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鬼の正体は死体だった? 現役医大生が、科学でオカルトを斬る。

呪いを、科学する

 日本は「呪い」大国だ。映画『リング』や藁人形といった「呪い」のイメージが広く定着し、合格祈願や願掛けなどの呪術的な行為も当たり前に存在する。『呪術廻戦』、『鬼滅の刃』など呪いや怪異をモチーフにした作品も人気を博している。

 人々は「呪い」を恐れ、同時にその魅力に惹きつけられてきた。でも、その「呪い」の正体とは何なのだろうか? 実は、あらゆる「呪い」は科学で説明ができる。

 呪いの人形、華麗なる一家の呪い、鬼や河童、超常現象など、日本や世界各地のあらゆる「呪い」を科学で解き明かす『呪いを、科学する』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が発売された。著者はなんと現役医大生の中川朝子さん。第17回出版甲子園で準グランプリを受賞した作品だ。


 本書の中から、日本の代表的な怪異の一つ、「鬼」についての考察をみてみよう。

 鬼は鬼ごっこや節分の豆まき、『鬼滅の刃』など、怪異の中でももっとも日本人にとって身近な存在だ。「鬼」という名称は、平安時代にはすでに定着していたという。当時の絵巻物には、赤色や青色、黒色などさまざまな肌の色の鬼が登場している。

 鬼の特徴といえば、「大きな体」と「派手な肌色」だろう。鬼と言われれば、誰もが大きな体の赤鬼や青鬼を思い浮かべるはずだ。では、鬼はなぜこのような姿をしているのだろうか?

 本書で解説されているのは、「鬼=死体」説だ。時間の経過とともに外見が変化した死体が、鬼と見間違えられたのだという。

 死体の変化の過程はこうだ。死体は腐敗で発生したガスで膨らみ、巨大化する。そして肌は、まず色素が変性して青色に変化する。次に、ヘモグロビンが崩壊して赤色になる。さらに腐敗が進むと徐々に黒ずみ、やがて白骨になる。

 昔は飢餓が多く、死体の処理方法も確立されていなかったため、行き倒れて放置されたままになっている青色や赤色の死体を見て、人々は「鬼だ」と思ったのではないかという説だ。中川さんは、「ひょっとすると、健康な人々を死体へ近寄らせないために『鬼は恐ろしいものだ』という言い伝えが広まった」のかもしれないと考察している。

 本書では他にも河童やブードゥー人形、ハプスブルク家の呪い、予言やUMAなど、あらゆる「呪い」や超常現象の正体を解説。さらに、かつては「呪い」だと恐れられていた病気を科学的に説明し、偏見を生まないための正しい認識を与えている。パンデミックを冷静にとらえるためにも有効な本だ。

 怪異をバッサバッサと斬っていく中川さんは、さながら科学という日輪刀を持って鬼に立ち向かう剣士のよう。オカルトチックな夢は真っ二つに斬られるが、新たな知的好奇心がムクムクと湧いてくる一冊だ。

本書の目的は、不気味なもの、理解できないものとされてきた
各種事象に対する偏見を、
科学の力によってなくしていくことです。
「呪い」は、悪ではありません。
今までの摩訶不思議な怪奇現象と決別し、
新たな呪いの楽しみ方を探っていきましょう。
(本文より)

【目次】
まえがき
第1章 「外」の呪い
第2章 「内」の呪い
第3章 「未知」の呪い

【著者情報】
中川朝子(なかがわ・あさこ)
2000年生まれ。大阪府出身。現役医学部生。医学部進学を機に小説を書き始める。大学で学んだ専門知識を土台として、純文学・SFの設計を試みる。第8・9回日経星新一賞学生部門優秀賞受賞。第39回大阪女性文芸賞受賞。第17回出版甲子園準グランプリ受賞。


※画像提供:ディスカヴァー・トゥエンティワン


   
  • 書名 呪いを、科学する
  • 監修・編集・著者名中川朝子 著
  • 出版社名ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 出版年月日2022年7月22日
  • 定価1210円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・200ページ
  • ISBN9784799328804

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