毒草は太古の昔からおそれられ、魔女や悪魔などにまつわる数々の伝承が語られてきた。
触れてはいけないし、絶対に食べてはいけない。けれど、そんな"禁断"に心惹かれてしまうのも、また事実だ。『禁断の毒草事典 魔女の愛したポイズンハーブの世界』(グラフィック社)は、毒草の民間伝承に触れ、どのように人体に作用しどのようにおそれられてきたのか、その世界をひもとく一冊だ。
たとえば、「魔女の軟膏」という伝説がある。その軟膏を塗ると、空が飛べるようになるという代物だ。もちろん根も葉もないフィクションだが、伝えられている軟膏づくりのレシピには、種々の毒草の名前が挙がっている。
軟膏の材料にある「ヨウシュトリカブト」は、世界で最も毒性の高い植物の一つだ。皮膚に触れるだけで精神に強く作用してせん妄を引き起こし、万が一摂取すれば、ほんのわずかな量であっても死に至る。たいへん危険な植物だが、古い時代には堕胎剤として使用されたこともあった。
同じく軟膏の材料の一つ「ベラドンナ」も猛毒をもち、大人は実10粒ほどで死んでしまう。子どもの致死量はもっと少ない。12世紀の修道女ヒルデガルト・フォン・ビンゲンも、ベラドンナについてこのように書き残している。
「人間がこの植物を飲み食いするのは危険だ。というのも、我々の精神に作用して、結局は命を奪うからだ」
このほかにも、聖なる花と考えられたスズランや、黒魔術の礼拝で焚かれたチョウセンアサガオ、私たちにも身近なジャガイモやタバコまで本書では紹介されている。古文書のような美しいイラストを見ているだけでも、なんだかどきどきしてきそうだ。
第1章 毒草入門
(なぜ毒草についての本を書くのか?/そもそも毒とは?/毒草はミツバチにも毒?/毒草のその他の利点/毒草はどこで手に入る?/毒草の正しい採取法)
第2章 毒草カタログ
(ヨウシュトリカブト/ベラドンナ/セイヨウオニシバリ/アラビカコーヒーノキ/イヌサフラン/シクラメン・プルプラセンス/シロバナヨウシュチョウセンアサガオ/ジギタリス・プルプレア/ホルトソウ/ヨウシュクサノオウ/ドクニンジン/ヨーロッパイチイ/ドクムギ/ヒヨス/ドイツスズラン/ジャガイモ/アマドコロ/カイソウ/タバコ/バイケイソウ)
付録(参考文献/索引)
著者:エリカ・ライス
生物多様性の豊かさで知られるドイツ、シュヴァルツヴァルト出身。母の影響で、ごく幼い頃から植物に興味を持ち始め、パリで薬用植物療法と薬草販売業を学んだのち、薬草販売店を立ち上げる。その後、フランス北部ピカルディー地でオーガニック農法による栽培を行いながら執筆活動を行う。
監修:和田浩志(ワダ・ヒロシ)
東京理科大学薬学部修士課程修了。2020年まで東京理科大学で教鞭を執る傍ら、『小学館図鑑NEOシリーズ 植物』など多くの植物関連の書籍を執筆監修。現在は昭和薬科大学薬学部にて非常勤講師、公益社団法人東京生薬協会委員。専門は薬用植物学、天然物化学。
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