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農業という一次産業をやっていたころと、六次産業の今は立っているステージが全然違う

 昭和40年~50年代前半の頃、「みかん」は生産量のピークを迎えていた。当時、日本で年間360万トンもの生産量を誇ったが、その後70~80万トン(2割程度)まで減少したという。しかし、全国的に減少をたどる中で、「有田みかん」の生産量はピーク時の70%をキープしているという。

写真は、『日本のおいしいみかんの秘密』(秋竹新吾 著、PHP)

 本書『日本のおいしいみかんの秘密』(秋竹新吾 著、PHP)によると、有田みかんが生産量をキープできたのは土地柄だけでなく、地域ぐるみでみかんを大切にした背景があったという。ただ、その有田みかんも、農家の高齢化の影響と後継者不足という課題をかかえていた。本書は、その課題を解決するために著者の秋竹さんや、有田地域の農家のみなさんが取り組んだ施策と「意識の変化」がつづられている。

 本書の「まえがき」で、秋竹さんは次のように述べている。

「生のみかんは、収穫量と需要の関係で価格の相場が決まります(中略)。だから価格を予測できない」
「みかんを加工すると話は全く違ってきます。保存ができるし、消費者ニーズに合う高品質であれば、高い値段を付けても安定的に買っていただけます」
「農業という一次産業をやっていたころと、(略)六次産業の今は立っているステージが全然違う」

 秋竹さんなどの7人の農家は、1979年に早和共撰組合を結成し、それまでの個々の農家の家族経営だった農業を、組織的な経営に変化させる。早和共撰組合は、のちに株式会社早和果樹園へと発展し、みかんの加工でも成果をあげ、現在では、ITやデータ活用などを取り入れたスマート農業も手掛けている。2019年6月現在の売上高は10億1500万円。

 本書を読むと、みかんの「生産」、「加工」、「販売」を一気通貫して取り組む六次産業の取り組みを、さまざまな課題にも触れながら知ることができる。

 「高品質のものを作ったのに、売れない」など、違う分野でも考えられる悩みや、解決の糸口なども書かれており、具体的で参考になる。

 第一次産業従事者のみならず、幅広い業種に役立つヒントがちりばめられた良書だ。

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