創元社から好評発売中の『アルケミスト双書 闇の西洋絵画史』シリーズ。教科書には載っていない西洋美術の「闇」を取り上げた、妖しくも美しい西洋絵画史を紹介している。
第1期【黒の闇】篇では、『悪魔』『魔性』『怪物』『髑髏』『横死』の5巻が刊行されている。そして2022年1月19日には第2期、『天使』『美童』『聖獣』『楼閣』『殉教』の5巻が発売予定だ。
著者は、編集者で評論家の山田五郎さん。東京国立博物館の評議員も務め、西洋絵画に造詣が深い。西洋絵画の「ダークな部分」を集めたのは、「闇の部分を見なければ、光が見えてこないから」だと言う。
たとえば「天使」。雲間から光が差し、天使が舞い降りてくるような、やわらかい「光」のイメージがあるが、本書に掲載されているのは、「闇」の部分。「はじめに」では、こう紹介されている。
天使というと全てを許し優しく見守ってくれる存在をイメージしがちです。けれども少なくとも聖書に登場する天使たちは、そんなに甘くはありません。彼らは文字通り天=神の使いだからです。
キリスト教の神様は、人々を守り導いてくれるだけでなく、時には理不尽なまでの試練と罰をお与えになります。それを遂行するのが天使の役目。彼らは神の御心を地に行う、いわば警察官であり兵士です。
そんな天使は、人の死を宣告したり、街を焼き払ったり、時に世界を滅ぼすような行いもする。やっていることは悪魔となんら変わりはないが、「神のご意志」という大義名分があるだけに、悪魔よりもむしろ恐ろしいと言えるかもしれない。
そんな風に見ていくと、これまで何とはなしに見ていた西洋絵画がまったく別の意味を持ち始め、その世界に引き込まれていく。
1冊あたり、だいたい70作品を掲載。コンパクトで瀟洒な造本で、本棚に並べておくだけでもアートになる。山田さんによる、ユニークな切り口の解説も読みごたえがある。
本シリーズを創元社のホームページで予約すると、オリジナル特典として、(1)セット収納用美麗箱(2)オリジナルトートバックがプレゼントされる。気になる方は、要チェックだ。
聖書を学びたい人や、じっくりと西洋美術に向き合いたい方にオススメ。本書を読んでから美術館に行くと、さらに深く作品に触れることができそうだ。
■山田五郎さんプロフィール
1958年、東京都生まれ。編集者・評論家。東京国立博物館評議員。AHS(英国古時計協会)会員。上智大学文学部在学中にオーストリア・ザルツブルク大学に1年間遊学し、西洋美術史を学ぶ。卒業後、講談社に入社。『Hot-Dog PRESS』編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。現在は時計、西洋美術、街づくりなど幅広い分野で講演、執筆活動を続けている。『ぶらぶら美術・博物館』(BS日テレ)、『出没! アド街ック天国』(テレビ東京)など、テレビ・ラジオの出演も多い。主な著書に『知識ゼロからの西洋絵画入門』『知識ゼロからの西洋絵画史入門』『知識ゼロからの西洋絵画 困った巨匠対決』『知識ゼロからの近代絵画入門』(以上、幻冬舎)、『ヘンタイ美術館』(共著・ダイヤモンド社)、『へんな西洋絵画』(講談社)など。YouTubeチャンネル「山田五郎 大人の教養講座」は、登録者数30万人超え(2022年1月時点)と大人気。
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