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「ひどいこと言う人がいなくなった」加藤シゲアキが「愛」を確かめた本とは

(企画名)木曜日は本曜日

 アイドルグループ・NEWSのメンバーで、小説家としても活躍している加藤シゲアキさんは、初めての小説『ピンクとグレー』(KADOKAWA)を書いた当時のことをこう回想する。

自分のモヤモヤしたものを何か作品にしないと、マジで死ぬかもしれないと思いましたね、あの時。

 モヤモヤを吐き出すように書き上げた処女作で、2012年に小説家デビューしてから、今年1月で丸11年になる。読書家としても知られる加藤さんの人生を動かしてきた本とは。

 「週に1回街の本屋さんに足を運んでもらおう」と、東京都書店商業組合が立ち上げたプロジェクト〈#木曜日は本曜日〉。毎週木曜日に著名人・インフルエンサー・作家が「人生を変えた本」を紹介する、〈東京○○書店〉が更新中だ。これまでに上白石萌音さん佐久間宣行さん鈴木涼美さんらが登場した。

 2023年一発目となる第13回に登場した加藤さん。10代の頃から芸能活動を開始し、悩むことが多かったというが、そんな時に救いになった本があった。

「俺のために書いたのかな」と思った

 一番好きな本を聞かれたらいつも挙げているという本が、J.D.サリンジャー著、村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)。高校を退学となった16歳の少年がクリスマス前のニューヨークを彷徨するさまを描く、青春小説の名作だ。

 加藤さんは大学生の時に、複数の友人にすすめられて読んだそう。当時は芸能活動がうまくいっておらず、悩んでいた時期だった。社会に反発する主人公の心の動きに共感し、「俺じゃん」「なんで俺のことこんなにわかるんだろう」と思ったのだという。

俺のために書いたのかなって思って。びっくりしたんです。でも、この本世界でめちゃくちゃ売れてるわけですよね。だから俺みたいな人いっぱいいるんだと思って。それが、ちょっと救いだったんですよね。

 人には言えない思いが本を通して誰かと繋がり、救われて楽になるという体験を、この本で初めてしたのだと語った。

人と「ちゃんと向き合うこと」の大切さ

 小説を書き、アイドルをする上で、今の加藤さんにとっての大きなテーマの一つが「愛」だ。人生を変えた本として2冊目に紹介したのは、社会心理学者エーリッヒ・フロムの『愛するということ』(紀伊國屋書店)。「自分のやり方は間違ってない」と思わせてくれた一冊だという。

 フロムは本書で「愛するということは技術であり、修練して磨くべきだ」と説く。加藤さんは日頃、小説を書きながら「愛とは何か」ということをよく考え、グループで活動するにあたっても、人と向き合うのには愛が必要だと感じているという。

どうしても、いろんな人と話してて考え方でぶつかることがあると思うんですけど、「知らないよ」って終わりにしてしまったらもうそれまで。ちゃんと話し合う、ちゃんと向き合う、お互いに理解し合おうとする姿勢まで持っていく、もし理解できなくてもなんで理解できないかをお互い理解するところまで話し合いたいと僕が常々思っている、その生き方が、これを読んで「正しかった」と思いました。

 人と向き合い、愛し続けてきたことで、「周りに僕のことを愛してくれる人しかいなくなってきました」「僕にひどいことを言う人があんまりいなくなった」と語る加藤さん。本を通して成長し、楽に生きられる方法を見つけたのだ。

 動画後半では、東京都新宿区にある「紀伊國屋書店 新宿本店」へ。ちょうど加藤さんの最新刊『1と0と加藤シゲアキ』(KADOKAWA)を記念したフェアが展開されており、著書はもちろん、愛読書として紹介してきた本など加藤さんに関わる本がずらり。本を手に取りながら、「(今回の)10冊にこれ入れてもよかったよな~」「これが僕の中の〈木曜日は本曜日〉!」と、リサーチの徹底ぶりに感心した様子だ。

 コーナーを担当した店員に「すごいですね。マジでうちの本棚みたいだもん」と言うと、なんと実際に、テレビ番組などで紹介された加藤さんの自宅の本棚の画像を参考にしたという返答が。なんと持っていることを誰にも言っていない本まで並んでおり、「怖っ!」とリアクションして笑いを誘った。

