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「剥き出しの魂の叫びに涙した」無理心中事件で残された息子が追い求めた、悲劇の真相と再生の手記

遠い家族

 18歳の春、母が義父を殺して自死した。
 ひとり残された僕は16年後、事件の謎を解く旅に出た――。

 2023年3月29日、18歳の春に起きた無理心中事件でひとり残された著者が、悲劇の真相と事件を起こした母親への思いを綴ったノンフィクション『遠い家族 母はなぜ無理心中を図ったのか』(新潮社)が発売される。

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 2018年、前田さんは自身の家族を取り上げたフジテレビ系ドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」に出演し、「なぜ母は無理心中事件を起こしたのか?」という謎を解くため、母の知人や親戚を訪ね、事件後、音信不通になっていた実父を探しに台北に向かった。

 番組は大きな反響を呼び、同番組の放送時点での年間最高視聴率を更新。さらに、北米最大級のメディアコンクール「ニューヨーク・フェスティバル2019」においてドキュメンタリー・人物伝記部門で銅賞を受賞した。本書には、その取材の過程で明らかになった内容が詳細に記されている。

「人はそれでも前を向ける」という希望の物語

 本書では、著者が18歳の時に母親が起こした無理心中事件までの日常と、その後の日々が綴られている。幼少期を過ごした韓国と台湾では、母が日本へ出稼ぎに出たことで「ネグレクト」とも呼ばれかねないような状況に置かれ、「外国人差別」によるいじめを受けていた。

 事件後は、母が殺した義父の親族から、「私たちはこれからあなたを恨み続ける。あなたはこれから一生、人殺しの息子として生きていきなさい」と言われ、「加害者遺族」としての苦しみを味わった。そして何より、「母はなぜ自分を見捨てたのか?」という思いと、母親に対する憎しみや恨みに苛まれ続けた。しかし、前田さんは、それでも自分は母親を愛している、という心の奥にある思いを認め、前を向いて歩いて行くことを誓う。悲劇に直面し、苦しみを受け止めながらも前を向く姿は、読む人に大きな勇気と希望を与える。

 月刊誌「波」2023年4月号(3月27日発売)には、映画監督の石井裕也さんによる本書の書評が掲載。その中で石井さんは、<百回頁を繰る頃に涙する本はこれまでいくつもあったが、最初の数頁から涙したのは今回の読書体験が初めて>と綴り、<表現というものの紛れもない真髄がこの本にはある>と絶賛。本書の帯にも<剥き出しの魂の叫びに涙した>と推薦の言葉を寄せている。

 韓国と台湾での幼少期。日本での中学高校時代。そして、「あの日」までの経緯――。悲劇の真相を綴る、「加害者の息子」による慟哭の手記だ。

■前田勝さんプロフィール
まえだ・しょう/1983年、韓国人の母と台湾人の父の下、韓国で生まれる。7歳まで韓国、12歳まで台湾で暮らす。日本人と再婚した母に呼ばれて12歳で来日。大学入学直前、母が義父を殺して無理心中を図る。大学中退後、東京NSCに入学。卒業後は舞台俳優となる。客演の傍ら劇団を主宰し、母の事件を描いた舞台を上演。2018年、ドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」に出演し、母の生涯を辿る。同番組は北米最大級のメディアコンクール「ニューヨーク・フェスティバル2019」ドキュメンタリー・人物伝記部門で銅賞を受賞。2021年『茜色に焼かれる』(石井裕也監督)で映画初出演。


※画像提供:新潮社

 
  • 書名 遠い家族
  • サブタイトル母はなぜ無理始心中を図ったのか
  • 監修・編集・著者名著者:前田勝
  • 出版社名新潮社
  • 出版年月日2023年3月29日
  • 定価1,650円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・192ページ
  • ISBN9784103549918

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