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「気にしないで」→感じのいい人はなんと言う? 品性が表れる「おわび受け」

さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳

 迷惑をかけてしまった相手に謝るとき、「申し訳ない」という気持ちで恐縮してしまう。責任感の強い人なら一層、落ち込むだろう。では、もしあなたが謝られる立場だったら?

 謝罪に「どう返すか」という場面でこそ、その人の品性や度量が試される。今回は、今井登茂子さんの『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)から、品のある「おわび受け」のフレーズを2つ紹介しよう。

慰めというより、驚きで伝える

 たとえば、後輩(仮に「石原さん」としよう)が、あなたの指示を勘違いしてしまったとき。「申し訳ありません」と平謝りする石原さんに対して、あなたならどう声をかける?

 この場合、誤解を招くような指示を与えたあなたにも落ち度がないとは言えない。間違っても「まあいいよ。次から気をつけようね」などと言ってはいけない。

「石原さんが謝ることではないですよ」

 こんな風に言えたら合格ライン。慰めの気持ちは伝わるだろう。でも、惜しい! ここにひとこと加えると、あなたの株は上がるに違いない。

 その「ちょい足しことば」がこちら。

どうして? 石原さんが謝ることではないですよ。」

~以下、第9章より一部抜粋~

 以前、自分の勘違いを一生懸命にわびる後輩に対して、「どうして謝るの? 僕にも落ち度があったし、謝ることないんだよ」とごく自然に「どうして?」ということばを使っている男性の姿を見て、とても新鮮に感じました。この光景を目撃して以来、お気に入りのちょい足しことばです。
 「どうして?」は、言い方によっては詰問になりますし、相手に不満や反発の意を表したいときによく使われることばです。でも、相手の気持ちをやわらげ、フォローすることばにもなるのです。そして、相手を慰めるというよりは、謝るべき理由がないのに謝られてびっくりした!というような驚きとして伝えることで、相手の気持ちもより軽くなります。
 そういえば、私が結婚しても仕事を続けたいと言ったとき、夫は「えっ、どうして(そんなこと聞くの)? 結婚したら幅が広がって、もっといい仕事ができると思うよ」と言ってくれました。
 今の時代ではこんな会話は想像できないかもしれませんが、私は、この「どうして?」に支えられて、現在があるのだなと実感しています。

~以上、本文より引用~

自分だって助けてもらうことがあるから

 続いては、よくあるこんなシーン。

 同僚が風邪をひいて急に休んだとき、「忙しい時期に、風邪をひいてしまって、本当にごめんなさい」と謝られたら、どう答えるだろうか。

 「わかりました。お大事にね」や「いえいえ、気にしないでください」でも気づかいは伝わるかもしれないが、負担をかける側からすれば、さらに申し訳なさが募る。

 そんなときは、こんなフレーズを「ちょい足し」しよう。

「私のときもよろしくね!」
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「気にしないで」に「ちょい足し」

~以下、第9章より一部抜粋~

 仕事仲間から、こんな話を聞きました。同僚が風邪で仕事を休んだ際、「こんな忙しいときに休んでしまって申し訳ない」と、深く落ち込んでいた、と。そんなとき、彼女の先輩がかけたことばが、「大丈夫大丈夫、やっておくから気にしないで。私のときもよろしくね!」というひとこと。あとから、「あのひとことに救われた」と笑顔で話していたそうです。
 そのエピソードを聞いてから、「私のときもよろしくね!」は、私の職場でもみんなが好んで使うようになり、すっかり定着しました。
 忙しいときなど、ミスや予想外の休みに、自分を責めてしまう人は多いものです。でも、誰だっていつ病気になったり、ミスをしたりするかわかりません。
 「大丈夫、今回は私に任せて。でも、もし私がダウンしたときは頼むね」というお願いをしておけば、貸し借りなし。とくに責任感の強い人は、文字通り心が「軽く」なるはずです。
 休むことは権利なのですから、みんなでこのちょい足しことばを言い合って、気持ちのいい職場にしてくださいね。

~以上、本文より引用~

 とくにここ数年は、新型コロナに感染したり、濃厚接触者になったりしたことで、過剰に「申し訳ない」という気持ちに苛まれた方も多いのではないだろうか。「私のときもよろしくね!」のひとことでギスギスした空気が和らぎ、「お互いさま」の気持ちを共有できる。

 また、ささいなミスや思い違いで落ち込んでいる人に対しては、「気にしないで」という声がけに「私もよくやるの」とフォローの「ちょい足し」を。「誰にでもよくある失敗だから」と相手の心の負担が軽くなり、あなたのやさしさや温かさが伝わるだろう。

 著者の今井さんは、「ちょい足しことば」には7つの「すてきな効果」があると言う。

1.「好印象」を与える
2.「会話」がどんどん続く
3.「聞き上手」になれる
4.「安心感」が湧いてくる
5.「満足感」が得られる
6.「信頼感」が育つ
7.自分も「楽」になり、「自信」と「品」が生まれる

 なにげないひとことに込められた相手への配慮そのものが「品」となり、好印象を与える。相手が心を開いてくれたら、自分の気持ちを率直に伝えることもできるようになるだろう。

『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』今井登茂子 著

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■今井 登茂子さんプロフィール
いまい・ともこ/東京生まれ。立教大学文学部卒業後、TBSテレビに入社。アナウンサーとして音楽番組から報道、スポーツ番組と第一線で活躍。1988年、放送貢献者に贈られる「ゴールデンマイク」賞を受賞。退社後「ことばによる自己表現」の重要性を広めることを目指し、人材教育を行う株式会社TJコミュニケーションズ「とも子塾」を設立、企業や団体の人材育成に携わる。『できる大人が使っている 社会人用語ハンドブック』(サンマーク出版)、『誰とでもラクに話せるコツ101――しんどいシーンをすべて解決!』(高橋書店)など著書多数。



  • 書名 さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳
  • 監修・編集・著者名今井 登茂子 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2023年1月10日
  • 定価1650円(税込)
  • 判型・ページ数四六判並製・264ページ
  • ISBN9784023322660

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