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おすすめの恋愛本は?と聞かれたら。20~60代の男女が選んだ8冊

愛がなんだ

 甘酸っぱい初恋、大人の恋愛、道ならぬ恋......。小説や漫画の世界では、さまざまな恋愛模様が描かれる。ミステリーでもSFでも歴史ものでも、恋愛要素が盛り込まれた作品は数限りなく、これまでにたくさん読んできたはずなのに、「おすすめは?」と聞かれるとこれが案外難しい。今回は20~60代のBOOKウォッチ編集部のメンバーが、悩んだすえに選んだ珠玉の8冊を紹介しよう。

正解も不正解もないから

 1人目はテーマの発案者で営業担当のO。結婚3年目、「夫婦」という形に慣れてきたところで、改めて「恋愛」を考えてみたくなったという。「正解も不正解もない、様々な恋愛模様を、本を通じて知ってみたい」と言う彼が選んだのが次の3冊だ。

『赤い実はじけた』

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名木田恵子 著/PHP研究所

 小学校の時、国語の教科書に載っていた作品。甘酸っぱい恋のお話に、子どもながらにドキドキワクワクしながら読んだ。これまで意識していなかった男の子のことを急に恋愛対象として意識し始め、心の中の赤い実がパチンとはじける......。いま読み返すと、なんだか無性に叫びたくなります(笑)。


『君に届け』

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椎名軽穂 作/集英社

 男子高出身なので、この漫画に描かれている学校生活や恋愛模様は、ただひたすら眩しかった。いつもクラスの隅にいて周囲に「貞子」と呼ばれ、不気味に思われていた「爽子」が素敵な友人と出会い、皆から好かれる「風早君」との恋を経験して成長していく姿に感情移入してしまう。甘酸っぱく、コミカルで、だけど少しホロっと泣ける作品。


『愛がなんだ』

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角田光代 著/KADOKAWA

 仕事中だろうと大好きなマモちゃんからの電話にはすぐ出てしまい、ご飯に誘われたら会社を飛び出してしまう主人公テルコ。仕事も自分も犠牲にしているのに、マモちゃんとは彼氏彼女の関係ではない。そう、テルコは全身全霊で片想いをしているのだ。歪な恋愛関係だが、軽快な文章が読みやすく、そのテンポが主人公の明るさを引き立て、不思議と爽快感すら感じる。
 岸井ゆきのさん主演で映画化された。小説の雰囲気がスクリーンに反映されていて、小説・映画ともにすごく満足度が高かった。


これは恋愛小説? それとも......?

 他のメンバーからしてみれば、もっとも「恋愛」に近いところにいそうな20代の記者Hが選んだのはこちら。

『汝、星のごとく』

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凪良ゆう/講談社

 これは恋愛小説? それとも......?
 舞台は瀬戸内海の島。自分勝手な親に振り回される孤独な高校生・櫂と暁海は、似た境遇同士で惹かれ合い、やがて恋人となる。しかし高校卒業後、夢を叶えて上京した櫂と親を支えるために島に残った暁海は、しだいにすれ違っていく。
 お決まりのロマンス通りにはいかない現実を突きつけられ、読みながら何度も苦しくなる。でも、その先には「愛」があることを信じて読み進めてほしい。

BOOKウォッチの書評はこちら→凪良ゆう最新作は、「恋愛小説」の枠にはまらない「愛」の物語



既婚者ならではの恋愛小説

 続いて、数々の恋愛小説の書評を担当してきた記者M。「もうずいぶんご無沙汰だなと思いつつ、でも既婚者ならではの恋愛小説もあるなと思い直し、3年前に読んで衝撃を受けた本書を選びました」という作品がこちら。

『Red』

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島本理生 著/中央公論新社

 31歳の塔子(とうこ)は、結婚、出産、退職を経て、義理の両親、夫、娘と「十分に恵まれて幸せ」な生活を送っていた。しかし、ずっと家の中にいて、義母に気を遣い、夫とはセックスレス。塔子の体と心は硬く閉じていた。そこにかつての恋人・鞍田(くらた)が現れ、塔子の安定的で平穏な生活は反転する。
 妻、母、嫁としてではなく、一人の女性として生きたいと思い始める塔子にいたく共感した。過激な描写も読みどころ。
 2014年刊行。2017年文庫化。2020年に映画化された。

