今年も残すところあと数時間。紅白歌合戦を観ながら年越しそばを食べ、そのまま「ゆく年くる年」で除夜の鐘を聞いている間に年が明ける――というのが、昭和の香り漂うわが家の大みそかの夜の過ごし方だ。自宅からも、窓を開ければかすかに除夜の鐘が聞こえてくる。108つ数えたことはないが、夜空に響く鐘の音に耳を澄ましていると、煩悩が(一時でも)どこかへ去り、心が改まる気がするから不思議だ。
ところで、この除夜の鐘。108つは「煩悩」の数だと知ってはいるが、具体的にどんな悩みなのかはよくわからない。「俺は煩悩の塊だ」なんていう人もいるから、なんとなく欲望やネガティブな感情のイメージがある。食欲、物欲、支配欲、性欲に自己顕示欲、怒りや悲しみ、嫉妬......いろいろあるけれど、とてもじゃないが108つも思い浮かばない。
実はこの数、かけ算で導き出された数なのだそう。晋遊舎の「わかる本」シリーズ、『日本のしきたりがまるごとわかる本 令和四年版』には、その数式が書かれている。
本書は、正月のならわしに始まる年中行事の歳時記カレンダーから、訪問時、贈り物、会食などの作法、冠婚葬祭などの人生の節目の儀式までのあれこれを一冊にまとめたもの。様々な行事やしきたりの意味が、分かりやすく記されている。
さっそく「大晦日」のページを開くと、「除夜の鐘」の項目が。「除夜の鐘の数は人間の抱える煩悩の種類が108種類あるとする仏教の教えに基づくものとされる」とある。「煩悩と同じ数だけ鐘をつくことで、人間の罪業を消滅させ、様々な欲を断ち切り、新たな心で正月を迎える」そうだ。ここまでの理解は合っている。では、108つの内訳は......?
本書によると、人間には「六根」と呼ばれる6つの感覚器官があり、それを感じる3つの状態に分かれ、2つの程度があり、それが3世にわたるという。つまり、6×3×2×3=108、というわけだ。
それぞれを詳しく見ていくと、六根は、眼(視覚)、耳(聴覚)、鼻(臭覚)、舌(味覚)、身(触覚)、意(知覚)の6つ。六根を感じる状態は「三不同」と言い、好(好き)、平(普通)、嫌(嫌い)の3つ。さらに、三不同を感じる程度は、染(穢れる)と浄(清める)の2種。最後に、人間を煩わす三世が、過去、現在、未来の3つだ。
単純に欲の数というわけではなく、すべてに程度や感じ方のレベルがあるらしい。108つというより、108パターンってこと...?
ちなみに「除夜」とは、旧年の災いを除くという意味がある。昔は大晦日の夜には一晩中起きて歳神様を迎える風習があったため、早寝をすると歳神様に失礼にあたり、白髪やしわが増えて老け込むという俗信があったそうだ。
来る年は、多くの人に災いをもたらしたコロナ禍から解放されて、世界中の人々が幸せに暮らせるよう祈りつつ、除夜の鐘を聞き、厳かな気持ちで歳神様を迎えたい。
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