宝石や花、果実や鳥。自然にはさまざまな色がある。美しい色に癒されてみるのはいかが?
『地球にじいろ図鑑 鉱物×日本の伝統色』(化学同人)が、2023年7月20日に発売された。著者は科学ジャーナリストの茜灯里さんだ。
本書は、「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の虹の七色と、無彩色(白灰黒)に分けて、自然界にある色彩が紹介されている。片面1ページに「日本の伝統色の名前」「鉱物のカタカナ表記の名前・和名、宝石の説明」「鉱物に似た色の植物と動物の写真」がまとまっていて、眺めているだけで目が癒される。
今回は、本書から3つの「色」をご紹介しよう。
「赤の章」の「薔薇色(ばらいろ)」の鉱物・ロードナイトは、和名が薔薇輝石(ばらきせき)。ピンクがかった明るい紅色だ。
ロードナイトという名前も、ギリシャ語で薔薇を意味する「rhodon」という単語が由来だそうだ。ブラジルやオーストラリアで主に生産されている。同じページで紹介されている植物は、もちろんバラ。それから、薔薇色の翼をもつサギもいる。
続いては、まるでマスカットのような鉱物。「緑の章」のプレナイト(葡萄石・ぶどういし)だ。日本の伝統色では浅緑(あさみどり)。
英名は、1774年にこの石を南アフリカで発見し、最初にヨーロッパに持ち込んだオランダ陸軍のヘンドリック・フォン・プレーン大佐にちなんでつけられたそう。同じページに載っている本物のマスカットと見比べると、いっそうかわいらしい。
浅緑色の動物は、ヘキサンという小鳥。鮮やかで個性的な色の羽根をもつ鳥は多い。
地球上で最も硬い鉱物、ダイヤモンド。無色透明の美しさが、歴史上たくさんの人の心を惹きつけてきた。ダイヤモンドのような植物や動物はいるのだろうか?
「白灰黒の章」で、ダイヤモンドは日本の伝統色・純白(じゅんぱく)として紹介されている。一緒に載っているのは、雨に濡れると花びらが透明になる不思議な植物・サンカヨウと、インドクジャクの遺伝子変異で生まれたシロクジャク。どちらも息をのむような美しさだ。
本書は写真を眺めるだけでも楽しいし、巻末には誕生石の一覧やカラーチャート、鉱物に関連する基本用語集などがついていて、途中に色にまつわるコラムも挟まっているので、詳しく読み込めば知識も身につく。さまざまな楽しみ方ができる一冊だ。
【目次】
はじめに/『地球にじいろ図鑑』の歩き方
01 赤の章
ルビー×茜色/レッド・スピネル×梅紫/ルベライト×浜茄子色/レッド・ベリル×牡丹色/アルマンディン・ガーネット×錆朱/パイロープ・ガーネット×臙脂色/ロードナイト×薔薇色/ロードクロサイト×猩々緋/モルガナイト×退紅/クンツァイト×一斤染/コーラル×浅緋/コンクパール×紅梅色/ローズクォーツ×秋桜色/シナバー×蘇枋色
02 橙の章
スペサルティン・ガーネット×黄丹/サードニクス×柿色/サンストーン×洗朱/リアルガー×朱色/パパラチア・サファイア×鴇色/インペリアル・トパーズ×樺色/チンゼナイト×橙色/バナジナイト×紅緋/スティルバイト×赤白橡/クリノヒューマイト×朱華/トータスシェル×飴色/ファイア・オパール×纁/デザートローズ×杏色/スタウロライト×檜皮色
03 黄の章
アンバー×向日葵色/タイガーズアイ×支子色/フロゴパイト×黄櫨染/スファレライト×枯草色/ミラーライト×木蘭色/レグランダイト×黄蘗色/ゴールド×黄水仙/パイライト×蒸栗色/キャルコパイライト×黄朽葉/ウルフェナイト×鬱金色/サルファー×菜の花色/オーピメント×苅安/シトリン×蒲公英色/リビアングラス×檸檬色/ペタライト×猫柳色/クリソベリル・キャッツアイ×青朽葉
04 緑の章
ペリドット×若葉色/スフェーン×萌黄色/パイロモルファイト×鶸萌黄/サーペンティン×松葉色/ウバロバイト・ガーネット×常磐緑/ツァボライト×鸚鵡緑/デマントイド・ガーネット×香櫞緑/モルダバイト×山葵色/プレナイト×浅緑色/フォスフォフィライト×青磁色/エメラルド×深緑/ジェダイト×青竹色/マウシットシット×木賊色/マラカイト×孔雀緑/ダイオプテーズ×海松藍/ブラッドストーン×鉄色
05 青の章
パライバ・トルマリン×水浅葱/ターコイズ×浅葱/スミソナイト×薄浅葱/ヘミモルファイト×露草色/クリソコーラ×新橋色/ナカウリアイト×水色/アクアマリン×藍白/プランチェアイト ×勿忘草色/アパタイト×花浅葱/ラリマー×空色/フローライト×淡群青/デュモルチェライト×青藤
06 藍の章
ラピスラズリ×瑠璃色/インディゴライト×藍色/ボルダーオパール×紺碧/ラブラドライト×縹色/ボレアイト×濃縹/クメンジャイト×濃藍/エイラットストーン×孔雀青/カルカンサイト×紺青/サファイア×群青色/アフガナイト×紺色/ベニトアイト×鉄紺/アズライト×濃紺
07 紫の章
タンザナイト×花色/アイオライト×菫色/チャロアイト×桔梗色/マリアライト×藤色/ラベンダー・ジェダイト×楝/スギライト×菖蒲色/レピドライト×若紫/パープライト×杜若色/アメシスト×古代紫/アレキサンドライト×桑の実色/コベリン×茄子紺/ネプチュナイト×黒紫
08 白灰黒の章
[白]ダイヤモンド×純白/ロッククリスタル×鉛白/ムーンストーン×月白/ウレキサイト×白練/カルサイト×卯の花色/パール×生成色/アイボリー×乳白/タルク×灰白/ジルコン×砂色
[灰]シルバー×銀鼠/プラチナ×灰色/ギベオン×薄墨/アイアンローズ×素鼠/ガレナ×鉛色
[黒]カーボナード×黒橡/グラファイト×消炭色/ジェット×墨色/キャシテライト×濡羽色/オブシディアン×鉄黒
【色にまつわるコラム】①光と色の関係/②自色鉱物と他色鉱物/③他色鉱物のさまざまな着色原因/④構造色によるもの/⑤宝石の輝きに付随する色/⑥植物の色/⑦動物の色
巻末資料 誕生石/カラーチャート/用語集/登場鉱物の特性一覧/写真クレジット/参考文献/索引
■茜灯里さんプロフィール
あかね・あかり/作家・科学ジャーナリスト。博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科卒業、朝日新聞記者、宝石鑑定鑑別機関勤務を経て、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。東京大学農学部獣医学課程卒業。東京大学、立命館大学などで教鞭をとる。
東京大学総合研究博物館勤務時に鉱物の色の研究、展示に携わる。宝石学の資格はGIA.GG、FGAを所有。FGAではDiploma Trade Prize(最優秀賞)を受賞。
小説に第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作『馬疫』(2021年、光文社)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007年、化学同人)など。現在、Newsweek日本版Webで科学コラム『サイエンス・ナビゲーター』を連載中。
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