BOOKウォッチの書評はこちら→島本理生さんが女性の選択を描いた衝撃作



実は「恋愛漫画」だった

 家の本棚を見渡しても恋愛に関する本はなく、思い浮かばないので「今回は無し」でスルーしようとしていたベテラン記者Sが、「書棚の奥にあって思い出した」という作品がこちら。

『あしたのジョー』

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高森朝雄原作・ちばてつや作画/講談社・全20巻

 言わずと知れたボクシング漫画で、1968年から73年にかけて「週刊少年マガジン」で連載された。主人公の矢吹丈と力石徹の凄絶な試合は、今も語り継がれる名作。小中学校時代に読んだときはボクシング漫画そのものと受け止めていたが、30代のときに全巻をまとめ買いして、大人の恋愛漫画として読んでいることに気づいた。
 力石の後ろ盾になる財閥令嬢の白木葉子、そして丈に好意を寄せる下町の食料品屋の看板娘、林紀子の二人の女性と丈との関係は、男女の心理のアヤも含めてジーンと来るシーンが多い。葉子と紀子が瓜二つであることも興味深い。
 紀子が丈を諦め、丈のジム仲間のマンモス西と結婚したときの丈の披露宴でのわざとらしい悪態台詞や、丈と敵対しながら、最後には丈の最後の試合を設定し、丈に対する想いを打ち明ける葉子に対する丈の態度など、もはや少年漫画の域を超えていたと思う。丈が最後の試合で死んだのかどうかについては、様々な説があるが、葉子に投げかけた最後の言葉が心に沁みる。


加藤シゲアキさんに感謝

 同じく「恋愛」と聞いてパッと思いつく作品がなかった記者が、かろうじてひねり出したのは次の2冊だ。いずれも昔の作品だが、いつの時代に読んでも気づきがあるはず。

『愛するということ』(新訳版)

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エーリッヒ・フロム 著・鈴木晶 訳/紀伊國屋書店

 大学時代に講義のテキストとして読んで以来、四半世紀(!)手に取ることはなかった。当時は不純な動機だったし(カップルで受講すると結婚するという噂があった)、内容も観念的でよく理解できなかったが、「木曜日は本曜日」で加藤シゲアキさんが激推ししていたので久々に読み返した。
 「愛は何よりも与えることであり、もらうことではない」とフロムは説いている。「愛される」方法ばかり考えていた当時は実感を伴わなかったが、人並みに痛い思いも喜びも経験し、アラフィフになった今読むと、どの言葉も心に響く。恋愛にとどまらず、生きるヒントが詰まった一冊。もう一度この本に出合わせてくれた加藤さんに感謝。

「木曜日は本曜日」加藤シゲアキさんの記事はこちら→「ひどいこと言う人がいなくなった」加藤シゲアキが「愛」を確かめた本とは



『ラブ・ストーリー ある愛の詩』

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エリック・シーガル 著 板倉章 訳/KADOKAWA

 こちらも学生時代に読んだ本。映画化もされた有名な作品だが、初版が1970年と古いのでご存じない方も多いだろう。読んだことはなくても「愛とは決して後悔しないこと("Love means never having to say you're sorry")」というフレーズは耳にしたことがあるかもしれない。
 裕福な名家に生まれながら父との関係に悩むハーバード大生のオリバーと、貧困家庭でシングルファザーの父からたっぷりの愛情を注がれて育ったジェニー。対照的なふたりが偶然の出会いから惹かれ合い、やがて恋に落ちる。しかしジェニーは白血病を患い......という王道の恋愛小説で、似たような話はたくさんあるけれど、この作品には普遍的な魅力がある。ふたりの掛け合いが軽妙で、学生時代はそのおしゃれな会話に憧れた。ジェニーはフロムの言う「愛するということ」を20代にして会得していたに違いない。


 街はバレンタイン一色。今、胸が高鳴る恋をしている人も、最近ときめいていないなぁ......という人も、この機会に恋愛作品から広がる豊かな世界に浸ってみてはいかが?





 


  • 書名 愛がなんだ
  • 監修・編集・著者名角田光代 著
  • 出版社名KADOKAWA
  • 出版年月日2006年2月25日
  • 定価572円(税込)
  • 判型・ページ数文庫版・224ページ
  • ISBN9784043726042

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