加藤シゲアキさん
加藤シゲアキさん

〈加藤シゲアキさんの「人生を変えた本」10冊〉

『はじめての構造主義』橋爪大三郎(講談社)
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』J.D.サリンジャー(白水社、村上春樹訳)
『一一一一一』福永信(河出書房新社)
『愛するということ』エーリッヒ・フロム(紀伊國屋書店、鈴木晶訳)
『蛇にピアス』金原ひとみ(集英社)
『ヘヴン』川上未映子(講談社)
『罪と罰』ドストエフスキー(光文社、亀山郁夫訳)
『新訳 弓と禅』オイゲン・ヘリゲル(KADOKAWA、魚住孝至訳)
『愛について語るときに我々の語ること』レイモンド・カーヴァー(中央公論新社、村上春樹訳)
『文体練習』レーモン・クノー(朝日出版社、朝比奈弘治訳)

 重たい題材を扱った小説に、『一一一一一』『文体練習』といった小説そのものを問い直すような作品、さらに愛についてもう一冊。加藤さんがこれまでの人生で深く考えてきたであろうテーマが、浮かび上がってくるラインアップだ。

 〈東京○○書店〉は毎週木曜日に更新される。次回は誰が登場するのだろうか。

 〈#木曜日は本曜日〉公式サイトはこちら。→https://honyoubi.com/

 東京の各書店では〈#木曜日は本曜日〉オリジナルデザインのしおりを配布している。配布店舗の一覧はこちら。→https://honyoubi.com/assets/data/present_shoplist.pdf

〈東京加藤シゲアキ書店〉しおりデザイン
〈東京加藤シゲアキ書店〉しおりデザイン

 また2023年1月5日(木)から2023年1月31日(火)まで、渋谷ヒカリエの「渋谷○○書店」にて、〈#木曜日は本曜日〉のアーカイブ展が開催中だ。これまでのゲストの選んだ本から各3冊が展示・販売されるほか、動画内でゲストが記入した「○○さんにとって本屋とは?」の手書きフリップも展示される。各書店にて配布中の〈#木曜日は本曜日〉オリジナルしおりも、展示会で配布される。

■「#木曜日は本曜日」アーカイブ展@「渋谷○○書店」概要
期間:2023年1月5日(木)~2023年1月31日(火)
場所:渋谷ヒカリエ内「渋谷○○書店」(〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2丁目21−1 ヒカリエ8階)

■アーカイブ展と同時開催 限定6店舗にて各ゲストの選書本10冊の展示・販売が決定!
アーカイブ展と同時期に、都内6つの書店にて、各ゲストの10冊分全てを展示・販売予定しております。
アーカイブ展に展示されていないゲストの選書本をご覧いただける機会となっておりますので、ぜひ足をお運びください。
【対象書店】
教文館(中央区)/中野屋書店(品川区)/恭文堂(目黒区)/小川書店(港区)/黒田書店(日野市)/一二三堂(大田区)

■加藤シゲアキさんプロフィール
かとう・しげあき/1987年大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWSのメンバーとして活動しながら、TBS系ドラマ『3年B組金八先生』、日本テレビ系ドラマ『時をかける少女』、フジテレビ系ドラマ『嫌われる勇気』などに出演。2012年に『ピンクとグレー』で作家デビュー。その後もアイドルと作家活動を両立させ、2021年『オルタネート』で吉川英治文学新人賞、高校生直木賞を受賞。同作は直木賞候補にもなり話題を呼んだ。他の小説作品に『閃光スクランブル』『Burn.―バーン―』『傘をもたない蟻たちは』『チュベローズで待ってる AGE22・AGE32』、エッセイ集に『できることならスティードで』がある。2022年、作家生活10周年を記念し、自ら責任編集を務めた『1と0と加藤シゲアキ』を刊行した。


※画像提供:東京都書店商業組合




 


  • 書名 (企画名)木曜日は本曜日
  • 出版社名(主催)東京都書店商業組合

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