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ペットが"看取る" 特別養護老人ホームの感動実話に涙が止まらない

 ペットの愛情が、幸せな最期を迎えさせてくれた。ペットと入居できる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)で実際に起こった出来事を施設長自らがつづった『看取り犬・文福 人の命に寄り添う奇跡のペット物語』(宝島社)には、そんなエピソードがたくさん詰まっている。

画像は、『看取り犬・文福 人の命に寄り添う奇跡のペット物語』(宝島社)
画像は、『看取り犬・文福 人の命に寄り添う奇跡のペット物語』(宝島社)

 ホームの看板犬・文福(ぶんぷく)は、保健所で殺処分されそうだったところを引き取られた。誰に教えられたわけでもないのに、不思議と入居者の最期を察知して寄り添い"看取る"行動を繰り返している。

 「さくらの里山科」では、100名の入居者のうち、年間30名以上が亡くなるという。本書では、文福を中心に、癒やしの力を持つ猫のトラなど、入居者とペットたちを主人公とした17編のエピソードが収録されている。ペットを遺して入居者が先立つこともあれば、その逆もある。

 ホームには約20匹の犬と猫が自由に暮らしている。自分が飼っている犬や猫を連れて入居する人だけでなく、もう一度、動物と暮らしたいと希望して入る人もいる。

 日常的なペットとのふれあいが高齢者の心と体の健康に寄与する、アニマルセラピーの効果を示すエピソードもある。認知症で話をすることができなかった人が、大好きな犬と暮らすようになり、家族とまた話せるようになったケースや、余命3カ月の状態で入居した人が、それ以上に長くペットと笑顔で暮らすことができた例など、職員も驚いたという話は本当に奇跡のようだ。

 入居者もペットも高齢で、別れの時が迫っていると思うと切ないが、本書からは、最期の時をペットと過ごす幸福感が伝わってくる。

 文中で紹介された、世界中のペット愛好家のあいだで広く知られる「虹の橋」という伝説によると、亡くなったペットたちは、天国の手前にある虹の橋で楽しく過ごしながら、飼い主との再会を待っているという。その「虹の橋」からのエールを職員たちも感じる瞬間があるそうだ。死をも超える強い絆は、確かに存在する。そう信じられる感動のエピソードは、何度読んでも涙が止まらない。

 本書は2019年7月に出版されたが、版元の倒産によりわずか4カ月で廃刊となった『看取り犬・文福の奇跡』を再編集したもの。新編と後日譚を加え、表紙も一新した。表紙のイラストは『星守る犬』の漫画家、村上たかしさんが描き下ろした。
 

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