紙幣の偽造を防ぐ印刷技術は年々進化しているが、2020年に回収された英国20ポンド札は14万4000枚以上。これでも過去や他国と比べると、比較的少ないほうなのだという。
偽金、美術品の贋作、詐称や詐欺。「偽物」を作り出して利益を得ようとする例は、歴史上後を絶たない。『世界の偽物大全』(日経ナショナル ジオグラフィック)は、200枚にのぼる写真とともに、世界各地を騒がせてきた「偽物」をまとめた一冊だ。
本書から、大胆にも自由の女神を売ろうとした、ある詐欺師をご紹介しよう。スコットランド人のアーサー・ファーガソンは、もとは巡業劇団の俳優だった。1925年のある日、ロンドンのトラファルガー広場で、ネルソン記念柱を見上げる観光客と出会う。ファーガソンはからかうつもりで「政府が借金返済のために柱の上のネルソン像を売ろうとしている」とでたらめを話した。さらに話をすると、相手が大金持ちだとわかった。そこでファーガソンは役人をかたり、ネルソン像を売ると言って、その場で大金の小切手を手にした。
金持ちは簡単にだまされると気づいたファーガソンは、それからバッキンガム宮殿、ビッグ・ベン、アメリカに渡ってホワイトハウスを"売った"。さらに、オーストラリア人の男に、川幅を広げる計画があると嘘をついて自由の女神を売ろうとしたのだが......興奮した買い手が自由の女神と一緒に撮った記念写真に、ファーガソンも写ってしまったのだ。買い手が支払い手続きをしようとしたところ、銀行に怪しまれ、写真のおかげですぐにファーガソンは捕まった。
このほか、中世から現代にいたるまで、世界のさまざまな詐欺師、偽造師、贋作師たちの暗躍が次々と紹介されている。大胆かつ巧妙な犯行の一方で、「偽物」を見抜く技術の進歩も目覚ましい。だます側と見抜く側の追いかけっこを見ているうちに、私たちの身の回りのものや人も、何が本物なのかわからなくなりそうだ。
【目次】
CHAPTER1 偽金
CHAPTER2 贋作
CHAPTER3 偽書
CHAPTER4 考古遺物の捏造
CHAPTER5 詐称
CHAPTER6 信用詐欺師
CHAPTER7 大義のための偽り
CHAPTER8 怪しげな科学
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