10月5日、俳優の藤木直人さんと木村佳乃さんが、早稲田大学国際文学館、通称村上春樹ライブラリーを訪れた。2人は、同館とAmazonオーディブル(以下、オーディブル)が共催したイベント『声で体験する村上春樹の世界を語る!』に登壇。MCにアーティストの坂本美雨さんを迎え、豪華メンバーによる座談会となった。
開館1周年を迎える村上春樹ライブラリー。翻訳版を含め、これまでに刊行された村上作品や関連書籍などおよそ3000冊を所蔵するほか、村上さんが寄贈した執筆関係の資料やレコード・CDなどを聴くこともできる。カフェを併設し、地下には村上さんの書斎を再現したスペースも。今回のイベントはライブラリーの象徴でもある「階段本棚」を下りたラウンジスペースを貸し切って開催された。
オーディブルでは現在、村上さんの10作品のオーディオブック化を進めている。藤木さんは配信1作目の『ねじまき鳥クロニクル』3部作の、木村さんは5日に配信スタートした『海辺のカフカ』上下巻のナレーターを務めた。
初めてライブラリーを訪れた2人。「たいへん興奮しております」と木村さんが言うと、早稲田大学出身の藤木さんも「卒業するとなかなか来る機会がなくて。でもこんな素敵な場所があるなんて」と感慨深げに周囲を見回す。
藤木さんは2014年、蜷川幸雄さん演出の舞台『海辺のカフカ』に出演。翌年にはワールドツアーでニューヨーク、ロンドンなど4都市での公演に参加している。今回、当時使われた舞台装置が後ろに置かれているのを見て、「まさか再会できるとは思ってなかったので、めちゃくちゃ感動してます」とコメント。坂本さんに「海外の方の反応はいかがでしたか?」と問われると、「とにかくドッカンドッカン笑うんですよ。新喜劇でもやってんのかな、みたいな」と笑い、日本の観客との違いが新鮮だったと振り返る。
一方の木村さんは、小学5年生の時に『ノルウェイの森』に出合って以来、新刊が出るたびに書店に並ぶほどの村上ファンだ。「当初は正直、意味がわからないところもあったんですけど、高校生か大学生くらいになってから読み返して『なるほど、こういうことだったのか』と理解しました」と語る。
今回、オーディブルから朗読のオファーがあった時は、嬉しさと同時に不安も大きかったという木村さん。なにしろ15歳の少年「カフカ」から老人「中田さん」や猫まで、老若男女のさまざまな役柄を1人で演じなければならない。「でもやっぱりファンなので」、やらずに後悔するより「とりあえずチャレンジしよう」と決心したと明かした。
木村さんが朗読した『海辺のカフカ』は上下巻とも再生時間が15時間半超。藤木さんの『ねじまき鳥クロニクル』は「第1部 泥棒かささぎ編」が11時間23分、第2部「予言する鳥編」が12時間10分、「第3部 鳥刺し男編」は17時間8分という、かなりの長編だ。
自分を「せっかち」だという藤木さんは3冊の収録を17日間で終えたという。「見開きでプリントアウトされた紙を僕、数えたんですよね。そしたら1600枚くらいあって。1日80枚、いやもうちょっとやろうと、100枚を6、7時間で読んでいました」と言うと、「それすごいですね! すごい集中力と体力だと思います」と木村さん。「私は1日10ページくらい」と遠慮がちに話すと、「ちょ、ちょっと待って。1日で10ページ?! 『カフカ』だって相当長いでしょ?」と藤木さんが唖然とする一幕も。
朗読スタイルは大きく異なる2人だが、「難しかった」と声を揃えたのがアクセントだ。
「普段なまっているつもりもないんですけど、平坦な調子になってしまったり、読み間違えちゃったりしているうちに、正しいアクセントってなんだっけ?ってなってきて...」と藤木さんが言うと、「私は『ぼく』で引っ掛かりました」と木村さん。「ぼ」を高く発音するか、平板な調子で発音するかで悩んだという。
その後、会場には2人の朗読が流れた。木村さんによる『海辺のカフカ』からは主人公の少年カフカの一人語りと、記憶を失った老人「中田さん」と猫との対話のシーンを、藤木さんによる『ねじまき鳥クロニクル』からは、主人公が16歳の少女「笠原メイ」と出会う場面と、戦争体験を独白する「間宮中尉の長い話」をピックアップ。まったくキャラクターの異なる人物を声だけで演じ分ける2人の朗読に、参加した人々は一点を見つめたり、目を閉じたりして聞き入り、思い思いに村上ワールドに浸っていた。
とくに「中田さん」が大好きだという木村さんは、文章からイメージを膨らませ、笠智衆さんや志村喬さんなど名優の姿と重ねて読んだという。
一方、藤木さんは「50のおっさんが16歳の少女を読むところをピックアップするなんて、罰ゲームですよ」とおどけながら、「笠原メイという、ただの"16歳の女の子"じゃない独特なキャラクターを表現するのは難しかったですね」と語った。
最後にMCの坂本さんから「オーディオブックの魅力とは?」と問われた木村さんは、「何回も読んでいる本でもまた違う発見があったり、登場人物や風景を自分の好きなように想像したりする楽しみがあると思います」と締めくくった。
木村さん朗読の『海辺のカフカ』と藤木さん朗読の『ねじまき鳥クロニクル』はそれぞれオーディブルの作品詳細ページから試聴・購入できる。
また、村上春樹さんの『職業としての小説家』(ナレーター・小沢征悦さん)、『螢・納屋を焼く・その他の短編』(松山ケンイチさん)、『神の子たちはみな踊る』(中野大賀さん)、『東京奇譚集』(イッセー尾形さん)も配信中だ。
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