世界の水底には、船や建築物、街など、太古の暮らしを現代に伝える遺跡や物品が眠っている。遺跡群を追って、そこに残された品々を調査すると、当時の暮らしや、文化が姿を現し始めるのだ。2月6日発売の『図説 世界の水中遺跡 水底に眠る「時の証人」を求めて』(グラフィック社)は、美しく、かつ貴重な多数の水中写真によって、「水の中の世界史」の真実に迫る一冊だ。
王族が暮らした宮殿、かつて栄えた街、大量の積荷を積んで海を渡った巨大な輸送船など、現在も世界中の海や湖の底には、当時の繁栄の証を示すたくさんの「水中遺跡」が沈んでいる。本書には、そういった歴史の生き証人のカラー写真と、それぞれの発掘や引き上げに携わった研究者や写真家たちの解説で紹介していく。かつてないスケールの写真、一般向けとしては類を見ない「水中遺跡」に特化した壮大な遺跡図鑑となっている。
例えば、エジプト古代港市の盛衰幻のヘラクレイオン、トーニスの謎「トーニス・ヘラクレイオン遺跡/アレクサンドリア港海底宮殿」や、メキシコの洞窟水底に、人類痕跡を探す「ユカタン半島水中洞窟」、他にもギリシアの世界最古のコンピューター「アンティキセラ島の海底遺跡」、イタリアの海底遺跡ミュージアムー海に沈んだロ-マの街ー「バイア海底遺跡」、そして太平洋戦争・沖縄戦を語る水中遺跡「USSエモンズと日本軍特攻機」など、それらはすべて「時の証人」となるのだ。
エジプト古代港市の盛衰幻のヘラクレイオン、トーニスの謎「トーニス・ヘラクレイオン遺跡/アレクサンドリア港海底宮殿」(エジプト)目次は下記の通りである。
第1章
古代地中海/ウルブルン沈没船、死者の船と神殿柱の船遺跡、黒海の難破船など
第2章
先史~有史の水没遺跡/琵琶湖粟津湖底遺跡、ユカタン半島水中洞窟、ポートロイヤル(パイレーツオブカリビアンの元になった水底の街)など
第3章
海上シルクロードとアジア海上商業時代の水中遺跡/九州・鷹島海底遺跡、沖縄・海上交易関連の海底遺跡、タイ・バンカチャイ沈没船など
第4章
大航海の歴史と失われた帆船/メアリーローズ号博物館、サン・ディエゴ号、開陽丸、沖縄の西欧沈没船遺構群 他
第5章
近代海戦と水中文化遺産/パラオで沈んだ日本戦、ドイツのUボート、マルタ島沖のボウファイター 他
また関連書籍も、併せてチェックしておこう。
■小野林太郎(オノ・リンタロウ)さんプロフィール
上智大学院地域研究専攻より博士号(地域研究)取得。日本学術振興会特別研究員、日本学術振興会海外特別研究員、東海大学海洋学部准教授等を経て、現職。
主な著書に『海域世界の地域研究:海民と漁撈の民族考古学』(京都大学学術出版会)、『Prehistoric Marine Resource Use in the Indo-Pacific Regions』共編著(ANU E Press)、『環境と資源利用の人類学―西太平洋島嶼の生活と文化―』共著(明石書店)、『オセアニア:海の人類大移動』共著(昭和堂)、『地域の多様性と考古学:東南アジアとその周辺』共著(雄山閣)など。
■木村 淳(キムラ・ジュン)さんプロフィール
フリンダース大学大学院博士課程修了。博士(Doctor of Philosophy)。マードック大学アジア研究所研究員、シカゴ・フィールド自然史博物館研究員を経て、東海大学海洋学部海洋文明学科特任講師。
著書に『海洋考古学入門』(東海大学出版部)など。
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