西洋美術では、伝説や神話にまつわるモチーフが多く使われている。その意味を知っておくと、絵画鑑賞がもっと楽しくなるに違いない。
2021年3月18日『暗号(アトリビュート)で読み解く名画』(世界文化社)が発売された。本書では、西洋美術にちりばめられている「アトリビュート」を解説していく。
<アトリビュートとは?>
西洋美術において伝説上・歴史上の人物または神話上の神と関連付けられた物。その物の持ち主を特定する役割を果たす、持物(もちもの・じぶつ)のこと。
実は、17世紀には西洋でもこのようなアトリビュートを解説した本が出版されていたという。文化や歴史が異なる日本の鑑賞者にとって西洋美術の表現しているものがわかりにくいのも無理はない。
本書では、西洋美術をより深く理解するためにアトリビュートの中から主要なものを紹介し、来歴や寓意的な意味を解説していく。
では、本書で紹介されているアトリビュートの例を紹介していこう。
「書物」は豊富な知識と知恵、博学の人々を示すアトリビュートだ。
ロココ期の画家ブーシェの作品『ポンパドゥール侯爵夫人』で、書物が並んだ部屋で夫人が本を手にしているのは、百科全書の編纂に協力した彼女の高い知性を強調するためだという。
宗教画においては、「受胎告知」の場面によく描かれる。これは「受胎告知」の際、聖母マリアが旧約聖書を読んでいたといわれることに由来する。この伝説にちなんで、書物が彼女のアトリビュートとなった。
また、本は律法(りっぽう)、神学の象徴ともみなされ、神学者や使徒(しと)などの多くが本を手にした姿で描かれる。
「鹿」はその優美な姿形から、世界各地で神の使いとして神聖視されてきた。
鹿は誠実な愛の象徴とされたほか、すばしこく敏感なことから、聴覚や賢明の象徴とみなされるなど、好ましいイメージで描かれる。
神話画では月と狩猟の女神アルテミス(ディアナ)のアトリビュートとして有名だ。これは狩人のアクタイオンが ディアナの水浴を見たため鹿に変えられ、自分の猟犬に八つ裂きにされた逸話に由来する。
さらに、キリスト教絵画では、鹿の角の間に光る十字架を見てキリスト教に改宗したという聖エウスタキウスの持ち物にもなった。
絵画でさりげなく描かれているモチーフに、こんなに深い意味が込められていると初めて知った。他にも下記のアトリビュートも紹介される。謎めいたキーワードが満載だ。
● 猫は悪魔の化身、兎は肉欲の象徴?
● 鍵を持つ人物は初代ローマ教皇!
● 空にかかる虹は神と人類をつなぐ契約の証!
● 燃える心臓は篤き信仰の証!
● 蠅 醜い生き物の象徴ながら、なぜか大人気の虫
● 釘を打たれた車輪は、聖女カタリナの目印! など。
監修は、帝京大学文学部および大学院文学研究科の教授で、群馬県立近代美術館館長も務める岡部昌幸さん。『すぐわかる作家別西洋絵画の見かた』 (東京美術)、『迷宮の美術史 名画贋作』『盗まれたダ・ヴィンチ』など、素人にもわかりやすく西洋絵画の鑑賞のコツを解説した著書が人気だ。
本書は深く美術鑑賞をするには必携の1冊。アトリビュートを学んで、絵画を読み解くような鑑賞法を楽しんでみてはいかがだろうか。
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