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パンデミックは「起きるかどうかではなく、いつ起きるかの問題」

パンデミックの世紀

   現在、世界を揺るがしている新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)。日々新たな情報に緊張感が走る。これまでにも、スペイン風邪やペスト、オウム病などの感染症が流行してきた。歴史を振り返ると、感染症の恐ろしさは「認識の盲点」をすり抜ける点にあるという。

   2021年5月31日、『パンデミックの世紀: 感染症はいかに「人類の脅威」になったのか』(NHK出版)が発売された。

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   著者のマーク・ホニグスバウムさんは、ロンドン大学シティ校で医学史を教える上級講師でジャーナリストだ。感染症の歴史を専門とし、学術活動のほかに科学をテーマにしたアニメーションの制作にも携わっている。

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画像は、著者のマーク・ホニグスバウム(Mark Honigsbaum)さん

   本書では、スペイン風邪以降の100年を「パンデミックの世紀」と位置付け、この期間の代表的な感染症の流行について、急速に拡大する様子や被害を食い止めるべく奮闘する科学者たちの姿を描き出す。その中で、感染症がいかに「認識の盲点」をすり抜けていったのかを明らかにする。

   例えば、第1章で扱う「スペイン風邪」における「認識の盲点」は病原体であった。「スペイン風邪」はインフルエンザの一種だが、著者は1918年当時の医学者たちがこの疫病を軽視していたと述べる。

   その理由は、彼らが「自分たちはインフルエンザの感染経路を把握している」と思い込んでいたことにある。1892年にドイツの医学者が「インフルエンザ菌」を「発見」したことが世界中の新聞の見出しを飾り、すぐにワクチンが作製されるだろうと考えられていた。しかし、実際には、インフルエンザの病原体は細菌よりも小さなウイルスだ。そのことが明らかになるまでの間、同定すべき病原体が細菌であるという間違った前提のもとに対策や研究が続けられた。これが「認識の盲点」の例だ。

   本書で扱う内容は以下の通りだ。

プロローグ――サメと感染症(ポリオ)
第1章――青い死病(スペイン風邪)
第2章――天使の町の疫病(ペスト)
第3章――オウムが運んだヒステリー(オウム病)
第4章――フィリー・キラー(レジオネラ肺炎)
第5章――在郷軍人病ふたたび (レジオネラ肺炎)
第6章――アメリカのエイズ、アフリカのエイズ(後天性免疫不全症候群)
第7章――SARS─ スーパースプレッダー(重症急性呼吸器症候群)
第8章――国境地帯のエボラウイルス(エボラ出血熱)
第9章――ジカ熱のZ(ジカウイルス感染症)
第10章――疾病X(新型コロナウイルス感染症)
エピローグ――パンデミックの世紀

   本書では、病原体の特定についての困難以外にも、報道をめぐるビジネス界の思惑や栄誉をめぐる科学者たちの競争など、興味深い社会的な反応についても触れている。

   本書を読めば、現代はいかに疫病の流行が起こりやすい状況にあるかがわかる。にもかかわらず、人々は「いったん収束すると、パンデミックの記憶をすぐに忘れ去ってしまう」。そして、「認識の盲点」が生じる。著者いわく、パンデミックは「起きるかどうかではなく、いつ起きるかの問題」だという。新型コロナウイルスの教訓を忘れずに、いつかくるその時のために備えたい。


※画像提供:NHK出版

  • 書名 パンデミックの世紀
  • サブタイトル感染症はいかに「人類の脅威」になったのか
  • 監修・編集・著者名マーク・ホニグスバウム 著/鍛原多惠子 訳
  • 出版社名NHK出版
  • 出版年月日2021年5月31日
  • 定価3,850円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・544ページ
  • ISBN9784140818565

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