「うつ病」や「統合失調症」など、実際どんな病気なのかどれくらい知っているだろうか。精神障害は日本の5大疾病にも数えられ、誰でもいつでもかかる可能性がある。
筑波大学で何度も「ベストティーチャー賞」を受賞したことがある精神科医の松崎朝樹さんが、主要な精神障害についてわかりやすく一冊にまとめた。『教養としての精神医学』（KADOKAWA）だ。あなたやあなたの周りの人が発症するかもしれないいつかのために、教養として知識をつけておくのはいかがだろうか。本書の内容を少し見てみよう。
統合失調症は、精神障害の中でも患者数が多く、およそ100人に1人が発症する病気だ。BOOKウォッチでも統合失調症にまつわる本をいくつか紹介してきた。
100人に1人弱が発症...当事者目線で描く『続・統合失調症日記』配信スタート！
12人の子どものうち6人が統合失調症を発症。精神医学史に残った一家の衝撃実録
統合失調症の妻×うつ病の夫。「夫婦でビョーキ」の2人が見つけた、幸せのかたちとは
日本における入院患者数は、3位ががんなどの悪性新生物質、2位が心不全などの循環器障害、1位が精神障害だ。そのうち、半分以上を統合失調症が占めているそう。つまり、日本で最も入院患者が多い疾患なのだ。
きっかけなく発症することもあるが、ストレスで発症しやすくなる。遺伝的要素もあり、親のどちらかが統合失調症だと、子どもが発症する確率が5～10％と一般よりも高くなるという。男女差はほとんどないそうだ。
以下の5つの症状のうち2つ以上（4と5だけの組み合わせは除く）が半年以上続いたときに、統合失調症と診断される。
1 幻覚
幻聴や幻視など。統合失調症では人の声の幻聴が多い。
2 妄想
現実とは異なる誤った確信。
3 話のまとまらなさ
考えのまとまらなさは連合弛緩と呼ばれる。これがひどいと話が支離滅裂となる。
4 行動のまとまらなさ
行動に現れる連合弛緩または緊張病性（動きが固まる、同じことを繰り返すなど）の行動。
5 陰性症状
感情の平板化や意欲欠如など。（※幻覚や妄想は「陽性症状」と呼ぶ）
このように、統合失調症にはいくつか症状の種類があり、人によってもどの症状が出るかが違うため、知識がないと「こういう病気」というイメージがパッと湧きづらいだろう。診断基準を知っておけば、自分や周りの人が「もしかしたら......」となったときに役立つはずだ。
本書にはこのように、精神医学のわかりやすい知識がまとめられている。以下は、紹介されている精神障害の一部だ。
〈目次より一部〉
■気分が晴れない、落ち込んでいる人たち（うつ病）
■幻聴や妄想が出る人たち（統合失調症）
■きっかけなく突然のパニック発作を繰り返す人たち（パニック症）
■多重人格や記憶障害が生じている人たち（解離症）
■体重や食事のことが気になって食べずにやせ続ける人たち（神経性やせ症）
■アルコールを飲まずにはいられない人たち（アルコール使用障害）
■突然に眠り込んでしまう人たち（ナルコレプシー）
■夜に眠れず日中に問題が生じている人たち（不眠症）
■入院中、急に認知症が進んだと間違えられがちな人たち（せん妄）
■感情が不安定な人たち（境界性パーソナリティ障害）
■自分はすごいと思いたがる傷つきやすい人たち（自己愛性パーソナリティ障害）
■注目を集め続けないといられない人たち（演技性パーソナリティ障害）
■感情が乏しく孤立する人たち（シゾイドパーソナリティ障害）
■不注意だったり落ち着かなかったりする人たち（ADHD）
■アスペルガー症候群の家族に起こること（カサンドラ症候群）
■ゴーイングマイウェイな行動が多い人たち（前頭側頭型認知症）
「聞いたことがあるけど、どんな症状か知らないかも......」「こんな精神障害もあるの？」という名前があった方は、ぜひ本書を開いてみては。
■松崎朝樹さんプロフィール
まつざき・あさき／精神科医・筑波大学医学医療系臨床医学域精神神経科講師。筑波大学卒業。いくつもの精神科病院や総合病院の精神科、国立精神・神経医療研究センター勤務を経て、2014年より現職。ベストティーチャー賞を何度も受賞。『精神診療プラチナマニュアル』（メディカル・サイエンス・インターナショナル）など著書多数。YouTubeチャンネル『精神科医松崎朝樹の精神医学』は登録者数5.9万人（2022年12月時点）。『メンタル系YouTuberの会』の会長を務め、医療者からも注目を集めるメンタル系YouTuberでもある。
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