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ゾウの鼻はなぜ長いのか、考えたことはありますか?

ゾウが教えてくれたこと

 大きくて、鼻の長~いゾウ。ゾウの姿も名前も知らないという人はいないだろう。では、ゾウがどんなルーツで今の姿になり、どんな知能をもち、どう暮らしているのかご存じだろうか?

 知っているようで、意外と知らないゾウの生態。『ゾウが教えてくれたこと ゾウオロジーのすすめ』(化学同人)に、そんなゾウのすべてが書いてある。教えてくれるのは動物行動学の研究者、入江尚子さんだ。知られざるゾウの世界を、少しだけご紹介しよう。

ゾウの鼻が長いのは、「ヒトでいう手」だから

 ゾウといえば長い鼻。では、ゾウの鼻はなぜあんなに長くなったのだろうか? はっきりとした正解はわかっていないが、入江さんは「ヒトの手と同じではないか」と考えている。餌をつかんで食べたり、他のゾウに触ったりと、まるでヒトの手のような役目を果たしている。ゾウは重い頭を太く短い首で支えていて、どうしても頭部の自由がきかないぶん、鼻の動きでおぎなっているのではと入江さんは言う。

 使い方だけでなく、いつも同じ方向に巻きつけるという利き手ならぬ「利き鼻」、さらには赤ちゃんが指しゃぶりならぬ「鼻しゃぶり」をするという点まで、ゾウの鼻とヒトの手はよく似ているのだ。

仲間に「同情」するゾウ

 大きな脳をもつゾウ。動物のうち体重と比べた脳の大きさは、1位がヒト、2位がイルカ、ついでほぼ同率3位がゾウとチンパンジーだそうだ。だからゾウは動物のなかでもかなり知能が高く、社会性も高い。

 入江さんは本書で、ゾウの「同情心」の事例を紹介している。同情とは、他人の気持ちを察し、共感し、相手の求めていることが何かを把握すること。家族や友人のために何かをしたり、困っている誰かに寄り添ったりするような、ヒトがもつ同情心を、実はゾウももっているのだ。

 2008年に発表された、過去35年間の観察事例をまとめた論文で、以下の7種類の「同情」行動が報告された。
   1.他個体へ攻撃するとき、おとなのゾウ同士が協力する。
   2.子ゾウや弱っているゾウを擁護する。
   3.泣きわめく子ゾウをそっとなだめる。
   4.孤児や迷子の面倒をみる。
   5.はぐれたわが子を取り返しに行く。
   6.起き上がれない子ゾウや川・穴に落ちた子ゾウなどを助け、動作を補助する。
   7.体についた異物を取り除いてあげる。
 自分よりも弱い存在を守り、助けようとする、ゾウ社会のあたたかさが伝わるだろうか。「同情」行動の事例は、親子間だけでなく、血縁のないゾウ同士にもみられた。それだけ仲間思いで、社会性の高い動物だということだ。

無口に見えて、実はおしゃべり

 ところでゾウの鳴き声といえば「パオ~ン」だが、これはヒトでいう悲鳴のようなものらしい。ゾウは普段10~20ヘルツの、とても低い音を出してコミュニケーションをとっているそうだ。だから私たちから見るとゾウは無口に見えるが、低周波の音をとらえる機械で観測すると、ゾウたちがかなりぺちゃくちゃしゃべっていることがわかる。

 それどころか、低周波の音は数キロメートル、条件がよければ数十キロメートル先まで届く。ゾウの群れに発信器をつけて動きを追うと、遠く離れた群れ同士が同調しあって動いていることもあるそうだ。

 私たちヒトと似た感覚も、ヒトが知ることのできない感覚ももちあわせている、ゾウという生き物。ちょっと興味深くはないだろうか。ほかにも、足し算をしたり絵を描いたりと、ゾウの驚きの能力が本書で紹介されている。大きな背中の向こうに広がる、知られざるゾウの世界を旅してみてはいかがだろう。

■入江尚子(いりえ・なおこ)さんプロフィール
 大阪府生まれ。幼いころより動物に囲まれて暮らす。2001年、東京大学に進学し、動物行動学を学ぶ。2010年、アジアゾウの足し算能力の研究で、同大学博士号(学術)取得。現在、駒澤大学および立教大学兼任講師。犬やインコ、カメなどたくさんの生き物に囲まれながら、長女の育児に奮闘中。著書に『ゾウと ともだちになった きっちゃん』(絵・あべ弘士、福音館書店)がある。

※画像提供:化学同人


  
  • 書名 ゾウが教えてくれたこと
  • サブタイトルゾウオロジーのすすめ
  • 監修・編集・著者名入江 尚子 著
  • 出版社名化学同人
  • 出版年月日2021年12月27日
  • 定価1650円(税込)
  • 判型・ページ数B6判 ・190ページ
  • ISBN9784759816907

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