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推し沼、不倫沼、コロナ警察沼。「沼」にはまるって幸せ? それとも......

沼にはまる人々

 今「沼」という言葉が注目されている。あなたも「推し沼」「沼落ち」といった言葉を聞いたことがあるのではないだろうか。NHK Eテレでは、「沼」をタイトルに冠した番組『沼にハマってきいてみた』が放送され、人気を集めている。

 あなたは、何かの「沼」にはまっているだろうか? 外出自粛期間中に、ネット上などで「沼」に出合ったという人もいるかもしれない。今まさに夢中な「沼」がある! という人にも、何にもはまっていないけれど「沼」がどんなものか気になる......という人にも、おすすめの本がある。これまで500人以上を取材してきたライターの沢木文さんが、選りすぐりの「沼」体験談を集めてまとめ上げた、『沼にはまる人々』(ポプラ社)だ。

 本書に登場する「沼」は、「推し沼」「占い沼」「ラーメン沼」といった身近な沼から、「肉体改造沼」「不倫沼」「仕事放棄沼」など「それって大丈夫?」と思ってしまう沼まで、多種多様だ。

 そもそも「沼」とは何なのだろうか? 本書では、次のように説明されている。

 2016年あたりから、SNS上のネットスラングで「沼にはまる」という言葉を目にするようになった。
 文脈から判断すると、ゲームやアイドルなど、何かにはまってしまい抜け出せない状態になることを指していることがわかる。

 沢木さんは、そんな「沼」にはまった人々を、「どこかキラキラとした雰囲気をまとい、少々自慢げ」な様子だと観察している。「沼」には人生の充足や幸福があり、「沼」にはまって何かを追求することが「カッコいいこと」「憧れ」になっていると言うのだ。

 依存症との違いはそこにあると、沢木さんは分析する。つまり、何かに依存している人は自分を「カッコいい」「幸福で充足している」とは思っていない。しかし、「沼」には、カッコよくてキラキラした「幸福」があるのだ。

 本書では「沼にはまった人々」の実例について紹介していく。依存でもなく、日常生活も維持できているが、そこはかとない「危うさ」がある。

 本書では、「睡眠薬沼」「セックス沼」「買い物沼」など、一見すると「それって依存症では......?」と思ってしまう事例も「沼」として紹介している。さらに、「SDGs沼」の"本音と建前"や、「コロナ警察沼」のエスカレートなどにも踏み込んでいる。本書はカジュアルな「推し本」ではない。あらゆる「沼」にはまった人々の、一筋縄ではいかない生き方そのものに迫った一冊だ。

 「沼」にはまった人々の心理は、不思議で奥深い。本書の中で、次にあなたがはまる「沼」に出合えるかもしれない。

【目次】
序章 そもそも、沼とは何なのか

第1章 あなたの隣にいる「沼」にはまった人々
プロレス沼 鋼の肉体に心を奪われ、貯金を使い果たす
若手俳優沼 恋愛よりも結婚よりも「推し」がいい
睡眠薬沼 眠れない苦しさから解放されたい
ラーメン沼 ラーメンと結婚した
セックス沼 クラミジアは遊び賃

第2章 あなたもはまってしまうかもしれない近場の沼
〈自己鍛錬型1〉肉体改造沼 後遺症をも伴う命がけの沼
〈自己鍛錬型2〉美容整形沼 ますます認知され続け、裾野を広げ続ける沼
〈自己鍛錬型3〉マッチングアプリ沼 一生ものの結婚か、一瞬のときめきか
〈自己鍛錬型4〉SDGs沼 本音と建前が交錯する世界
〈逃避型1〉占い沼 決断することや将来不安からの逃避が向かわせるもの
〈逃避型2〉仕事放棄沼 頑張りたいのにできない自分
〈コロナ禍影響沼〉コロナ警察沼 緊急事態下に「正しい」と信じて疑わなかったこと

第3章 はまるのが難しいだけに、抜け出しにくい沼
〈他者課金型1〉ホスト沼 「私が支えなければ」、健気な姫たちが札束で叩き合う
〈他者課金型2〉推し沼 金に糸目をつけない「純愛」の沼
 その1 地下アイドル
 その2 ジャニーズアイドル
 その3 宝塚歌劇団
 その4 2・5次元ミュージカル
〈他者課金型3〉保護猫沼 猫は心のすきまに入りこむ
〈ドヤ(承認欲求)型1〉不倫沼 不倫は男としてのやめられない「腕試し」
〈ドヤ(承認欲求)型2〉買い物沼 自分を輝かせるために、買う
〈ドヤ(承認欲求)型3〉グルメ沼 「いいね」3ケタ超えよりも素の自分で生きられることが嬉しい
〈ドヤ(承認欲求)型4〉インスタグラム沼 インスタの中の私は「なりたい私」

第4章 沼にはまったことで人生を切り拓いた人たち
服沼 「好き」を貫き、自己流を極める
男性探索沼 マッチングアプリを通じてはまったのは、男という不思議な生き物
不妊治療沼 やめどきがわからない、夫婦の絆が試される沼

第5章 女と男がはまる沼

終章 沼を追い求めて見えてきたもの

■沢木文(さわき・あや)さん
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。さまざまな取材対象をもとに考察を重ね、これまでの著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。



  • 書名 沼にはまる人々
  • 監修・編集・著者名沢木 文 著
  • 出版社名ポプラ社
  • 出版年月日2022年11月 9日
  • 定価990円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・286ページ
  • ISBN9784591175408

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