
・『暗殺国家ロシア―消されたジャーナリストを追う―(新潮文庫)』(福田ますみ)
・『風と共に去りぬ 第1巻(新潮文庫)』(マーガレット・ミッチェル/著、 鴻巣友季子/訳)
・『ゼロの焦点(新潮文庫)』(松本清張)
・『土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―(新潮文庫)』(水上勉)
・『楽毅(一)(新潮文庫)』(宮城谷昌光)
・『晏子(一)(新潮文庫)』(宮城谷昌光)
・『御巣鷹山と生きる―日航機墜落事故遺族の25年―』(美谷島邦子)
・『流転の海―第一部―(新潮文庫)』(宮本輝)
・『お鳥見女房(新潮文庫)』(諸田玲子)
・『大家さんと僕』(矢部太郎)
・『季節のない街(新潮文庫)』(山本周五郎)
・『思わず考えちゃう』(ヨシタケシンスケ)
・『漂流(新潮文庫)』(吉村昭)
・『羆嵐(新潮文庫)』(吉村昭)
上記の作品はすべて、「新潮文庫 夏の読み放題祭り」の期間中、AmazonのKindle Unlimitedで読み放題の対象になっている。Kindle Unlimitedは月額980円で200万冊以上の作品が読み放題になるサブスクサービス。初回登録は30日間無料で利用できる。詳細はこちらをチェック。
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