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「話し上手」になるには、福山雅治を参考に。なるほど! なその理由。

なぜか聴きたくなる人の話し方

 「秒単位で機転が求められる仕事だからこそ、簡単、シンプルで、自分をラクにもしてくれる方法しかありません」

 こう話すのは、ラジオDJとして25年間、第一線で活躍し続ける秀島史香(ひでしま ふみか)さん。本書『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版)は、そんな秀島さんがラジオ現場で培ってきた日常の聴く・話す場面で役立つ33のコツを1冊にまとめたもの。

 BOOKウォッチでは、『なぜか聴きたくなる人の話し方』のポイントを、書籍からの試し読みもあわせて3回に分けてご紹介。3回目は、「憑依が心のキャパを広げる 福山雅治さんの『近さ』の秘密」の試し読みをお届けする。

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 ラジオには、話す人が「素」になれる空気があるという。話す人と聴く人の心理的距離感の近さから、これまで知らなかった出演者の一面にふれることができ、新たな魅力に気づくことも。

 たとえば、福山雅治さん。秀島さんは福山さんのどこに一番の魅力を感じるのか。福山さんならではの、ある「力」とは?

―――

25 憑依が心のキャパを広げる


■福山雅治さんの「近さ」の秘密

(前略)

 言わずと知れた『福山雅治のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)は大人気の番組でしたし、1996年から担当してきた『福山雅治のSUZUKI Talking F.M.』(JFN系列)、それを2015年にタイトル変更した『福山雅治 福のラジオ』(同)、さらにはコミュニティ放送での実験的放送が人気を博し全国放送となった『福山雅治と荘口彰久の「地底人ラジオ」』など、長く愛され続けるラジオのレギュラー番組をお持ちです。

 甘い歌声に端正なルックス、正統派二枚目俳優の印象からは想像できない「下ネタ」や、芸人さんも真っ青になるレベルの爆笑トークは国民的「知る人ぞ知る」エンタメとして絶大な人気を誇ります。長年のファンはもちろん、若い世代に対しても「気さくなおもしろ兄さん」として、ますますファンを増やしています。

 一番の魅力は、やはりあれほどの大スターでありながら、聞いている私たちの隣にいるような「近さ」を感じさせてくれること。その独特の距離感は福山さんの「憑依力」によるものではないかと思っています。

 リスナーからの投稿を一人芝居仕立てにしたり、よき兄貴、頼れる人生の先輩として体験談を話してくれたり、男心もわかる女性「雅子」に憑依して雅子特有の言葉遣いでお悩み相談に乗ったり。

「あの福山さんが、そんなキャラに!」というサプライズとともに、向こうからこちらにぐぐっと近づいてくれたような感覚になります。それは日本を代表する俳優としての想像力・表現力・人間力があってこそ。贅沢で粋な番組だなぁと思います。


■相手の感覚を借りてくる気持ちで

 私がラジオで大切にしているのは、リスナーに対して「この人はどんな場所で、何をしながら聞いてくれて、どんな気持ちで反応してくれたのかな?」と想像を巡らせること。その人の"視線"の先にどんな世界が広がっているのだろう、と。福山さんのように「憑依」とまではいかなくとも、その人と自分を重ねて距離を縮めていくことにつながります。

 例えば、春、リスナーから、「今日、引っ越しします。モノを整理して、荷造りしていたら、気持ちも整理されました」といったメールをいただいたとき。私も想像の世界で、段ボールだらけの部屋へびゅーんとワープしてみます。

「ここにポスターの跡がある」「この床の傷は、あのときの......」などと、自分もその部屋の主になったつもりで、がらーんとした部屋を見回してみるというイメージです。

 このように相手の状況、その目に見えているのかなという景色、耳に入ってくるのかなという音など、できる限りの想像を働かせ、重ねてみることで、言葉が自然と湧いてきます。「この部屋でいろんなことがあったな......なんて、最後にちょっと感傷的になってしまうんですよねえ」というつぶやきのような感想が共感を呼ぶこともあります。

 もちろん、あくまで「私が想像した相手の気持ち」であることは忘れず、決めつけないことも大切です。


■憧れのあの人なら、どうする?

「憑依」といえば、尊敬する人の視線を"想像上で"借りてみるという方法も。

「あの人だったら、こんなとき、なんて言うだろう?」と自分がその人になったつもりで考えてみる。お手本にする人の価値観やスタイルの中に一時的にでも自分を置いてみる。

 これまでの自分の理想や「あるべき」の箱から意識的に出てみると、新鮮な一言、新しい発想のきっかけにもなります。

 さらに、自分が話している最中に一瞬相手に憑依して、聞き手になってみるという方法も。想像上でぐるっと相手と入れ替わって、相手の立場に立って自分自身をチェックするという感覚です。

 相手の表情や目線、返事などを観察しながら、「私のこの話、ちょっと長いかな? そろそろ切り上げようかな。例えは具体的でわかりやすいかな。楽しめているかな?」など。

「よい印象を与えたい」と自分だけに集中するのではなく、目指すは、自分以外の考え方や価値観にも目を向けられるバランス感覚。そんな人は、「なぜか、一緒にいると居心地いいなぁ」という雰囲気をまとっているもの。加えて、「あの人は話がわかりやすい」「意思疎通ができる」「言わんとすることがちゃんと伝わる」という印象にもつながります。

 さあ、ちょっと試しに、家族でも、友人でも同僚でも、一瞬だけその人に憑依するような気持ちで会話をしてみてください。自分とまったくタイプの違う人に対してもワンクッションが生まれ、「へー、そうなんだ」「それもありかもね」「まあ自分は違うけどね」「無理に押し付けたりしないけどね」と違いを認め、イライラせずに接することができますよ。

 人生も事情も、人それぞれ。一瞬でも誰かに憑依してみることで、自分が考えていた正解の範囲って結構狭いものだったな、と気づけるようになります。こういう経験をどれだけ持てるかが、人としての器の大きさにつながってくると思うんですよね。


【ここまで聴いてくれたあなたへ】
憑依すれば、物事が広く見えてくる。


―――

 聴く・話すって、こんなにも奥が深かったのか......。"耳だけ"で楽しめるように試行錯誤してきた、秀島さんならではの"伝える工夫"の数々。ラジオから声を聴いているような心地いい文章を読みながら、話し方をブラッシュアップして「聴きたくなる人」になろう!

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著者の秀島史香さん

■秀島史香さんプロフィール

 ラジオDJ、ナレーター。1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学在学中にラジオDJデビュー。J-WAVE『GROOVE LINE』、NHKラジオ『英語で読む村上春樹』をはじめ、NHK総合『着信御礼!ケータイ大喜利』『BSコンシェルジュ』などのテレビ番組にも出演。映画、テレビ、CM、アニメなどのナレーション、プラネタリウム、美術館音声ガイド、機内放送、EXILE『Ti Amo』や、絵本朗読CD『おとえほん』に参加するなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、JFN系列局『Please テルミー!マニアックさん。いらっしゃ~い!』、NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』などに出演中。ニッポン放送『文豪ROCK!~眠らせない読み聴かせ 宮沢賢治編』で令和元年度(第74回)文化庁芸術祭ラジオ部門・放送個人賞受賞。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』(朝日新聞出版)。ハスキーで都会的な声質、あたたかい人柄とフリートークが、クリエイターからリスナーまで幅広く人気。


※画像提供:朝日新聞出版


 
  • 書名 なぜか聴きたくなる人の話し方
  • 監修・編集・著者名秀島 史香 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2022年5月30日
  • 定価1,540円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・256ページ
  • ISBN9784023322561

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