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アフター・コロナを生き抜くヒントがここに

 これまで当たり前だと思っていた暮らしが、新型コロナウイルスの出現によって大きく変わろうとしている。もう、以前と同じには戻らないかもしれない。そのことを不安に思うよりも、新しい価値観や考え方を持ち、前向きに生き抜くためのヒントになる本が、宣伝会議から出版されている。

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画像は、『好奇心とイノベーション』(宣伝会議)

 『好奇心とイノベーション』は、コンセプターの坂井直樹さんが、各業界におけるイノベーションの最前線に立つ8名と対談した内容をまとめた本。人工知能やアート、ビジネス、働き方、生き方について語られている。

 内容はウェブメディア「AdverTimes(アドタイ)」に2019年に掲載したコラム「そのイノベーションが、未来社会の当たり前になる。」を再編集したもので、収録は2018年11月から翌年4月だが、このコロナ禍を予測していたかのようなキーワードが並ぶ。

 オンラインでの会議や書類のやり取りが一般化し、オフィスに社員が集まって仕事をするというスダンダードがなくなり、ニュースタンダードモデルへと移行する未来を考えたり、ノマドスタイルの働き方について語り合ったり、新しい考えをスピーディーに事業化する推進力の秘密を取材したり、8者8様のイノベーションはそれぞれが興味深い。世の中をこれまでよりももっと便利に楽しく、活気に満ちたものにできそうなヒントが散りばめられている。

 各回に、対談を終えての坂井さんの感想や、「一つの価値観に依存しない」、「ほかの誰もやったことがない新しいことで成功したいなら、他の人と逆のことをすればいい」など読者へのメッセージも綴られている。

 かつて、四角い車ばかりだった時代に丸みを帯びた「日産Be-1」をデザインしてレトロフューチャーブームを創出したり、黒いカメラが一般的だった80年代に、アルミを使った輝く「オリンパスO・product」をつくった坂井さんだからこそ、言葉に重みを感じる。ちなみに「オリンパスO・product」は、MoMAの企画展に招待出品され、その後コレクションとして永久保存されている。

対談者一覧
松岡正剛(編集工学者、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長)
猪子寿之(チームラボ代表)
陳暁夏代(DIGDOG 代表)
成瀬勇輝(連続起業家/ TABI LABO、ON THE TRIP 創業)
清水亮(ギリア代表取締役社長)
山口有希子(パナソニック コネクティッドソリューションズ社常務 エンタープライズマーケティング本部 本部長)
中川政七(中川政七商店 代表取締役会長)
田中仁(ジンズホールディングス代表取締役CEO)
※掲載順・対談者の肩書きは収録時のもの。

リアルタイム配信の刊行記念トークイベントは盛況

 本書の出版を記念したトークイベントが、2020年5月27日にオンラインのリアルタイム配信で行われ、BOOKウォッチの記者も参加した。聞き手は、企業のブランド開発を専門に行う「Henge Inc.」代表の廣田周作さん。

 坂井さんと廣田さんが『好奇心とイノベーション』について話しながら、チャットを通して参加者からリアルタイムで質問や感想を受け付けるという、通常の出版記念トークイベントとは異なるスタイルで、奇しくも本書のテーマに合った形での開催となった。

 イベントは盛況で100名超の参加があったとか。チャットにも質問や感想が寄せられていた。

 坂井さんは今年73歳になる。ご本人いわく、仕事を続けるのは「かなりギリギリ」だと思っていたが、最近ではリモートトラストのスキルがあれば90歳でも! と感じているそうだ。リモートトラストとは、一度も会わずに顧客と信頼関係を築くスキルのことで、アフター・コロナでは必要になるかもしれない。参加者からは「リモートトラストで結婚までできる?」という質問も。坂井さんは信頼を得るスキルがあれば「可能かもしれないね」と和やかに答えていた。

 『好奇心とイノベーション』は坂井さんにとって15年ぶりの著書だったが、いま、何冊か先まですでにテーマの構想があるとし、次は「インサイト」、その次は「エロティシズムと経済」を書きたいと意欲を見せた。また、7月からオンラインサロンをスタートさせると発表。詳細は、坂井さんが代表を務めるウォーターデザインのホームページやSNSで告知される。坂井さんの好奇心はとどまることを知らない。


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