相手の反応が気になってしまい、言いたいことが言えない......言ってしまったことについて後から思い返しては反省することがよくある......そんなコミュニケーションの悩みを解決するカギが、「アサーション」だ。
2023年1月27日に発売された『言いにくいことが言えるようになる伝え方 自分も相手も大切にするアサーション』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、人に思いを伝えることに慣れていない人におすすめのコミュニケーション方法である「アサーション」の考え方を伝授してくれる。
著者の臨床心理士・平木典子さんは、アメリカでアサーションを学んでから40年以上、日本でのアサーション・トレーニングに注力してきた第一人者。本書でも読者に寄り添いながら平易な言葉でわかりやすく基本から実践まで解説している。
今回は本書からアサーションの基本的な考え方や、実際のコミュニケーションに取り入れる時のポイントを紹介したい。
アサーションとは、「立場や役割を大切にしながらも、互いを一人の人間として大切にすること」。本書では、そのような自己表現を「アサーティブな自己表現」としている。
「がまんする人、思いを抑えてしまう人は、まず相手のことを考え、配慮してから、自分の態度を決める傾向があります。
ところがアサーションでは、まず自分のことを考えます。それはわがままでも身勝手でもなく、自分の気持ちや考えがわからないと、話にならないからです」
著者の平木さんは、気持ちや考えを相手に伝える方が自分を大切にすることになると判断したとき、正直に、相手を大切にする気持ちも込めて表現することを提案している。
もちろん、相手が必ずしも同意してくれるとは限らない。それが人と人との自然なやりとりであり、アサーティブかつ自然体のコミュニケーションだと言える。
では、具体的にどんなところに気をつければいいのだろうか。
実践するときのポイントの1つが、イライラしたり腹立たしい気持ちになったりしたときに、怒りの前の「困っている」気持ちを伝えること。
「怒っているとき、人はその直前に何か嫌なことや体験したくないことに出会っていて、怒る直前には、『困った』『参った』などの気持ちがあります」
たとえば、バスに乗り遅れそうで急いでいるのに、相手がゆっくり身支度をしているとき。「早くしてよ!」と怒るのではなく、その手前にある「急いでほしい」「乗り遅れたら困る」という自分の感情に気づけば、怒りではなくそちらを相手に伝えることができる。相手も、頭ごなしに怒られるよりも対応しやすくなるはずだ。
このように、最初に自分の気持ちや考えをはっきり理解することで、がまんするのではなく、相手に言いすぎてしまうのでもなく、適切に伝えられるようになるのが「アサーティブな自己表現」である。本書は、自分も相手も大切にしながら、言いたいことはきちんと言えるようになりたい人にとって強い味方になってくれるはず。
■平木典子さんプロフィール
ひらき・のりこ/1959年津田塾大学英文学科卒業。ミネソタ大学大学院でカウンセリング心理学を専攻(教育心理学修士)。帰国後はカウンセラーとして活躍しながら後進の指導にあたる。日本におけるアサーション・トレーニングの第一人者。立教大学カウンセラー・教授、統合的心理療法研究所(IPI)所長を経て、2019年より日本アサーション協会代表。臨床心理士。家族心理士。著書に『三訂版アサーション・トレーニング』(日本・精神技術研究所)、『アサーション入門』(講談社)など多数。
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