周りから好かれる人は、聞き上手だ。
「そんなことわかってる。自分の話ばかりしないで、相手の話を聞けばいいんでしょ」と思うかもしれない。実際に、日頃から言いたいことをがまんして、相手の話を聞くよう心がけているという人もいるだろう。それなのに、「感じがいいな」という印象を持たれないのはなぜなのか。
実は、好かれる人は、ただ聞いているだけではない。あいづちを打つ時も、返事をする時も、たいてい「ちょっとしたひとこと」を加えているのだ。
普段の表現にひとことをプラスするだけで会話が盛り上がる、相手がうれしい気持ちになる、あなたの印象や信頼感が格段にアップする、そんなことばをまとめたのが今井登茂子さんの『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)だ。ここでは本書から、相手への共感の気持ちが伝わる「ちょい足しことば」を紹介しよう。
たとえば、企画書を作成した同僚や部下がこんなふうに話すのを聞いたら、あなたならどう返すだろうか?
「新しい意見やアイデアが次々と出てきて、やり直しの連続だったのです。」
「そうですか。お疲れさまでした」では、ちょっと冷たい気がする。「それはたいへんでしたね」と声をかければ、ねぎらいの気持ちは伝わるだろう。もう少し具体的に「たくさんの試行錯誤を重ねたのですね」と言えば、プロセスを理解してくれているんだ、と喜ばれるかもしれない。ただ、好印象を与えるにはまだ何かが足りない。
好かれる人はここに「ちょい足し」をする。それが「なるほど。」だ。
たくさんの試行錯誤を重ねたのですね。
↓
なるほど。
たくさんの試行錯誤を重ねたのですね。
いかがだろうか。ほんのひとことだが、相手は自分の骨折りに対して敬意を示してくれていると感じて、あなたの印象はぐんと上がるはずだ。
ただしこの「なるほど」は、使い方によっては「余計な一言」にもなりかねないので要注意。ここからは、効果的な使い方とNGな使い方について、本書から一部抜粋して紹介しよう。
~以下、第1章より一部抜粋~
相手の意見を「まず、理解しました」ということを表すときに、「なるほど。」はよく使われるあいづちです。短いひとことでも、「なるほど......。そういうことだったのですね」という具合に「より理解が深まりました」という感謝や尊敬の気持ち、感嘆の意まで込めることもできます。「なるほど!」と驚きを込めることもできます。
また、「なるほど、これまでの経緯はよくわかりました。では、これからどう進めるのがベストだと思われますか?」というように、「その先」を相手が話しやすくなるよう誘導する役割も。
便利なひとことではありますが、「なるほど。」は多用に注意。真面目に話しているのに「へえ、なるほどなるほど」と何度も繰り返されたら、人によっては軽く見られているように感じてしまうかもしれません。
また、年齢や経験が上の人に対して用いるなら「なるほど、勉強になります」「なるほど、よくわかりました」といった謙虚なことばをセットにしましょう。
~以上、本文より~
とくに目上の人に使う場合は、語尾を上げないように気をつけよう。上から目線でエラそうな印象を持たれてしまう。そしてもう一つ、「品と気づかい」を身につけたいなら注意したいことがある。
<「なるほどですね」という不思議な日本語は美しいことばづかいとは言えませんし、不快に思う人もいるでしょうから、避けるのが無難です。(本文より)>
あいづちの万能選手として使えるちょい足しことば。相手やシーンによって上手に使い分けよう。
本書ではほかにも、「共感・感想」「依頼・相談」「謝罪」など、シーンに合わせた100の「ちょい足し」フレーズを紹介している。恩着せがましくならず、さりげない気づかいを感じさせる「品のある話し方」をやさしく学べる良書だ。
『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』今井登茂子 著
■今井 登茂子さんプロフィール
いまい・ともこ/東京生まれ。立教大学文学部卒業後、TBSテレビに入社。アナウンサーとして音楽番組から報道、スポーツ番組と第一線で活躍。1988年、放送貢献者に贈られる「ゴールデンマイク」賞を受賞。退社後「ことばによる自己表現」の重要性を広めることを目指し、人材教育を行う株式会社TJコミュニケーションズ「とも子塾」を設立、企業や団体の人材育成に携わる。『できる大人が使っている 社会人用語ハンドブック』(サンマーク出版)、『誰とでもラクに話せるコツ101――しんどいシーンをすべて解決!』(高橋書店)など著書多数。
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