歴史を変えたのは「魔女」か「女神」か?
知られざる女性ヒーローたちを掘り起こす!
2023年5月17日、歴史小説家の黒澤はゆまさんの新著『世界史の中のヤバい女たち』(新潮社)が発売された。
世に男のヒーローの話は数多く語られ、出版もされているが、女のヒーローの話はまだまだ数が少なく、あっても善良さや自己犠牲ばかり強調されている「女神」的なキャラクターであることが多い。
男の子には残酷な世界でサバイブするための同性のモデルがたくさんいるのに、女の子にはそれがないのは不公平かもしれない。世の中にこれから出て行く女の子、もう出てしまった女の子たちに、同性のヒーローたちのこと、それもジェンダーの色眼鏡から自由な姿を持つ、「魔女」たちのことを知ってほしい――。
本書は、黒澤さんのそんな想いから生まれた。長い人類の歴史の中で、強い男はヒーローと呼ばれ、強い女は魔女と呼ばれてきた。復讐の鬼と化したウクライナ聖人から、民を戦乱の世から救った中華最強の悪女まで、その強さゆえに迫害された魔女たちの活躍と、男性を中心に作られた歴史の裏に隠されてきた素顔に迫った1冊だ。
本書で紹介される魔女の1人に、アステカ王国を滅ぼした17歳の少女・マリンチェがいる。15世紀にメキシコ高原一帯を支配していたアステカ王国は、1521年にスペインによって征服され滅亡したとされる。このきっかけを作ったのがマリンチェだった。
彼女はアステカ帝国の貴族の家に生まれたが、父親の死後、別の男性と再婚した母親によって奴隷として売られてしまった。世界への恨みを募らせていたマリンチェは、スペインからやってきたコルテスの心を捉え、アステカ王国を滅亡へと導いたという。
マリンチェはただ美しいだけでなく、語学の才能に優れていた。たちまちスペイン語を覚え、現地の人にコルテスの言葉を伝える通訳として活躍し、いつしか「神の通訳」と呼ばれるようになった。もし、彼女が奴隷にされず貴族として穏やかに暮らしていたら、アステカ王国はスペインの手に落ちず、現在も存続し続けていたかもしれない。
【目次】
はじめに
第一章 すべての女性が望むことは 魔女ラグネルの結婚
すべての女性が望むこと」その謎を解くべく、アーサー王は醜い魔女と部下ガウェインを結婚させる。世界中に残る「魔女」の逸話に隠された史実とは。
第二章 アステカ王国を滅ぼした女 神の通訳マリンチェ
世界最大の都市を廃墟へ追い込んだのは十七歳の少女だった! 実母に売られ、後にスペイン人征服者コルテスとの間に史上初めてのメスチーソを産んだ女の一生。
第三章 男を犯して子をなす 女戦士部族アマゾーン
狩猟の女神アルテミスを崇拝し、武装した女だけで構成されたアマゾーンの部族。ギリシャ神話にも描かれる、女と男が逆転した世界は実在した。
第四章 早馬を駆る 女騎手・すみとスミス
二十世紀前半、女性が騎手として活躍するなどありえなかった。馬を駆るため、さらしを巻き、男装して騎手を目指した二人の女性の儚い夢と希望。
第五章 戦場の女 ジャンヌ・ダルクの百年戦争
フランスを勝利に導き、それ故魔女として火あぶりにされたジャンヌ・ダルク。男社会の序列を撥ね除け、「女と戦争は素人こそ恐ろしい」を二重に体現した人生とは。
第六章 女性として根絶できない部分 独ソ戦と女性兵士たち
独ソ戦に戦力として投入された女性はどのように生き延びたのか。戦場に身を投じながらも、最後まで戦いに染まらなかった「女」の想いと生涯。
第七章 敵はとことんやっつけるもの ウクライナの聖人オリハ
愛する男を殺されたオリハは復讐を決意する。四度にわたる復讐と多くの死体の上に築かれた東スラブ最初の国。
第八章 残忍な女戦士 偉大な女王ンジンガ
十六世紀アフリカで、宿敵ポルトガルと戦い数十人の男たちをかしずかせた女王。残忍な交渉術を駆使し、六十歳を超えてなお闘い続けた女傑が最後に求めたものは。
第九章 苦しむ人のために戦い抜く 冷徹な天使ナイチンゲール
優しい「白衣の天使」は、その実自分にも他人に対してもストイックすぎる女性だった。彼女を支えた四人の騎士たちのエピソードから見えた意外な素顔。
第十章 非情剛毅を貫いた皇后 中国三大悪女・呂后
ろくでなしの夫を皇帝の地位に座らせ、わが子にその座を渡すために孤軍奮闘した呂后。権力を取り巻く闘いの中で、男尊女卑の中国社会に彼女がもたらしたものとは。
おわりに
■黒澤はゆまさんプロフィール
くろさわ・はゆま/1979年生まれ。歴史小説家。著書に『劉邦の宦官』『九度山秘録』『なぜ闘う男は少年が好きなのか』『戦国、まずい飯!』『戦国ラン 手柄は足にあり』などがある。好きなものは酒と猫。
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