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12人の子どものうち6人が統合失調症を発症。精神医学史に残った一家の衝撃実録

統合失調症の一族 遺伝か、環境か

 第二次大戦後のアメリカ、コロラド州。ギャルヴィン一家はベビーブームを背景に12人もの子どもをもうけた。楽天的なアメリカンドリームはのちに打ち砕かれる。1970年代半ばには、子どもたちのうち6人が統合失調症と診断されたのだ。

 バラク・オバマ元大統領の選ぶ年間ベストブック、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー第1位ほか、アメリカ各メディアの年間ベストブックを総なめにしたノンフィクションが、日本で『統合失調症の一族 遺伝か、環境か』(早川書房)として発売された。


 始まりは長男・ドナルドだった。修道士のように茶色のシーツを身にまとい、近所を歩き回っては、他の人には理解できない祈りの文言を唱える。ドナルドは家族からも、近所の人々からも遠ざけられていた。

 そのうち、他の兄弟にも異常があらわれるようになる。10番目のピーターは躁病になり、乱暴に。9番目のマシューは才能ある陶芸家だが、自分がポール・マッカートニーであると思い込み、そうでないときには自分の気分が天気を決めていると信じていた。7番目のジョセフは痛いほど自意識が強く、そこにいない人の声をはっきりと聞いた。2番目のジムは、ドナルドと激しく争い、小さい弟や妹に襲いかかった。そして、一家のアイドルだった4番目のブライアンは、たった一度の不可解な暴力の爆発で、家族全員の人生を永久に変えてしまった。

 まさに「事実は小説よりも奇なり」の言葉通りである。彼らはいったいなぜ、次々に精神疾患に見舞われたのだろうか。遺伝なのか、それとも家庭の環境か? ギャルヴィン一家は、1980年代頃から統合失調症の研究者たちの調査の対象となった。一家の遺伝物質のサンプルは、現在の統合失調症の研究の基礎を成している。

 想像を絶する家族の一員となったにもかかわらず、末娘のリンジーは、現在も存命中の兄弟の面倒を見ている。なぜ彼女は家族と縁を切らなかったのか? 統合失調症とは何か、そして家族とは何かを描き出す、一大傑作。

想像しうる事実上すべての形で最悪の出来事が起こった後でさえ、家族であるとは何を意味するかを理解する新しい方法を見つけることについての物語
(「プロローグ」より)

■ロバート・コルカー(Robert Kolker)さん
ジャーナリスト・作家。アメリカ・メリーランド州出身、1991年コロンビア大学卒。「ニューヨークマガジン」「ブルームバーグ ビジネスウィーク」「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」「ワイアード」など各誌に記事を執筆。作家としての第1作の犯罪ノンフィクションLost Girlsは「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラーとなり、2020年に映画化。


※画像提供:早川書房


   
  • 書名 統合失調症の一族 遺伝か、環境か
  • 監修・編集・著者名ロバート・コルカー 著 柴田裕之 訳
  • 出版社名早川書房
  • 出版年月日2022年9月14日
  • 定価3,740円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・512ページ
  • ISBN9784152101686

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