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夫の死後、親戚から「勝手に引き出すな!」 相続トラブルを避けるには

「もしも夫が亡くなったらどうしよう?」と思ったら読む本

   夫に先立たれた妻にとって、相続対策とは「夫亡きあとの自身の生き方を考えること」。そう語るのは、相続対策専門の税理士・島根猛さんだ。

   島根さんの著書『「もしも夫が亡くなったらどうしよう?」と思ったら読む本 夫婦で豊かな老後を送るために知っておきたい相続のこと』(クロスメディア・パブリッシング)から、お金に関連する手続きに留まらず、残された人々の「豊かな人生」のために知っておきたい心構えや考え方を全3回にわたって見ていく。

   前回は、夫が亡くなり銀行口座が凍結されてしまう前に、妻が準備すべきことについて紹介した。しかしそのことが「争続」の火種となることも......。今回は、「第3章 夫が死亡した直後のことを想定しよう その2 支出面のこと」からトラブル回避の方法に加え、役所等で必要な手続きや葬祭費の補助など、受け取れるお金についても解説していく。

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親戚とトラブルにならないためには?

~以下、本文より~

疑心暗鬼がはたらきやすい時期に

■夫が死亡した直後のことを想定しよう ▼ その2
支出面のこと

   こうした事情で、ご主人が亡くなってもご主人名義の銀行口座からお金を引き出すこと自体に問題はありませんが、他の相続人との人間関係によっては注意が必要です。勝手に故人の銀行口座からお金を引き出したことで、あとあとトラブルに発展する恐れがあるからです。

   現に、ご主人が倒れたり亡くなったりした後で、妻がご主人の銀行口座から大量のお金を引き出したことを知った他の相続人から、「相続人である自分の許可なく勝手に引き出すな!」と妻が責められたというケースもあります。そのときはトラブルに発展しなくとも、のちの相続でもめたときに、「どうして亡くなった直後に、こんな大金を引き出したのか」「引き出したお金を隠しているのではないか」など、あらぬ疑いを抱かれることもありえます。

   相続では大きなお金が動くため、様々な思惑が交錯することもありますから、これまで親族間の人間関係が良好だったとしても、疑心暗鬼がはたらいてギスギスしやすいものです。そのことを常に念頭に置き、細心の注意を払って行動することを心がけていただきたいと思います。

   こうしたトラブルを防ぐためには、あらかじめ「葬式代が必要だから、お父さんの銀行口座から300万円下ろした」と他の相続人に周知しておくのが有効です。「お金を引き出すこと」と「引き出すお金は、自分のためではなくみんなのために使う」とアナウンスしておくことで、他の相続人から疑念を抱かれるリスクを大きく下げることができます。

   加えて、お金を引き出す、あるいは使うときには、「葬儀費を払うために〇〇万円下ろす」「生活費のために〇〇万円下ろす」と、逐一メモを残しておくことをおすすめします。ATMで引き出したときの明細書や使ったときの領収書も必ずとっておいたほうがいいでしょう。これは他の親族から「お金のことは任せる」と言われた場合であっても同様で、記録は残すに越したことはないのです。

役所で必要な手続きは?
 死後の手続きとして、死亡届や火葬許可証は既にお話しした通りですが、それ以外にも様々あります。ここでは覚えておくべき2つを挙げておきます。

● 国民健康保険、後期高齢者医療保険
 葬祭費の補助が支給されます。高額療養費制度によって医療費の払い戻しを受けられることもあります。

● 国民年金、厚生年金
 未支給年金などを請求できる可能性があります。
 国民年金に加入している場合、遺族基礎年金や寡婦年金の支給対象かも確認しましょう。厚生年金加入者なら、遺族厚生年金があります。相続に関する年金の手続きは年金事務所で行います。

■「もらえるお金」をチェックしよう

   お金の話でいえば、ご主人が亡くなって残された妻がもらえるお金として、生命保険金もあります。ご主人が生命保険に入っていれば、受取人は妻というのが一般的ですから、生命保険金の請求手続きを行います。

   生命保険会社のホームページや営業担当者に問い合わせすれば、数日から1週間後には手続き書類一式が送られてきます。書類に必要事項を記入して、医師が発行した死亡診断書のコピーや本人確認書類などの必要書類を同封して返送します。

   ただし、死亡診断書は死亡届とセットになっていて、役所に提出すると戻ってきません。このため、役所に提出する前にコピーをとっておきましょう。

   ご主人が亡くなる前に、入院したり手術したりしていたら、入院・手術給付金などを受け取れる可能性もあります。加入していた医療保険をひと通りチェックして、保険会社に連絡してみることをおすすめします。

   他にも、ご主人の勤め先からお金が支給されるケースもあります。その企業の福利厚生が充実していれば、手厚い保障が受けられるかもしれません。ここで注意すべきは、その多くが自己申告制だという点です。死後に企業から自ずと補償の案内が送られてくることはありませんので、ご主人が勤めていた会社に一度連絡を入れてみましょう。

   また、退職金が一括払いではなく、分割払いになっているケースもあります。その場合はまだ受け取っていない残りの退職金をもらうことができます。

   その他には、企業年金もあります。ご主人が継続的にもらえるはずだったものが残っていれば、妻が引き継げることが多いようです。

   注意点としては、厚生年金は年金事務所の管轄ですが、企業年金の問い合わせ先は企業となることです。

~以上、本文より~

   葬儀費用やお墓の準備も含め、悲しむ暇もないくらいに余裕がなくなる時期。受け取れるお金には自己申告制のものも多いため、本書で流れを把握してスムーズに手続きできるのが理想的だ。

   著者の島根さんによれば、残された人たちがその後に豊かな人生を送るためには、小手先の節税テクニックではなく、来る相続に対する心構えと考え方を知っておくことこそが重要だという。

   いつかは来る日に備えて、本書に目を通しておけば不安も少し軽減できるのではないだろうか。

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■島根猛さんプロフィール
しまね・たけし/島根税理士事務所代表税理士。埼玉県で代々続く専業農家の長男として生まれる。「実家の相続を円満に導きたい」という思いから税理士を志し、24歳で税理士試験に合格。大学卒業後に専門学校での税理士講座講師、某保険会社の営業職を経験したのち、税理士法人にて税理士業務の基礎を学び、27歳で税理士登録。その後は相続税のエキスパートとして年間100件以上の相続案件に携わる。共著に『円満相続をかなえる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。


※画像提供:クロスメディアグループ株式会社


  • 書名 「もしも夫が亡くなったらどうしよう?」と思ったら読む本
  • サブタイトル夫婦で豊かな老後を送るために知っておきたい相続のこと
  • 監修・編集・著者名島根 猛 著
  • 出版社名クロスメディア・パブリッシング
  • 出版年月日2023年1月16日
  • 定価1628円
  • 判型・ページ数四六判・192ページ
  • ISBN9784295407874

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